佐賀の日本酒【能古見(のごみ):馬場酒造場】老舗蔵が精魂込めて醸す美酒
「能古見」は、佐賀県の蔵元、馬場酒造場の日本酒銘柄です。農薬の使用量をできるだけ抑えて栽培した地元産の酒造好適米を原料に、じっくりていねいに醸されています。今回は、馬場酒造場のこだわりの酒「能古見」の魅力を、余すところなく紹介しましょう。
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「能古見」の誕生
出典:馬場酒造場
「能古見」を生んだ蔵元は?
「能古見」は、佐賀県の西南部に位置する鹿島(かしま)市の蔵元、馬場酒造場を代表する日本酒ブランドです。
馬場酒造場は、江戸時代後期の寛政7年(1795年)に創業。以後、200年以上にわたり、日本酒を造り続けてきた老舗蔵です。現在は8代目当主の馬場第一郎氏が杜氏も兼ね、「蔵元杜氏」として蔵を支えています。
蔵元のポリシーは「信頼される蔵元であること」。生産量を調整し、完璧に管理できる範囲で酒造りを行うことを徹底しています。
現体制は当主の馬場氏のほか5人の少数精鋭の蔵で、細やかに目を配り、精魂込めた日本酒造りが行われています。
「能古見」の誕生の背景
日本酒「能古見」が生まれたのは、平成5年(1993年)のこと。当時の日本酒業界は、全国的に日本酒の消費量が低迷するという厳しい現実に直面していました。また、各地の蔵元で、跡継ぎ不足の問題が噴出し始めたのもこのころといわれています。さらに当時は、バブル崩壊後の酒類価格の自由化を受け、大手メーカーが普通酒を低価格で販売するようになっていたこともあり、苦境に立たされていた蔵元が多かったといいます。
このような時代背景のなかで、会社の存続も危ぶまれる状況に危機感を抱いた馬場氏は、これまでの馬場酒造場の酒造りのスタイルを見直します。「自分が造りたいお酒を、想い入れのあるお酒を造りたい」。そう思い立った馬場氏は、酒米の最高峰といわれる山田錦を地元鹿島で生産し、原料をオール地元産とした特定名称酒で生き残る道を選ぶ決心をしました。
そうして、地元の水と米を使い、佐賀の食材や濃い味つけに合う、やや甘口の酒「能古見」を立ち上げたのです。
「能古見」の名の由来
馬場酒造場が蔵を構える、佐賀県鹿島市三河内(みかわち)は、昭和29年(1954年)に5町村が合併して鹿島市制がスタートするまで、藤津郡能古見村という名称でした。
合併によって村の名は消滅してしまいましたが、蔵元は、新しく立ち上げた日本酒に、ふるさとのかつての地名である「能古見」と名づけたのです。そこには、古くからこの地に根づく蔵元の信念が込められています。
「能古見」生む原材料
出典:馬場酒造場
「能古見」の原材料は?
佐賀の地酒「能古見」は、地元の水と地元産の米から生まれる日本酒です。
仕込み水には、蔵の南方、佐賀県と長崎県の県境に位置する多良岳(たらだけ)山系の伏流水が使用されています。この水は軟水で、甘さを感じるおいしい水として評判です。たくさんの人が水を汲みに訪れるほど、地元では人気があるそう。
米は、「酒米の王様」とも呼ばれる地元産「山田錦」と、佐賀県生まれの品種「さがの華」を使用。品質の高さはもちろん、飲む人の安全安心も重んじ、できるだけ農薬の使用量を抑えて丹念に育て上げられた米を厳選しています。
「能古見」は米の生産者との信頼関係から生まれる
「能古見」に使われる「山田錦」と「さがの華」は、日本酒造りに向いている「酒造好適米」です。
酒造好適米は一般に、稲穂の背が高いため倒れやすく、栽培の難易度が高い品種が多いといわれています。そのため、安定した収穫量を得るには、たしかな栽培技術を持つ生産者の協力が必要不可欠です。
馬場酒造場では、酒造りへの想いに対して理解を得ることのできた9軒の地元米農家と契約を結んでいます。長年にわたる交流により、地元の生産者との信頼関係を築き、理想とする「能古見」の原料米を調達しているのです。そうして、米の個性を活かした「能古見」を醸しています。
「能古見」はこうして造られる
出典:馬場酒造場
「能古見」の酒造り
「能古見」の酒造りは、じっくり手間をかけて行われています。
洗米後の米を水に浸して吸水させる「浸漬(しんせき)」の工程では、加湿器を使って湿度を緻密にコントロール。適度な湿度で吸水させた米を蒸すことで、麹などのでき上がりを左右する「蒸し米」の質を高めています。
また、仕込みの工程は、普通酒のおよそ2倍の日数をかけて、じっくり低温発酵で行われます。そして、搾りを終えた日本酒は、品質の低下をできる限り抑えるために冷蔵で貯蔵。取引先にも冷蔵貯蔵を徹底してもらっているそうで、蔵元は、出荷後の管理にまでしっかりと気を配っています。
こうした細やかでていねいな造りを守り続けてきた「能古見」は、これまで全国新酒鑑評会で5度入賞し、そのうち3度も金賞に輝いています。また、福岡国税局主催酒類鑑評会では大賞も受賞しています。
「能古見」のスタンダードなラインナップ
「能古見」ブランドは、スタンダードな商品が中心ですが、期間限定商品などもいくつかラインナップされています。まずは定番商品から紹介しましょう。
【能古見 大吟醸】
「山田錦」を精米歩合35%まで磨き上げ、原料米の良質な部分を贅沢に使用した「能古見」ブランドのフラッグシップ商品。お米の甘味、きれいな味わい、リンゴのような華やかな香りが広がる、極上の大吟醸酒です。
【能古見 純米大吟醸】
「山田錦」を精米歩合40%まで磨き、純米ならではのお米の旨味、甘味を表現した、マイルドな口当たりの純米大吟醸酒。バランスのとれた芳醇なお酒で、きれいな後味と、心地よく広がる余韻をたのしめます。
【能古見 純米吟醸】
地元鹿島産の「山田錦」を使用し、栽培農家と蔵元の想いが詰まった、能古見を代表する1本。果実のような芳しい香りと「山田錦」由来の味わいのバランスに優れていて、飲みやすさが魅力の人気商品です。食事との相性もバッチリ。
【能古見 純米吟醸辛口(裏純米吟醸)】
やわらかな甘口の酒で知られる「能古見」の裏バージョン。品のよい香りと「山田錦」由来の豊かな味わいのあと、辛口ならではのキレのよい後味を堪能できます。食中酒としてもおすすめの純米吟醸辛口です。
【能古見 特別純米】
ほのかな香りとお米の味わいを感じることができる、あっさりしたタイプの特別純米酒。硬質米である「さがの華」を使用し、純米酒でありながらライトなお酒に仕上げられています。毎日飲んでも飽きない、食事のお供にもおすすめのお酒です。
「能古見」の期間限定商品のラインナップ
「能古見」の、年に1度の限定商品と、毎年造りを変えているその年限定の商品を3本紹介します。
【能古見 純米吟醸あらばしり】
その年いちばんに搾ったお酒を生のまま瓶詰めした「あらばしり」は、春先に人気のお酒です。若々しい「山田錦」の味わいと、華やかな香り、搾りたての新酒ならではのフレッシュ感をたのしめます。
【能古見 純米吟醸中取り生原酒】
年に1回、6月に発売される数量限定酒。搾りの工程の2番目に出てくる、良質な「中取り」の酒だけを生のまま瓶詰めし、約3か月間低温貯蔵したのちに出荷される贅沢な1本です。精米歩合50%の「山田錦」を使用している酒で、米由来の華やかで洗練された味わいがたのしめます。
【能古見 特別純米活性にごり スパークリング】
佐賀県生まれの酒造好適米「さがの華」を精米歩合58%で使用したスパークリング。こちらも年1回のみ、7月に発売される数量限定酒です。瓶内で2次発酵させた活性生酒で、発泡は強め。爽快感とともに米の旨味とキレをたのしめます。
【JOKER(ジョーカー)】
原料米も精米歩合も何もかもすべてが非公開という「能古見」のシークレット限定酒。毎年造り方を変えているため、味わいも年ごとに異なります。きき酒もたのしい遊び心満載の大人気酒です。
妥協なき酒造りから生まれる、こだわりの美酒「能古見」は、生産量が少なく、希少価値の高い日本酒です。見かけたら迷わず手に取り、味わってみてくださいね。
製造元:有限会社馬場酒造場
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