日本酒の本来の味を引き出す樽の役割とは?

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じつは江戸時代の日本酒はすべて樽酒だった

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樽酒と聞くと、鏡開きで使う樽に入った日本酒をイメージする人が多いでしょう。確かにこれも樽酒ですが、日本酒における樽酒とは、杉やヒノキの樽に詰めて数日間おき、お酒に木の香りをつけたもの全般を指します。
江戸時代に日本酒といえば樽酒でした。当時人気を博した灘の酒など、日本酒は大きな杉樽に詰められて輸送されていたからです。江戸っ子たちは知らず知らずのうちに爽やかな杉の香りがついた酒を、旨い酒としてたのしんでいたのですね。
爽やかなのにコクがある、バランスのよい樽酒

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樽酒の魅力はなんといってもその香りです。日本酒の芳醇な香りに、杉やヒノキの清々しい木香がかけ合わさることで、濃密かつ爽快な独自の芳香をまといます。樽の中で寝かすことでまろやかさを増し、口当たりもよくなります。
日本酒好きの中には、「樽酒じゃないと物足りない」という熱狂的なファンも少なくありません。元来日本人は木造の家に住み、木の香りに包まれて暮らしてきたので、木の香りが心身をリラックスさせる効果もあるのでしょう。
香りをたのしみつつ軽やかに飲めるので、日本酒初心者にも親しみやすい味わいです。
「樽酒びん詰」で気軽に樽香を堪能しよう

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樽で輸送されていた日本酒ですが、時代が進むにつれて樽詰めからより手軽で安価な瓶詰めに変わっていきます。ただ、無機質なガラス瓶に入れられた酒は、当然今までのような香りはなく、樽酒に親しんだ人々からは、惜しむ声が絶えませんでした。
そこで登場したのが、木樽で一旦寝かせた日本酒を瓶に詰めかえる「樽酒びん詰(樽びん)」です。ほどよく樽香をまとった日本酒を、瓶に移しかえて保存することで、いつでも樽酒をたのしむことができるようになりました。
江戸時代には日常の酒だった樽酒。最近では300ミリリットルや720ミリリットルなどの手頃なサイズの樽びんも販売されていますので、歴史に思いを馳せながら、じっくり味わってみてはいかがでしょう。
