熊本の日本酒【産山村(うぶやまむら):産山酒米研究会】無農薬米を醸した純米吟醸酒
「産山村」は、熊本県産山村で造られている日本酒です。産山酒米研究会が、地元の名水と、完全無農薬の「鯉農法」で丹精込めて作った酒米「五百万石」を使い、ていねいに醸しています。研究会の想いと自然豊かな村の恵みを詰め込んだ良酒「産山村」を紹介します。
- 更新日:
「産山村」は3つの誓いのもと、名水を使って醸される
出典:産山酒米研究会
「産山村」に込められた3つの誓い
「産山村」は、熊本県で造られている日本酒です。平成10年(1998年)に、産山酒米研究会が自ら育てた米を使って仕込んだのが始まりです。醸造は研究会のメンバーも参加して、山鹿(やまが)市の千代の園酒造で行われています。
酒造りを始めたきっかけは、自分たちがこだわって生産した無農薬米を使って醸した、「とっておきの酒」を飲んでみたいと思ったことでした。
研究会の発足時、メンバーたちは以下の3つの誓いを立てています。
1、奇をてらわない。酒米は土地に合ったものを使う。
2、自然に逆らって作らない。除草は鯉農法。
3、自分たちで作った米で、こだわって作る完全無農薬。
「産山村」は、この3つの誓いに基づき、地のものを原料に、ていねいに手を掛けて醸されているのです。
「産山村」は地元の名水を使って醸される酒
「産山村」の酒名になっている熊本県産山村は、県北東部に位置する人口1,450人(2020年11月現在)の村です。標高約500~1,047メートルの、夏でも30度を超えることが少ない高原地帯で、阿蘇北外輪山と、くじゅう連山に囲まれています。
自然豊かな産山には、環境省の名水百選に選出された「池山水源」があります。毎分約30トンという豊富な水量を誇る湧水で、昔から住民の飲料水や農業用水として利用されてきました。産山酒米研究会のメンバーの水田にも、この池山水源の水が引かれています。
なお、原料米を育てたこの水は、「産山村」の醸造を始める際に精米した米とともに千代の園酒造に運ばれ、仕込み水などにも使われています。
「産山村」の原料米「五百万石」とは
出典:産山酒米研究会
「産山村」の原料米は?
「産山村」に使われている米は、日本酒造りに適した特徴を持つ酒造好適米のひとつ「五百万石」です。
「五百万石」は、昭和32年(1957年)に新潟県で誕生。同年の新潟県の米生産量が500万石(約75万トン)を超えたことから、この名が命名されました。
酒造好適米のなかでも、「五百万石」の生産量は「山田錦」に次ぐ第2位。新潟県、北陸地方を中心に、南東北から九州まで、広い範囲で作付けされています。
この米は粒が小さく、精白率を上げると砕けやすい一方で、心白が大きく麹菌(こうじきん)が入り込みやすいという長所があります。すっきりとしたキレのよい味わいになりやすいのも特徴で、淡麗辛口ブームの立役者となりました。
「産山村」の原料米に「五百万石」が選ばれた理由
「産山村」を造る産山酒米研究会は、発足後、米選びからスタートしました。日本酒の原料米に詳しい大学教授と検証を重ねた末、選ばれたのが「五百万石」だったのです。
酒造好適米の王者とも呼ばれる「山田錦」ではなく、「五百万石」が選ばれたのには理由があります。
産山は、九州のなかでも気温が低い高原地帯にある村です。「五百万石」は、寒冷地・新潟の気候風土に合うように開発された米で、高地低温の産山での栽培にも適しているため、選ばれたのです。これは、研究所のメンバーが発足時に立てた「3つの誓い」のひとつ、「酒米は土地に合ったものを使う」という条件にも適う選択でした。
「産山村」は「鯉農法」で作る無農薬米を使った純米吟醸
出典:産山酒米研究会
「産山村」の原料米を作る「鯉農法」とは
「産山村」は、地元の名水と精米歩合55%の「五百万石」のみを原料に、熊本酵母で醸した純米吟醸酒です。
前述の「3つの誓い」の2つめと3つめの条件のとおり、使われている「五百万石」は完全無農薬米。そして田植え後には「鯉(こい)農法」が行われています。
「鯉農法」とは、農薬を使わずに行う雑草・害虫対策のひとつ。水田に鯉を放つと、尾びれの動きで水や泥がかき回されて雑草が生えにくくなったり、害虫を食べてくれたりするのです。
日本酒「産山村」の裏ラベルの生産者表記の欄には、産山酒米研究会の一員として、メンバーの名前よりも前に、「鯉(コイ)」と記されています。鯉は、安心安全で良質な「五百万石」を育てるために欠かせない大切な仲間なのです。
「産山村」の原料米作りには地元の子どもたちも協力
「産山村」に使われる「五百万石」の生産には、産山の子どもたちも協力しています。
産山酒米研究会では、田植えが終わった5月中旬に鯉を田に入れ、7月初旬に田から出しています。子どもたちが大活躍するのはこのときです。田から鯉を出すときは、水を抜いた田に水着を着た子どもたちが入って、鯉を素手で捕まえていきます。泥んこになりながら捕まえた鯉は、1日でなんと200匹にもなるそう。
研究会のメンバーは、彼らが大人になって、一緒に日本酒「産山村」を飲んだり、米作りや酒造りの仲間になったりする日が来るのを、たのしみにしています。
日本酒「産山村」は、産山の自然の恵みから生まれるおいしいお酒です。「産山村」ブランドには焼酎もあり、日本酒同様に完全無農薬の鯉農法で育てた「五百万石」を原料に醸されています。日本酒、焼酎ともに生産量はごくわずか。見つけたら迷わず入手して、香り高く贅沢な味わいをたのしんでみてください。
製造元:産山酒米研究会
公式サイトはありません