角打ちとは?読み方から立ち飲み文化のルーツまで解説!

角打ちとは?読み方から立ち飲み文化のルーツまで解説!
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「角打ち(かくうち)」というお酒のたのしみ方を知っていますか?今回は角打ちの語源や歴史、さらに角打ちをたのしむために知っておきたいルールからお店の探し方まで、わかりやすく解説します。

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角打ちとは? 読み方から語源まで

角打ちとは? 読み方から語源まで

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まずは、角打ちの読み方と基本的なスタイルを解説します。

角打ちは「かくうち」と読む

「角打ち」の読みは「かくうち」が正解。語源には諸説あり、「酒屋さんの店頭で量り売りされたお酒を升の“角”に口をつけて飲むこと」や「酒屋さんの“一角(片隅)”でお酒を飲んでいたこと」に由来しているという説が有力です。

角打ちの「打つ」には、「お酒を飲む」ことを指しているという説や、「もんどり打つ(飛び上がって回る)」に由来するという説もあります。

角打ちの基本的なスタイル

角打ちとは、「酒屋さんで買ったお酒を店内に設けられた立ち飲みスペースでたのしむこと」、もしくは「角打ちができる酒屋さん自体」を指します。昔は四角い升(ます)で日本酒を飲んでいたことから、升でお酒を飲むことを角打ちと呼ぶケースもあります。

角打ちと聞くと、近所の常連客の憩いの場や、仕事帰りのミドル世代の渋いたしなみと思う人もいるかもしれません。しかし近年はその価値や魅力が見直され、若い世代にもジワジワと浸透しています。それに伴い、老若男女がたのしめて、旅行者でも立ち寄りやすいスポットが増えているようです。

角打ちスタイルの始まり

日本酒はもともと瓶や紙パックで売られるものではなく、酒屋さんの店頭で量り売りされるのが一般的でした。客は酒屋の名前が書かれた「通い徳利(かよいどっくり)」と呼ばれる陶磁製の容器を持ってお酒を買いに行き、計量用の升で注ぎ入れた分だけ代金を支払います。なお、酒屋から貸し出される通い徳利の容量は、一升(約1.8リットル)が主流だったようです。

お酒を買いに来る人のなかには、家に帰るまで待ちきれない人も多かったとか。そこで酒屋さんは、呑ん兵衛たちのささやかなニーズに応えるべく、升で量ったお酒を店内で提供するようになりました。これが、酒屋さんの店頭で飲むという角打ちスタイルの始まりだと考えられています。

角打ちは場所が違えば呼び方も違う

角打ちは現在、東京、大阪などの大都市はもちろん、北陸や東北、九州、中国・四国地方など日本全国でたのしむことができます。また、地方によって呼び方が異なる場合があります。

立ち呑み

関西では角打ちを「立ち呑み」ということも。あくまで酒屋の一角で飲むことを指し、通常の「立ち飲み」とは区別されています。

もっきり

東北地方では「もっきり」というのが一般的です。なぜ「もっきり」と言われるようになったのかは、量り売りの際に、升や皿の中にグラスを入れ、グラスから升や皿にこぼれるほど酒を注ぎ入れることを「もっきり」といわれていたからだそうです。

たちきゅう

島根県の一部と鳥取県では、「たちきゅう」という名称がスタンダードといわれています。立ったままきゅうっと飲む様子に由来しているそう。

角打ちの歴史と文化

角打ちの歴史と文化

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語源やスタイルについてお話ししてきましたが、ここからは大正時代から続く角打ちの歴史と文化について見ていきましょう。

角打ちが定着したのは大正時代の北九州

酒屋の店頭で飲む文化は江戸時代からありましたが、「角打ち」として定着したのは大正時代のことです。発祥地とされているのは、福岡県北九州市門司(もじ)区。明治22年(1889年)に国の特別輸出港として開港した門司港は、明治24年(1891年)の九州鉄道の門司・遠賀(おんが)間開通により石炭の積出港として栄えます。
その後、角打ちは北九州工業地帯の発展とともに広がり、本州などへ移転する労働者を介して全国へ伝わったと考えられています。

角打ちは「ちょっと1杯」を気軽にたのしめる粋な文化

角打ちがたのしめる酒屋さんでは、お酒だけでなく、スナック類や缶詰などのつまみ類を購入することも可能です。おつまみの充実した店もあり人気を集めていますが、酒類や料理を提供する一般の飲食店とは決定的な違いがある事も理解しておきましょう。

酒屋さんはサービス業ではなく、あくまで酒類販売業。角打ちは店が善意で行っているサービスだということを、昔なじみの常連客や角打ちになじみのある客はよくわかっています。立ち寄る人々は短い時間内に酒を味わい、コミュニケーションをたのしみ、疲れを癒やす。仕事帰りの「ちょっと1杯」を気軽にたのしめる粋な文化として、利用する人も多くいます。

角打ち。その「ちょっと一杯」の魅力とは

角打ち。その「ちょっと一杯」の魅力とは

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大正時代から角打ちが愛され続けてきた理由とは一体何でしょうか。ここからは角打ちの魅力に迫ります。

角打ちの魅力1:気軽にお酒をたのしめる

角打ちの一番の魅力は、酒屋さんの販売価格でお酒を味わえること。購入したその場でたのしめるのはもちろんのこと、多くの場合テーブルチャージなどは一切不要。コップや水なども店側のサービスなので、リーズナブルにお酒をたのしむことができます。酒屋さんでの通常の販売価格に、いくらか上乗せしている場合もありますが、それでもお手頃価格です。

また、店の一角の限られたスペースを利用しているため、おつまみも割安。飲食店の営業許可を取得していない酒屋さんでは、飲食店のように店員が注文を受けたり、料理を作って運んで来たりするなどの接客サービスはありませんが、その分気兼ねなく気軽に利用できる飲み方といえそうです。

角打ちの魅力2:飲み比べがたのしめる

角打ちの魅力であり最大のメリットといえるのが、さまざまな日本酒などの飲み比べがたのしめること。
酒屋さんでは目移りするほど多くの銘柄を扱っているため、味の比較のために1本ずつ購入していてはキリがありません。その点、1杯単位で代金が設定されている角打ちなら、複数の銘柄を少量ずつ味わえます。

試飲感覚で日本酒をたのしむうち、とっておきの銘柄と出会えたら、多くの場合ボトルで購入し、持ち帰りできるのも角打ちの魅力です。

角打ちの魅力3:情報交換やコミュニケーションの場

角打ちスポットには、自然とお酒好きが集まってきます。多くは自宅や職場の最寄り駅近所の角打ちに寄るので常連さんが多く、何度か通うと顔なじみになれます。
仕事帰りの人や近所に住む人だけでなく、噂を聞きつけてやってきた遠方の人や、国内外からの旅行者まで、さまざまな人が訪れては気楽に酒を酌み交わすのです。

飲食店のようなサービスを受けにくるのではなく、店の一角で飲ませてもらう。その独特の雰囲気をわきまえた客たちは、ある意味同好の士。同じ空間でお酒をたのしむうちに自然とコミュニケーションが生まれます。おいしい日本酒やおつまみにまつわる情報が交わされることもあるので、周りの雰囲気を確認したうえで肩肘張らずに話しかけてみるのもたのしいですよ。

知っておきたい!角打ちの一般的なルール

知っておきたい!角打ちの一般的なルール

tsuchihami / PIXTA(ピクスタ)

角打ちファンの間には、不文律ともいうべき暗黙のルールが存在します。これさえ押さえておけば、初めての利用でも安心してお酒をたのしむことができるので、覚えておくとよいでしょう。

角打ちでの料金は前払い

お酒を買ってから飲む、というのが角打ちスタイルの基本。支払い方法はお店によって異なるため、最初に確認する必要があります。その際、お店の人に聞くのも手ですが、すでに飲み始めている常連客に倣うのも手。セルフサービスの店も多いので、店ごとのシステムを把握することから始めましょう。

角打ちは居酒屋にあらず

角打ちを行う酒屋さんはあくまでも酒類小売店であり、飲食業ではありません。ほかのお客さんがいる場合はスペースを上手にシェアし、場の空気を乱さないよう、節度ある行動を心がけ、たのしく飲みましょう。店側への過度なサービスの期待も禁物です。

角打ちで長居はしない

長居はせず、適度な量を飲んで退散するのが角打ちの流儀。角打ちはみんなの場所なので、譲り合う気持ちも大切です。スペースの大きさや混み具合にもよりますが、滞在時間の目安は30分から長くても1時間といわれています。

角打ちをたのしめるスポットの探し方

角打ちをたのしめるスポットの探し方

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角打ちの魅力を知るには、体験してみることが一番。ここでは角打ちをたのしめるスポットの探し方を紹介します。

まずは身近で!角打ちを体験してみよう

北九州市から発祥した角打ちは、現在日本全国でたのしめます。まずは家の近所や、職場の最寄り駅などにある角打ちスポットで体験してみましょう。
角打ちができるお店選びのコツは、ずばり口コミ。昔ながらの店はホームページを持っていない場合が多いため、地元に住むお酒好きの人や飲食店、酒屋さんなどのツテをたどるのが、よい角打ちスポットを見つけるための近道。Google Mapなどで「角打ち」と検索するのもおすすめです。

角打ちの本場、九州で角打ちをたのしもう

角打ちスポットといえば、やはり発祥地である北九州市です。このエリアには今も100軒以上の角打ちが存在しているそう。

北九州市内の角打ちスポット情報は、グルメサイトやまとめサイト、角打ちファンの情報サイトで仕入れることができます。地図アプリで「角打ち」と検索するのもあり。昔なじみの常連客が集う老舗店から、有名人がふらりと立ち寄る隠れた名店、蔵元がリサーチにくる人気店まで、さまざまな店舗が独自のつまみを用意し、酒好きを出迎えてくれます。北九州市を訪れた際はぜひはしご酒をたのしんでみては?

ネオ角打ち、角打ちバーなど。現代流角打ちも続々登場!

近年は、誰もが入りやすい新感覚の角打ちが続々登場し、若い世代を中心に人気を集めています。

おしゃれなカウンターで飲める「角打ちバー」、料理と一緒に日本酒をたのしめる「角打ちバル」、アンテナショップや料理店とのコラボを行ったり、こだわりのラインナップで攻める、今までにないスタイルを打ち出す「ネオ角打ち」など、従来の角打ちとは一線を画しながらも、角打ち本来の魅力を忠実に受け継いだ店舗が話題を集めています。なかにはゆったり座って飲めるスポットもあるので、好みに合ったお店を探してみてください。

なお、一般的な角打ちとは料金システムが異なる場合があるので注意が必要です。

好みのスタイルで角打ちをたのしもう!!

角打ちは、立ち飲みやちょい飲み以上にカジュアルで、それでいて通好みともいえる飲み方です。
気軽に日本酒などをたのしめるのはもちろん、飲み比べやお酒好きとのコミュニケーションを通じて、日本酒などに対する知識や愛が深まる場でもあります。未体験の人はぜひ近場で試してみてください。

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