「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」はその名のとおり澄んだ「水」を想わせるやわらかな味わいの日本酒
「上善如水」は新潟県の白瀧(しらたき)酒造が手掛ける日本酒銘柄です。今回は「上善如水」の読み方や言葉の意味、誕生秘話、「水」にたとえられる味わいの特徴とおすすめの飲み方、蔵元・白瀧酒造の酒造り、「上善如水」の定番4酒の特徴などを紹介します。
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「上善如水」を知るために、まずは酒名の読み方や意味からチェックしていきましょう。
「上善如水」の意味は? 誕生秘話もユニーク!
出典:白瀧酒造株式会社サイト
「上善如水」という銘柄名には、深い意味と蔵元の想いが込められています。誕生秘話もあわせてみていきましょう。
酒名となった四字熟語「上善如水」の読み方や意味は?
「上善如水」の読み方は「じょうぜんみずのごとし」です。
由来となったのは、古代中国の思想家・老子(ろうし)が書いたと伝わる思想書『老子』に登場する言葉。『老子』では「上善若水」と表記され、「じょうぜんはみずのごとし」と読まれるほか、「じょうぜんじゃくすい」と音読みされることもあります。
その意味は、人の理想的な生き方を示唆するもので、万物に恵みを与えながらも争うことなく、器に従って形を変える柔軟さなどを持つ「水」の性質を「上善」、すなわち最高の善にたとえています。
「上善如水」という酒名には、「水」のように柔軟な姿勢でピュアな酒造りをめざす蔵元の想いが込められているのです。
Table-K / PIXTA(ピクスタ)
「上善如水」が誕生したきっかけはスキーブーム!?
今から30年以上前の1990年、日本はスキーブームの真っただ中。「上善如水」を造る白瀧酒造の地元、新潟県の豪雪地帯・湯沢(ゆざわ)町にも、新たにGALA(ガーラ)湯沢スキー場がオープンしました。
同じ年、スキーをたのしむために湯沢町にやってくる若者を、ピンポイントでターゲットに定めた日本酒が発売されました。それが「上善如水」です。
当時、白ワインがよく飲まれていることを知った蔵元は、ワインと同じ醸造酒の仲間である日本酒も飲んでもらえるはずと、白ワインのようなフルーティーな香りとすっきりとした飲みやすさの「上善如水」を造りました。
ラベルのデザインも、白を基調としたスタイリッシュなものにして発売したところ、ねらいどおりスキー客として湯沢町を訪れていた若者たちに支持され、やがて全国にその名が知られるようになりました。
酒名のとおり、水のような柔軟さを発揮した蔵元は、伝統にとらわれない画期的な味わいとデザインに挑むことで、日本酒になじみがなかった若者のニーズをとらえることに成功したのです。
「上善如水」の「水」を想わせる味わいとおすすめの飲み方
出典:白瀧酒造株式会社サイト
「上善如水」は口当たりがなめらかで、すっきりとした味わいのお酒。あらゆるものと調和する「水」のような、シンプルで清らかなその味わいは、飲みやすさも抜群で、日本酒の入門酒としてはもちろん、食中酒にもぴったりです。
「上善如水」ブランドのお酒は、基本的に冷やして飲むのがおすすめ。そのうち2022年の「12ヶ月のお酒」シリーズにもラインナップされている「ひやおろしの上善如水 純米吟醸」は、まろやかで深みのある旨味たっぷりのお酒で、燗酒でもおいしく飲めます。
冷酒も燗酒も、温度帯によって味わいが変わってきます。キンキンに冷やすのがよいか、ほんのり冷えているのがよいかなど、いろいろ試してお気に入りの温度帯を見つけてくださいね。
「上善如水」の味わいを生む、白瀧酒造の酒造り
出典:白瀧酒造株式会社サイト
「上善如水」を醸造する白瀧酒造の歴史と、白瀧酒造の酒造りについて紹介します。
白瀧酒造は江戸時代から続く新潟の老舗蔵元
白瀧酒造は、幕末期の安政2年(1855年)に創業した老舗蔵です。
初代の湊屋藤助(みなとやとうすけ)氏が、越後(現・新潟県)と関東を結ぶ三国(みくに)街道の宿場町・湯沢に蔵を構え、地元の豊富な雪どけ水を使って酒造りを開始。街道を行き交う旅人や行商人にお酒を提供したのが始まりと伝わります。
上越新幹線が開業し、蔵から徒歩圏内に越後湯沢駅ができた今では、新潟の代表的な酒造メーカーのひとつとなった白瀧酒造。2022年現在は、7代目蔵元の高橋晋太郎氏のもと、杜氏の松本宣機(まつもとたかき)氏を中心に「上善如水」「湊屋藤助」「魚沼」などの日本酒銘柄を手掛ける一方、化粧品事業にも参入。
日本酒の醸造過程で生成される保湿成分に着目し、化粧品メーカーの技術で開発した「上善如水スキンケア」を発売。「上善如水ハンドトリートメント」など人気商品が生まれました。
画像提供:白瀧酒造株式会社
最新の機器を活かしながら造り手の五感を大切にする酒造り
白瀧酒造は、1970年代半ばの先々代高橋敬一郎氏の時代から高品質化をめざして設備の導入を進めてきました。1990年ごろからは機械化を推進。今では徹底した衛生管理のもと、最新の機器を活かした酒造りが行われています。
一方で、機械任せでは応用が利かなくなるため、昔ながらの手造りの技術も継承。伝統的製法の「生もと系」の日本酒造りなどをとおして、見た目や香り・温度などで日本酒の変化を識別できる五感を養っています。
なお、白瀧酒造は2011年から、品質管理の強化などを目的に、出荷する日本酒の全量を純米酒に切り替えています。
仕込み水には、軽やかでやわらかくほんのり甘味があるという雪どけ水由来の地下水を使用。敷地内の3つの井戸からくみ上げているこの水は軟水で、白瀧酒造が手掛ける日本酒の酒質を決め、香りや味わいを生み出す源となっています。
「上善如水」のラインナップ
「上善如水」の定番4酒を紹介。味わいはもちろん、手に取ってみたくなるスタイリッシュなデザインも魅力的。「純米吟醸」「純米大吟醸」「純米吟醸 生酒」ではクリア感が際立つオリジナルボトルを使用しています。
上善如水 純米吟醸
出典:白瀧酒造株式会社サイト
「上善如水」の定番中の定番酒。華やかな香りと、やや辛口のすっきりとした味わいが特長。冷やして飲むのがおすすめです。
2021年に精米歩合を60パーセントから55パーセントとするなど、日本酒を飲むきっかけのお酒となるために、つねに飲みやすさを追求してきた商品。生牡蠣のレモン添えや春雨サラダなど、軽めの料理とよく合います。
上善如水 純米大吟醸
出典:白瀧酒造株式会社サイト
「上善如水」ブランドの最高峰。気品のあふれる香りと、口中にゆっくり広がる深みのある飲み口が特長の純米大吟醸酒。瞬間加熱殺菌技術を採用したことでフレッシュな味わいがたのしめます。
冷やしておいしいお酒で、アボカドと海老のサラダやちらし寿司などにぴったり。贈り物にもおすすめの1本です。
上善如水 スパークリング
出典:白瀧酒造株式会社サイト
華やかな香りとすっきりとした口当たりの純米スパーリング酒。やわらかな甘味とシュワシュワとはじける炭酸の爽快感がたまらない1本。食前、食後を問わずたのしめます。
シーザーサラダやチキン南蛮、サラミソーセージやジンギスカンなどと合わせて飲んでもおいしい、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード 2021」スパークリングSAKE部門金賞受賞酒。
容量が360ミリリットルサイズなのもうれしいですね。
上善如水 純米吟醸 生酒
出典:白瀧酒造株式会社サイト
加熱殺菌処理をしない、しぼりたての香りと味がそのまま味わえる純米吟醸生酒。もぎたての果実を想わせるフレッシュかつまろやかな味わいが特長です。
蔵元からクール便で全国へ直送している要冷蔵のお酒。料理との相性もよく、鶏肉の竜田揚げやヒラメの刺身などと合わせて飲むのもおすすめです。
そのほかの「上善如水」と「上善如水」から生まれた派生ブランド「by Jozen」
白瀧酒造では、ひと月ごとに季節のお酒や旬のお酒を提供する「12ヶ月のお酒」シリーズを展開。2023年版では「花見酒の上善如水 純米吟醸」「ひやおろしの上善如水 純米吟醸」「新米新酒の上善如水 純米吟醸」「にごりの上善如水 純米吟醸」の4つの「上善如水」がラインナップされています。
また、「上善如水」から派生した「by Jozen」は、飲みやすく低アルコールでジューシーな甘口酒をそろえた挑戦的なシリーズ。新感覚の味わいが特長で、現在は「ロック酒 by Jozen 純米」がたのしめるほか、2023年は「生もとにごり酒 by Jozen 純米」、「キウイ由来酵母 by Jozen スパークリング」「はちみつ由来酵母 by Jozen 純米」の3種類が期間限定で登場する予定です。
「上善如水」は、日本酒の入門酒として飲みやすさを追求しているブランドです。定番酒はもちろん、さまざまな「上善如水」を味わってみてくださいね。
※この記事は、2022年12月現在の情報をもとに作成しています。
製造元:白瀧酒造株式会社
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