福岡の日本酒【三井の寿(みいのことぶき):みいの寿】科学とセンスと情熱で造る純米酒
「三井の寿」は、「科学とセンスと情熱」を酒造りのモットーとする福岡県三井(みい)郡の蔵元、みいの寿の主要銘柄です。ラインナップのほとんどを占めているのは「純米酒系」の酒。あの大人気漫画との縁も深い、日本酒「三井の寿」の魅力を紹介します。
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「三井の寿」の名の由来と誕生のきっかけ
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「三井の寿」の名前の由来とは
「三井の寿」は、福岡県三井郡大刀洗町(たちあらいまち)で、大正11年(1922年)から酒造りを行う、みいの寿の主要日本酒銘柄です。
蔵が建つ大刀洗町は、江戸時代の参勤交代にも使われた街道筋にある町で、福岡県の中南部に位置しています。この街道周辺にはよい水が湧く3つの井戸があり、大刀洗町が属する三井郡の名の由来になったといわれています。「三井の寿」の名も、ここから命名されました。
大刀洗町一帯は自然に恵まれ、蔵のそばには九州最大の河川である筑後川に注ぐ清流、小石原川が流れています。現在の「三井の寿」の仕込み水は、この小石原川の伏流水です。地下約86メートルから汲み上げて、そのまま使用しています。
「三井の寿」が純米酒系中心の酒造りに転換したきっかけ
「三井の寿」のラインナップは、現在9割以上が特定名称酒で、そのほとんどを純米酒系の酒が占めています。
蔵元が普通酒の大量生産をやめ、質を求める純米酒路線に転換したきっかけは、昭和57年(1982年)に、福岡市とワインの産地として名高いフランスのボルドー市が姉妹都市になったことでした。
この年、現当主である井上宰継(ただつぐ)氏の父で先代当主の茂康氏は、ワイン醸造を学ぶためボルドー市の5大シャトーを視察。生産者のワイン造りにかけるプライドやこだわり、そして土地の風土を大切にするテロワールの考え方などに共感し、量より質を重視する純米酒系中心の日本酒造りに舵を切ったのです。
「三井の寿」の酒造りのモットーとは
「三井の寿」を醸すみいの寿は、能登杜氏に学んだ当主の井上宰継氏と、弟の康二郎氏をはじめとする蔵人が日本酒造りを行う、蔵元杜氏の蔵です。
モットーは「科学とセンスと情熱だ!!」。この「科学」の意味には、醸造に大きく関わる「化学」はもちろん、「自然科学」や「社会科学」「人間学」など、あらゆる学問が含まれているといいます。
そこには、これまで杜氏の経験に頼りがちだった酒造りを、総合的な要素が複雑に絡み合う「科学」として捉え直し、積極的に疑問点を見つけて改善することで、よりよい酒を造っていこうという、蔵元の気概が込められているのです。
「三井の寿」の蔵元は純米酒系にこだわる
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「三井の寿」がこだわる純米酒系の日本酒とは
「三井の寿」のラインナップの中心である純米酒は、特定名称酒のひとつ。特定名称酒とは、清酒のなかでも、規定の条件に基づいて造られた日本酒のことを指します。
たとえば純米酒には、以下のような条件が定められています。
◇米と米麹だけを原料とする
◇麹米の使用割合は15%以上
◇農産物検査法で3等以上に格付けされた米か、それに相当する品質の米を使用
◇香味・色沢が良好
なお、純米酒系の特定名称酒には純米酒のほかに、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒があり、それぞれで定められた原料や精米歩合、製法などの条件を満たす必要があります。
「三井の寿」は、蔵元のこだわりによって、手間暇かけて造られているお酒なのです。
「三井の寿」に使われているいろいろな酒米
「三井の寿」ブランドの日本酒には、いろいろな種類の米が使われています。
酒造好適米では、田植えの手伝いも行っているという福岡県糸島産や、有機栽培で作られる熊本県阿蘇産などさまざまな産地の「山田錦」をはじめ、「五百万石」や九州生まれの「吟のさと」などを使用。また、日本酒の原料に向いている一般米では、福岡生まれの酒米「夢一献(ゆめいっこん)」などを用いています。
ほかにも、幻の米である「三井神力(みいしんりき)」や「穀良都(こくりょうみやこ)」、山形県の「十四代」の蔵元、高木酒造から譲り受けた「愛山(あいやま)」や「酒未来(さけみらい)」といった、希少価値の高い米を使った商品もあり、それぞれの米の旨味がたっぷり味わえます。
「三井の寿」の個性的なラインナップ
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「三井の寿」と大人気漫画『スラムダンク』
「三井の寿」には、大人気バスケットボール漫画『SLAM DUNK スラムダンク』と縁の深い商品があります。それが、日本酒度がプラス14の「三井の寿 純米吟醸 山田錦 +14大辛口」です。
この商品のラベルは、表裏のない両A面仕様となっています。片面は通常の日本酒らしいデザインですが、もうひとつの面には、赤地に黒文字で「三井の寿」「+14」と入っています。これは、背番号14の主要キャラクター「三井寿(みついひさし)」のユニフォームをモチーフとしたものです。
作者の井上雄彦氏は、蔵元当主の名字をペンネームにするほどの「三井の寿」ファン。「三井寿」の名前も「三井の寿」に由来します。
なお、「+14」ラベルは井上氏の事務所も了解済みだそうで、過去には白地に赤文字のアウェイユニフォームラベルの生酒も発売されています。
「三井の寿」は世界的にも評価の高い日本酒
「三井の寿」は、米の持ち味が引き出された、深みのある旨味とキレが特徴の、奥行きのある日本酒です。国内外を問わず、高く評価されていて、令和元年(2019年)にも、世界最大級の品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2019」の古酒部門で、「三井の寿 山廃 純米 古酒」が福岡・古酒トロフィー(各部門最高賞)を受賞しています。
甑(こしき)を使って米を蒸し、伝統の蓋(ふた)麹法で、破精(はぜ)込みのよい麹を造るという手間を惜しまない酒造りと、低温貯蔵などの細やかな熟成管理から生まれる極上の酒が、「三井の寿」なのです。
「三井の寿」の多彩なラインナップ
「三井の寿」の多彩なラインナップのなかからいくつか紹介しましょう。
【三井の寿 純米大吟醸 斗瓶(とびん)採り】
福岡県糸島産「山田錦」を精米歩合40%で使用。搾りは、醪(もろみ)を酒袋に入れ、一切圧力をかけずにしたたり落ちる雫を集めるという「斗瓶採り」で行っています。上品な香りと奥の深いコクがたまらない逸品です。
【三井の寿 純米大吟醸 三井神力】
往時、三井郡で栽培されていた幻の米「三井神力」。その種もみを九州大学から譲り受け、数年かけて復活させ、精米歩合50%で使用したこだわりの酒です。1年間熟成させた味わいは、ぬる燗でさらにふくらみます。
【三井の寿 純米吟醸 酒未来】
「十四代」の高木酒造が育種した「酒未来」は、高木氏が認めた蔵しか使えない希少な酒米。やわらかな香りとなめらかな酸が特徴のこの酒は、米の旨さを十分に引き出すため、日本酒度がマイナスになるように仕上げられています。丹精込めて仕込まれた、飲み飽きしない1本です。
【三井の寿 春純吟 クアドリフォリオ】
「吟のさと」を精米歩合60%で使用した、春限定の無ろ過薄にごり生酒。「クアドリフォリオ」とはイタリア語で「幸運の四葉のクローバー」の意。香りが華やかな旨酒で、冷やして飲むのがおすすめです。
【三井の寿 夏純吟 生詰 チカーラ】
「チカーラ」とは「セミ」を意味するイタリア語。「夢一献」を精米歩合60%で使用した生詰め酒で、りんご酸を多く出す「夢酵母」を使って、さわやかさとやさしい甘さを醸し出しています。夏限定純米酒です。
【三井の寿 ひやおろし 秋純吟 ポルチーニ】
イタリアのキノコ「ポルチーニ」を思い起こさせる芳醇な香りが特徴のひやおろしは、「吟のさと」を60%まで磨いて使用した秋限定の純米酒。燗でも冷やでもおいしい、すっきりとした味わいの食中酒です。
【三井の寿 冬純米 活性にごり ネーベ】
冬限定の無ろ過活性にごり生酒。「夢一献」を精米歩合60%で使用したフレッシュなスパークリング酒で、発酵途中の醪を瓶詰めし、瓶内二次発酵させています。なお、「ネーベ」とは「雪」を意味するイタリア語です。
「三井の寿」は多彩なラインナップが魅力です。いずれも米の旨味が活きた「純米酒系」の日本酒で、一つひとつが個性的なので、飲み比べるとたのしさが倍増します。造りがほんの少し違うだけで、味わいががらりと変わる日本酒の奥深さを、ぜひ体感してみてくださいね。
製造元:株式会社みいの寿
公式サイトなし
福岡県三井郡大刀洗町栄田1067-2
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