ヴァッティングがウイスキーにもたらす影響とは? 【ウイスキー用語集】

ヴァッティングがウイスキーにもたらす影響とは? 【ウイスキー用語集】
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「ヴァッティング」とは、異なるウイスキー原酒を混ぜ合わせることですが、「ブレンディング」とはどう違うのでしょう? ここでは、ヴァッティングの定義とともに、ヴァッティングにはどんな意味があるのか、ウイスキーにどんな変化もたらすのか、などを調べてみました。

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「ヴァッティング」とは同種のウイスキー同士を混ぜ合わせること

「ヴァッティング」とは同種のウイスキー同士を混ぜ合わせること

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ヴァッティングが意味することは?

「ヴァッティング」とは、ウイスキー用語では、複数の樽で熟成させた同種類のウイスキー原酒を混ぜ合わせることを意味します。
もともと「ヴァッティング」の「ヴァット(Vat)」とは「大きな桶」のこと。樽で熟成させたウイスキー原酒を、大きな桶に注いて混ぜ合わせていたことから、こう呼ばれるようになったのだとか。

ヴァッティングは同種のウイスキー同士で行うもの

ヴァッティングと同様に、ウイスキー原酒を混ぜ合わせることを意味する言葉に「ブレンディング」があります。ヴァッティングが同種の原酒を混ぜ合わせるのに対し、ブレンディングは異なる種類の原酒を混ぜ合わせます。
スコッチウイスキーなどでは、ウイスキーは大きく、大麦麦芽(モルト)を主原料とした「モルトウイスキー」と、トウモロコシや小麦、ライ麦などの穀類を主原料に、糖化のためのモルトを加えて造る「グレーンウイスキー」に大別されます。
モルト原酒同士、あるいはグレーン原酒同士を混ぜ泡合わせる場合は「ヴァッティング」、モルト原酒とグレーン原酒を混ぜ合わせる場合は「ブレンディング」と呼ばれます。

ヴァッティングする理由や目的は?

ヴァッティングする理由や目的は?

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ヴァッティングはウイスキーの品質を均一にするための作業

ヴァッティングは何のために行うのでしょうか? その大きな理由が、ウイスキーの品質を均一化することです。
よく「ウイスキーは生き物」とたとえられるように、同じ蒸溜所で造られた原酒であっても、樽内で長期にわたって熟成されるなかで、香りも味わいも微妙に異なってきます。
仕上がりの異なる原酒をそのまま瓶詰めし、流通させていては、品質が一定しません。そこで、複数の樽の原酒を混ぜ合わせることで、商品としての質を一定に保っているのです。

ヴァッティングはブレンダーの技術次第

ヴァッティングは、単に品質を均一化するだけではなく、ウイスキーの味わいを深めるものでもあります。異なる個性を持った原酒同士を混ぜ合わせ、その個性がうまく調和すれば、より魅力的なハーモニーが生まれます。
こうしたヴァッティングやブレンディングを担当する専門家が「ブレンダー(ウイスキーブレンダー)」。ブレンダーは、多くの樽を一つひとつ確認し、それぞれの熟成具合を見定めながら、それらをどう混ぜ合わせれば良質なウイスキーになるかを追求する、まさに“職人”です。
ヴァッティングによってどんなウイスキーが市場に送り出されるか、それはブレンダーの腕次第というわけです。

ヴァッティングされたウイスキーは何と呼ばれる?

ヴァッティングされたウイスキーは何と呼ばれる?

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ヴァッティングされたウイスキーにも種類がある

ヴァッティングには、異なる蒸溜所の原酒を混ぜ合わせる場合と、単一の蒸溜所の原酒のみを混ぜ合わせる場合があり、それぞれで造られるウイスキーの呼び方も異なります。
モルトウイスキーの場合、前者を「ブレンデッドモルト(ヴァッテッドモルト)」、後者を「シングルモルト」と呼びます。それぞれの魅力を簡単に紹介しましょう。

【ブレンデッドモルト(ヴァッテッドモルト】

ウイスキーは、蒸溜所を取り巻く気候風土や、造り手の技術・こだわりになどよって、それぞれ異なる個性を持ちます。
ブレンデッドモルトでは、蒸溜所ごとに異なるモルト原酒の個性が絡み合い、複雑化した香りや味わいをたのしめます。
なお、もともとは「ヴァッテッドモルト」と呼ばれていましたが、「ヴァッテッド」の「V」の発音が外国人には難しいとの理由で、2006年 にはスコッチウイスキー協会(SWA)が「ブレンデッドモルト」と表記するよう通達しています。

【シングルモルト】

単一の蒸溜所で造られたモルト原酒のみを、複数の樽からからヴァッティングしたものが「シングルモルト」です。シングルモルトは、蒸溜所ごとの個性が凝縮された、まさに「造り手の顔が見えるウイスキー」として、近年、ウイスキー愛好家を中心に注目が高まっています。

ヴァッティングしないウイスキーは何と呼ばれる?

ヴァッティングは、ウイスキーを均質化するための工程ですが、あえてヴァッティングを行わず、選りすぐりの一樽からのみ瓶詰めして販売される場合もあります。これを単一(シングル)の樽(カスク)、すなわち「シングルカスク」と呼びます。
ほとんどが数量限定で販売されるプレミアムなもので、入手困難なうえに価格も高額になりますが、愛好家にとっては垂涎の的といえます。

ヴァッティングは、樽ごとに個性の違うウイスキー原酒を混ぜ合わせることで、品質を安定させて商品化するための技術。おいしいウイスキーをたのしめるのも、こうした造り手の工夫があるからこそなのですね。

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