「灘五郷」を訪ねました<後編> 若手が語る灘の今と未来。各蔵おすすめ銘柄にも注目!

「灘五郷」を訪ねました<後編> 若手が語る灘の今と未来。各蔵おすすめ銘柄にも注目!

都道府県別日本酒生産量第1位の兵庫県を支えてきた「灘五郷(なだごごう)」の探訪後編。前編では、阪神地方の海岸地域に広がるこの生産地の酒造りの特徴や魅力をレポートしました。今回はフードジャーナリストの里井真由美さんをゲストに迎え、未来を担う若手のみなさんに「灘の酒」の魅力と課題やおすすめ銘柄について語っていただきました。

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未来座談会のスタートです ※以下敬称略

未来座談会のスタートです ※以下敬称略

――まず灘五郷(以下、灘)の現況をどのように捉えていますか?

髙野 灘は日本酒生産地としてシェアが日本ナンバーワンということから、全国で支持されているという認識も自負もありました。でも首都圏では認知度が低く、東北地方などの地酒のほうがずっと良いイメージが持たれていることに、少なからず衝撃を受けました。

――みなさんの様子から「同感」ということころでしょうか? 課題に入る前に、まず灘の良さからお聞きしたいと思います。

青木 やはり風土と立地ですね。これらの条件が整っていることに甘えず、私たちの先達は努力を重ね良質の酒を造って広めてきました。そのことは歴史的にもきちんと裏付けされています。

菅野 その結果として、私たちのような大手といわれるメーカーがいくつも育ち、多くの人々が従事して知恵を出し合い、技術が生まれ蓄積され継承されています。そこは誇りを持っていいと思いますね。

里井 誰もが知っているナショナルブランドがずらり。風土と立地に加えて技術も揃っているからこそ、現在の地位があるのだと思います。ただその反面、ブランド名ばかりが独り歩きしてしまって、それほどお酒に詳しくない消費者には、灘という土地と結びつかない。そこに地酒ブームが来て、その希少価値の方が高まっているというところでしょう。

板井 ジレンマですね。毎日飲まれる普通酒を全国にきちんと供給してきた実績が、今はむしろネックになっている感があります。リーズナブルな酒しか取り扱っていない印象が持たれているような…。安価で良質な普通酒を安定して生産できることの価値をもっと理解していただけるといいのですが。

佐田 灘の酒は、いわば「全国酒」になってしまったんです。でも灘の酒は灘の土地でこそ生産できる唯一無二のもの。兵庫県の地酒だと思っていただきたいのですが、それを伝える方法がなかなか難しくて。

髙野 灘に限らず、酒造業界の共通認識として次世代の消費者発掘という課題も。私たちの商品を飲んでくださっている方は50歳代以上が中心。若い人の酒離れも指摘されていて、とても危機感がありますね。

――みなさん、商品開発に携わっていらっしゃいますが、この現況に対して灘全体で何ができるとお考えですか?

板井 ふだんは個々に動いていますが、メーカーが力を合わせて灘というエリア自体の認識をプラスに上げていきたいですね。例えばワインでいうとフランスのブルゴーニュ地方やボルドー地方のように。

菅野 変な表現ですが、“協力して違うもの”を造りたいですね。

青木 その言葉はとても共感できます。それぞれの企画力や技術力を駆使して多彩なコンセプトの酒を開発していけば、訴求できる範囲がぐんと広がりますよね。

佐田 揃って昔ながらの「これぞ灘」という酒を生産して販売する一方、ちょっと変わったものやとても高級なものなども手がけ、どちらも「灘らしい酒」として発信していくことが大事ではないでしょうか。

髙野 後者の観点で弊社が新たに開発した缶コーヒーと間違えられそうな外観の商品は、これまでと違ったターゲットに届いているようです。みなさんもそれぞれに新しいコンセプトのもと開発されていますよね。それを灘全体で発信していける場をより増やしていきたいです。

里井 みなさんが本来の灘の魅力を持つ酒を大切にしていくと同時に、それぞれでアプローチの重ならないアイテムを開発するということですよね。会社の垣根を超えて取り組む“灘の伝統と革新”。灘を一本の樹に例えるとより幹がしっかりすると同時に枝葉が広がっていくイメージです。その下で幸せそうにお酒を飲む人の顔が浮かんできました(笑)

灘らしい酒、チャレンジの酒…。各蔵からおすすめの銘柄を紹介

灘らしい酒、チャレンジの酒…。各蔵からおすすめの銘柄を紹介

座談会で導かれたのが、すべての酒蔵をあげて取り組む“灘の伝統と革新”。というわけで、各蔵からセレクトしていただいたおすすめ銘柄を、里井さんに試飲していただきました。それぞれ左側が「これぞ灘」の1本。右側が新しい試みとして創りだした「新しい灘」の1本です。※酒蔵名50音順

大関

左/上撰 「辛丹波」右/純米酒 「醴RAI」

左/上撰 「辛丹波」
「冷や」でも「燗」でも、実力を発揮する淡麗辛口の本醸造酒。最初の口当たりはややパワフルな印象ですが、旨味を残したまますっと引くキレの良さですっきりした後口です。
里井「炊き立ての白いご飯のようなお酒。食事の最初から最後まで1本で通せるタイプです」

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