熊本の日本酒【美少年(びしょうねん):株式会社美少年】小学校の校舎で醸される旨い酒
「美少年」は、熊本県の日本酒です。平成25年(2013年)に、現蔵元が、それまで「美少年」を造っていた火の国酒造から事業を譲り受け、製造販売をスタートしました。環境と原材料にこだわった酒造りによって醸される新生「美少年」。その魅力に迫ります。
- 更新日:
「美少年」の名の由来と歴史
出典:美少年サイト
「美少年」の名の由来
「美少年」は、熊本県の北部に位置する菊池市の蔵元、株式会社美少年の日本酒ブランドです。
個性が際立つ酒名「美少年」の由来となっているのは、唐の時代に活躍した中国の詩人・杜甫(とほ)が、同時代の8人の酒豪について詠(うた)った「飲中八仙歌(いんちゅうはっせんか)」。その4番目に登場する崔宗之(さいそうし)を詠んだ一節、「宗之瀟洒美少年」(「宗之はあか抜けている美男子」の意味)にちなんでいます。
「美少年」の歴史
「美少年」には、江戸時代から続く歴史があります。宝暦2年(1752年)、名君として知られる熊本藩の6代藩主細川重賢(ほそかわしげかた)の命を受けた下田家が、現在の熊本市南区城南町で酒造りを開始。大正9年(1920)年に下田家の血を引く緒方求太郎氏が南薫(なんくん)酒造を興し、「美少年」を発売しました。
南薫酒造はその後、美少年酒造、火の国酒造と名を変えます。
そして平成25年(2013年)、現在の蔵元である株式会社美少年が火の国酒造から酒造事業を譲り受け、菊池市の山間部に建つ旧水源小学校の校舎に蔵を移転。以来、「美少年」をはじめとする日本酒や焼酎、甘酒などを造っています。
「美少年」はどんな日本酒?
出典:美少年サイト
「美少年」は自然豊かな環境のなかで醸される
「美少年」の蔵元がある熊本県菊池市は、北部の八方ヶ岳から東部の阿蘇山(あそさん)の外輪山である鞍岳にかけて山々が連なり、市中を流れる菊池川の源流、菊池渓谷があるなど、豊かな自然に恵まれた土地です。
「空気も大切な原材料」という信念から、蔵元は山の木々と棚田の緑に囲まれたこの地に蔵を移しました。「美少年」は抜群の環境のなかで醸される日本酒なのです。
「美少年」の蔵元がこだわる地元の原材料
「美少年」の蔵元は、地元菊池産の原材料にこだわった酒造りを行っています。
水は、菊池渓谷系の伏流水を使用。菊池渓谷の水は「菊池水源」として、環境省の名水百選に選定されている良水で、日本酒造りに欠かせないミネラル分が多く含まれています。
菊池は水質がよい土地であるばかりでなく、土壌が肥沃で、江戸時代には「天下第一の米」と呼ばれた肥後米(ひごまい)の中心産地でもありました。蔵元は、現在も米処として知られる菊池産の「ヒノヒカリ」を使った酒造りにも取り組んでいます。
「美少年」は世界を見据える菊池の酒
「美少年」の蔵元には、蔵を構える菊池から世界に認められる酒を造り出そうという志があります。
その想いが現実となったのは平成30年(2018年)のこと。「純米にごり酒」が、フランスで開催されている日本酒の品評会「Kura Master」のにごり酒部門でプラチナ賞を受賞したのです。
翌、令和元年(2019年)には、純米酒部門で「純米酒 清夜」がプラチナ賞、「純米吟醸 菊池」が金賞をダブル受賞。ともに、菊池の水と米を使って醸したものです。火の国酒造より「美少年」を受け継いでから6年、世界の舞台で「オール菊池」ともいえる新生「美少年」が認められたのです。
「美少年」は伝統を受け継ぐ酒造りから生まれる日本酒
出典:美少年サイト
「美少年」の蔵元の酒造り
「美少年」の蔵元は、伝統的な日本酒造りの基本「一麹(こうじ)・二酛(もと)・三造り(つくり)」に則った酒造りを行っています。
第一に日本酒の味そのものに関わるよい麹造り、第二に口当たりなど日本酒の骨格を形成する酒母(酛)造り、第三に香りやアルコールの生成に深く関わる醪(もろみ)の仕込み(造り)を重視。蔵元は、手を掛けた酒造りに、最新鋭の機器と技術を融合させて「美少年」を醸しています。
「美少年」が造られている蔵は、元小学校校舎。甑(こしき)などを置いた元給食室で洗米と蒸米を終えたあとは、隣の元校長室と保健室を改装した杉板張りの麹室(こうじむろ)で製麹(せいきく)を行うなど、教室が連なる校舎特有の構造を活かして、製造工程の効率化も図られています。
「美少年」は有名な漫画にも登場するお酒
「美少年」は、漫画家の松本零士氏との縁がある日本酒です。松本氏の作品『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』などに登場するキャラクター・トチローが、作中で「美少年」という名の日本酒を愛飲しているのです。それをきっかけに、松本氏と前蔵元とのつき合いが始まり、現在の蔵元になった今も縁が続いています。
「美少年」のラインナップには松本氏がラベルを手掛けた商品や、トチローが飲んでいた「美少年」のラベルを復刻した商品もあります。
「美少年」のラインナップ紹介
松本零士氏に由来する銘柄を含め、「美少年」ブランドの商品をいくつか紹介します。
【大吟醸 賢者】
酒造好適米の「山田錦」を精米歩合40%で使用。華やかな香りとふくらみ、まろやかで軽快な甘味、キレのよさが調和した飲み飽きない大吟醸です。旨味と香りの絶妙なバランスがたのしめます。
【純米吟醸 劍門】
さわやかな吟醸香と、酸味・甘味・キレのハーモニーが心地よい食中酒にぴったりな辛口純米吟醸。冷やでよし、ぬる燗でよしの1本で、飲み口はほんのりフルーティーで甘味と旨味が味わえます。
【純米酒 清夜】
菊池産の米「ヒノヒカリ」を使用した純米酒。濃醇な味わいで、ふくよかな甘味が口中に広がります。しっかりとした酸味もあり、のど越しはすっきりしています。「Kura Master 2019」純米酒の部プラチナ賞受賞酒です。
【大吟醸 幻夜】
白ワインを思わせる繊細で上品な大吟醸。ラベルには松本零士氏監修の美女がデザインされています。熟成したリンゴのような甘く芳醇な香りと、透明感のあるあと口が特徴。和食にぴったりの味わいです。
【純米吟醸 零】
ラベルにキャプテンハーロックが描かれた松本零士氏監修の純米吟醸酒。酒名は松本氏の名前から「零」の字をもらってつけられました。酸味と甘味がほどよく調和する食中酒におすすめの1本です。
【純米吟醸 美少年】
松本零士作品に登場する酒「美少年」のラベルを復刻。独自に分離培養した酵母を使用した、華やかな香りとすっきりとした飲み口が特徴です。米のやわらかな旨味とふくらみのある甘味が味わえます。
【學び舎(まなびや)】
蔵見学限定販売酒。種類は大吟醸酒・純米吟醸酒の2種類です。「美少年」の蔵元では、蔵見学を予約制で実施していて、蔵を見学した人だけが「學び舎」を購入することができます。なお、蔵の見学は時季によって内容が異なるため、詳細は公式サイトなどで確認してください。
熊本の日本酒「美少年」は、地元・菊池産の原材料にこだわって、ていねいに造られている美酒です。漫画家の松本零士氏をも魅了した銘柄は、どれも逸品ぞろい。機会があれば、レアな日本酒「學び舎」も入手して、じっくり味わってみてくださいね。
製造元:株式会社美少年
公式サイトはこちら
熊本に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【九州編】