「グラッパ」とはどんなお酒?特徴やブランデーとの違い、おいしい飲み方も紹介!

グラッパとは、ブドウの搾りかすを原料に造られる蒸溜酒。本場イタリアでは食後酒として飲まれるほか、カクテルのベースとしても親しまれています。今回は、グラッパの定義やアルコール度数、おもな種類、ブランデーとの違い、おいしい飲み方などを紹介します。
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「グラッパ」はイタリアで古くから愛飲されてきた蒸溜酒。まずは概要からみていきましょう。
グラッパ(Grappa)とはどんなお酒?

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グラッパとは、ワインを造ったあとに残るブドウの搾りかすを原料にしたお酒。ブランデーと同じ蒸溜酒に分類され、本場イタリアでは古くから食後酒として親しまれてきました。蒸溜という工程を経て造られるので、ワインよりもアルコール度数は高めです。
グラッパは樽熟成をほとんど行わないため、無色透明のものが主流ですが、近年は樽熟成させたものも流通しています。いずれもブドウの強い風味が特徴です。
グラッパはブドウの搾りかすで造られる蒸溜酒
グラッパとは、ワインやブランデーと同じく、ブドウを原料とするイタリアのお酒。ただし、おもにブドウ果汁を使用するワインやブランデーと違い、グラッパの原料となるのは、ワインを造ったあとに出るブドウの搾りかす(ヴィナッチャ)です。
グラッパはブドウの搾りかすを固形蒸溜して造られる蒸溜酒。果汁とともに果皮や種も一緒にアルコール発酵させる赤ワインと、果汁だけを発酵させる白ワインとでは、搾りかすを取ったあとの工程が異なりますが、必要に応じてアルコール発酵を行い、蒸溜することで、グラッパが完成します。
グラッパの起源は明らかになっていませんが、かつてワインが高級品だった時代、イタリアのブドウ農家の人たちが、それまで畑の肥料にしていた搾りかすを使って、見よう見まねで造ったのが始まりといわれています。

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グラッパのアルコール度数は30〜60度と高め
グラッパのアルコール度数は、30〜60度程度と幅がありますが、日本で市販されている商品は40度程度のものが主流です。
グラッパはブドウの搾りかすを蒸溜して造られる蒸溜酒。醸造酒であるワインに比べると、アルコール度数は高めです。
グラッパはブドウの香りが魅力の食後酒
長年農家の家庭酒として発展してきたグラッパは、イタリアを代表する蒸溜酒となった現在も、伝統的な食後酒として親しまれています。
イタリアでは食前酒を「アペリティーヴォ」、食後酒を「ディジェスティーヴォ」と呼びますが、語源はそれぞれ「開く」と「消化する」。イタリアには、食前に軽いアルコールで胃を開かせてから食事をたのしみ、食事の締めくくりには強めのアルコールを飲んで消化を促す習慣があるといいます。
そしてこの「ディジェスティーヴォ」の代表格とされているのが、蒸溜酒のグラッパ。ほかにも、リキュールの「リモンチェッロ」や「アマーロ」などが消化を促進する食後酒として知られています。
グラッパの魅力は、なんといってもブドウの強い香り。ブドウの産地や品種、製法によって個性は異なりますが、芳醇な香りと独特の風味は食後のゆったりとした時間に最適です。
「グラッパ」を名乗るための条件

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グラッパは地理的表示(GI)が認められたお酒。「日本酒」「壱岐焼酎」「球磨焼酎」「琉球泡盛」「薩摩焼酎」といった日本を代表するお酒と同様に、グラッパもまたEU(欧州連合)やEPA(経済連携協定)、日本など、さまざまな国や地域で地域的表示の相互保護が行われています。
ただし、「グラッパ」と名乗るにはいくつかの条件があります。順にみていきましょう。
◆イタリア産であること
EUの規定により、イタリア産でなければ「グラッパ」を名乗ることができません。
フランスの「マール(Marc)」やスペインの「オルホ(オルーホ)」など、ブドウの搾りかすで造られる蒸溜酒は世界各国で造られていますが、「グラッパ」と名乗ることが認められているのはイタリア産のものだけです。
◆ブドウの搾りかすだけを蒸溜して造る
グラッパの本場・イタリアが定める基準によれば、「グラッパ」と名乗れるのは「搾りかすだけを蒸溜して造ったお酒」だけ。加水や加糖をして再発酵させたものは「グラッパ」と表記することができません。
◆アルコール度数が37.5度以上であること
グラッパの最低アルコール度数は37.5度という決まりがありますが、上限はありません。
グラッパの種類

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グラッパは、熟成期間や熟成方法によっていくつかの種類にわけられます。
◆グラッパ・ビアンカ
主流は、無色透明でフレッシュな味わいが特長のグラッパ・ビアンカ。グラッパは伝統的に樽熟成を行わず、蒸溜後ステンレスタンクで6カ月ほど熟成させたのちにアルコール度数を調整して出荷されます。
◆グラッパ・インヴェッキアータ
樽熟成させたグラッパ。樽由来の琥珀色とフルーティーな風味、まろやかな飲み口が特徴で、熟成年数によって香りや味わいは大きく変化します。
なかでも熟成期間の長いものは「グラッパ・ストラヴェッキア」「グラッパ・リゼルヴァ」と呼ばれ、独特の樽香と複雑な味わいで近年人気を集めています。
グラッパとブランデーの違い

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グラッパはワインで使ったブドウの搾りかすを蒸溜してできたお酒、ブランデーはワインを蒸溜してできたお酒。どちらもブドウが原料で、どちらも同じ蒸溜酒と、両者はじつに近い関係にあります。
ここで「ブランデー」の定義をおさらいしておきましょう。ブランデーとは、果実を原料に造ったワインを蒸溜したお酒の総称で、ブドウを原料に造る「グレープブランデー」、ブドウ以外の果実で造る「フルーツブランデー」、ブドウの搾りかす(ポマース)から造る「ポマース(粕取り)ブランデー」の3つに大別できます。
グラッパは「ポマース・ブランデー」の一種とされ、「イタリアン・ブランデー」「粕取りブランデー」などと呼ばれることもあります。

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ここではブドウから造られる「グレープブランデー」に焦点を絞り、グラッパとの違いを具体的にみていきます。
【原料の違い】
◇グラッパ
使用できるのは、ブドウの搾りかすのみ。搾りかすにはブドウの果皮や種、茎なども含まれます。
◇ブランデー
おもに白ブドウの果汁を使用。果皮や種、茎などは取り基本的に除かれます。
【製法】
◇グラッパ
搾りかすをアルコール発酵させて蒸溜。赤ワインの搾りかすは発酵済みなのでそのまま蒸溜します。
蒸溜方法は造り手によって異なります。
◇ブランデー
ブドウの果汁をアルコール発酵させてから、単式蒸溜機で2回蒸溜します。
【熟成】
◇グラッパ
樽熟成を行わないのが一般的で、無色透明のものが主流。
◇ブランデー
オーク樽による長期熟成が基本。「コント」という単位で管理され、熟成年数に応じて等級が決まります。
【生産国】
◇グラッパ
イタリアのみ。
◇ブランデー
世界各国で生産。フランスの「コニャック」や「アルマニャック」が有名。
【味わいの傾向】
◇グラッパ
力強いブドウの香味。搾りかすに含まれる果皮や種子、茎由来の風味が独特の個性を育みます。
◇ブランデー
樽由来の香味、熟成された蒸溜酒ならではの芳醇な味わいとなめらかな口当たりが特徴。
【グラス】
◇グラッパ

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ストレートで飲む際は、おもに下部が丸く膨らんだチューリップのような形状の「グラッパグラス」が使われます。
◇ブランデー

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一昔前はバルーン型をした大きめの「ブランデーグラス」が主流でしたが、現在は「グラッパグラス」のようなチューリップ型のグラスや、ウイスキー用のテイスティンググラスなどさまざまな形状のグラスが使われています。
ブランデーの特徴や種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。
グラッパのおいしい飲み方

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日本のカジュアルなレストラン&カフェでも話題沸騰中のグラッパ。おいしい飲み方をみていきます。
飲み方の基本はストレート
グラッパのフルーティーな香りと独特の風味を満喫するなら、ストレートがおすすめ。無色透明のグラッパ・ビアンカは。冷蔵庫でボトルごと冷やしてから味わうと、スッキリとしたのどごしをたのしめます。熟成タイプのグラッパ(グラッパ・インヴェッキアータ)は、常温で立ち上がる香りを堪能してください。
人気のイタリアンワイン&カフェレストラン「サイゼリヤ」では、アルコール度数40度のグラッパ30mlを273円(税込300円)で提供。コスパのよい食後酒として、また飲み方の豊富なバリエーションで注目を集めています。
その飲み方とは、グラッパと182円(税込200円)のセットドリンクバーを一緒にオーダーし、ストレートで一口味わったのちに氷や水、ソーダ、トニックウォーター、レモンポーションやシロップなどを加えて味の変化をたのしむというワザ。なかにはフルーツジュースや清涼飲料水で割って飲むつわものもいるのだとか。
イチオシは、次に紹介する「カフェコレット」という飲み方。「サイゼリヤ」をご利用の際は、ぜひ試してみてください。
サイゼリヤ
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グラッパ×エスプレッソ「カフェコレット」
イタリアでは、食後にグラッパとエスプレッソコーヒーを合わせて飲むのが一般的。なかでもおすすめは、エスプレッソにティースプーン1杯ほどのグラッパと砂糖を混ぜた「カフェコレット」という飲み方です。
「カフェコレット」とは、もともと「エスプレッソに少量のお酒を混ぜた飲み物」全般を指す言葉で、グラッパ以外でも作られます。混ぜるお酒の甘さに応じて、砂糖の量を加減するのがおいしく作るコツ。砂糖の代わりにホイップクリームを加えてもおいしいですよ。
このほか、「レゼンティン」や「グラッパ・コン・モスカ」という一風変わった飲み方もあります。
「レゼンティン」は、砂糖を多めに入れたエスプレッソを、砂糖が全部溶け切らないうちに飲み干し、残ったカップにグラッパを注いでかき混ぜて飲むというもの。「グラッパ・コン・モスカ」はグラッパに浮かべたコーヒー豆に火をつけてたのしむ遊び心たっぷりの飲み方です。

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グラッパを使ったカクテルもおすすめ
グラッパを使ったカクテルも人気です。イタリアを中心にたのしまれている、グラッパベースのカクテルを紹介しましょう。
【イタリアンスティンガー】
グラッパとアマレットを3:1の比率で混ぜ合わせたカクテル。アマレットは、アプリコットの種子にある核などを原料に造られるイタリアのリキュールで、杏仁豆腐のような濃厚な甘さが特徴。グラッパの酸味を和らげ、やさしく飲みやすい口当たりにしてくれます。
アルコール度数は35度前後とやや高め。
【グラッパ・ティー・カクテル】
グラッパをアイスティーで割ったカクテル。のんびりと過ごす休日の午後におすすめの一杯です。紅茶の銘柄はお好みですが、アールグレイなど香りの強いものがよく合います。アルコール度数の調整も自在。シロップを加えたり、炭酸水で割ったりと、お好みのアレンジをたのしめますよ。
グラッパは、ソーダやトニックウォーター、ジンジャーエールなどの炭酸飲料で割ってもおいしく味わえます。いろいろ試して、お気に入りの飲み方を探してみてください。
グラッパはチョコレートやイタリアンスイーツと相性抜群
食後酒として親しまれるグラッパは、チョコレートやティラミスなどのイタリアンスイーツとの相性が抜群。コーヒーに合うおつまみやスイーツとも抜群の相性を発揮します。
熟成タイプのグラッパなら、ナッツやドライフルーツ、表面を塩水やお酒で洗いながら熟成させたウォッシュタイプのチーズともよく合います。
グラッパは、イタリア生まれの伝統的な蒸溜酒。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、食後のリラックスタイムにピッタリのお酒なので、機会があったらぜひ味わってみてください。
※本記事で紹介した価格はすべて2025年5月現在のものです。
(参考)
イタリア大使館貿易促進部|美味しく楽しいイタリアカクテル
