村上春樹氏のエッセイを片手に、アイラ島とアイルランド島のウイスキーをたのしもう

村上春樹氏のエッセイを片手に、アイラ島とアイルランド島のウイスキーをたのしもう
出典 : maeching chaiwongwatthana/ Shutterstock.com

村上春樹氏著『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』は、ウイスキーが無性に飲みたくなる旅エッセイとして有名です。今回は、村上氏がスコットランドのアイラ島で訪ねた2つの蒸溜所とアイルランドのパブで触れた2銘柄に注目して、それぞれの特徴を紹介します。

  • 更新日:

村上春樹氏のウイスキーを題材にしたエッセイとは?

Alexey Lysenko/ Shutterstock.com

『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』の概要

村上春樹氏の著書『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』は、1999年に平凡社から出版されたエッセイで、現在は新潮文庫で読むことができます。


エッセイで綴られているのは、ウイスキーの生産地として名高いスコットランドのアイラ島とアイルランドを巡った旅の記憶で、美しい写真とともに、それぞれの地に根づくウイスキー文化を垣間見ることができます。

この本を手に取れば、村上氏の目線で語られるウイスキーの魅力に引き込まれ、読み進めるごとにウイスキーが飲みたくなるでしょう。

スコッチウイスキーとアイリッシュウイスキーについて

スコットランドとアイルランドは、「どちらがウイスキーの発祥地か」と議論が巻き起こるほど、ウイスキーの歴史が深い地域です。ここでは、それぞれで生産されているウイスキーの特徴をおさらいしておきましょう。

【スコッチウイスキー】
スコットランドで生産されるウイスキーを総称して「スコッチウイスキー」といいます。スペイサイドやハイランドなど、おもに6地域で造られていますが、なかでも「スコッチの聖地」と称されるアイラ島のシングルモルトは個性が強く、世界中のウイスキーファンに愛されています。

【アイリッシュウイスキー】
アイルランド共和国と英国領北アイルランドで生産されるウイスキーを総称して「アイリッシュウイスキー」といいます。2020年時点で5つの大手蒸溜所が稼働していますが、ほかにも新興の蒸溜所が増加中です。スコッチと比べると、日本ではあまり馴染みのない人が多いかもしれませんが、その味わいが見直され、近年再び注目を集めています。

村上春樹氏が見学したアイラ島のウイスキー蒸溜所と銘柄

Martin M303/ Shutterstock.com

村上春樹氏が訪れたボウモア蒸溜所とスコッチウイスキー「ボウモア」の特徴

アイラ島の中心部に位置するボウモア蒸溜所は、スコットランドで最古級の歴史を誇るウイスキー蒸溜所です。ボウモア蒸溜所では、手間のかかるフロアモルティングで発芽させた大麦麦芽を、キルン塔でピート(泥炭)を焚いて乾燥させ、採取した麦汁を木桶の発酵槽で発酵させるなど、熟練の職人の手による伝統的なウイスキー造りが続けられています。

海辺の熟成庫で熟成される「ボウモア」は、スモーキーで潮の香りをたっぷりと感じられるのが特徴。「アイラ(アイラモルト)の女王」の名にふさわしい気品も感じられます。

アイラ島で暮らす「人」が、伝統を重んじて造り出す魅力あふれるウイスキーを、存分に味わってみてください。

村上春樹氏が訪れたラフロイグ蒸溜所とスコッチウイスキー「ラフロイグ」の特徴

ラフロイグ蒸溜所は、アイラ島南部の風光明媚な街、ポート・エレンに位置する蒸溜所です。ここで造られる「ラフロイグ」は、英国王室御用達銘柄として知られていますが、かつてはブレンデッドウイスキーの原酒として重宝されていました。

ラフロイグ蒸溜所では、伝統的なフロアモルティングも一部行われていますが、多くの工程で近代的な手法が採用されています。とはいえ、「アイラモルトの王」と称される強烈な個性は健在。スモーキーで薬品のような独特な香り(ヨード香)をはじめ、濃厚でやや塩気を感じる味わいや、ドライな後味が堪能できます。

造り手の提言どおり、能書きは気にせず、「ラフロイグ」のありのままの個性をたのしんでみてはいかがでしょう。

村上春樹氏が旅で触れたアイリッシュウイスキーの銘柄

Pierre Leclerc/ Shutterstock.com

村上春樹氏がパブで味わったアイリッシュウイスキー「ブッシュミルズ」の特徴

「ブッシュミルズ」は、英国領北アイルランドのブッシュミルズ蒸溜所で製造されている銘柄です。400年以上の歴史を持つブッシュミルズ蒸溜所は、アイルランドに現存する最古級の蒸溜所として知られています。

軽やかでスムースな口当たりの「ブッシュミルズ」は、原料にノンピートのアイルランド産大麦麦芽を100%使用し、3回蒸溜を行うなど、アイリッシュウイスキーの伝統製法を守って造られています。製麦からボトリングまでの全工程が蒸溜所内で一貫して行われているのも特徴です。

ピートを焚きしめた大麦麦芽を使用し、2回蒸溜で造られたスコッチウイスキー銘柄と、飲み比べてみるのもよいかもしれませんね。

村上春樹氏がパブで目にしたアイリッシュウイスキー「タラモアデュー」の特徴

「タラモアデュー」は、アイルランド共和国南部の都市・コークに位置するミドルトン蒸溜所で製造されている銘柄です。もともとはオファリー州タラモアのタラモア蒸溜所で造られていた銘柄ですが、残念ながら1954年に閉鎖されたため、ミドルトン蒸溜所に引き継がれました。

ノンピートの大麦麦芽と穀類を原料に造られる「タラモアデュー」は、フルーティーで香味のバランスがよく、マイルドで飲みやすいのが特徴。村上氏がパブで出会った常連客のように、1杯をじっくり味わいたくなるウイスキーです。



スコットランドとアイルランドには魅力的なウイスキーがたくさんありますが、村上春樹氏の本を読むときは、今回紹介したウイスキーをお供にしてみてはいかがでしょう。ウイスキー旅行を追体験している気分になれるかもしれませんよ。

参考:村上春樹著『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』新潮文庫刊

おすすめ情報

関連情報

ウイスキーの基礎知識

日本ビール検定(びあけん)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事