素晴らしいウイスキーを生む ブレンディングとヴァッティングとはなにか?
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ウイスキーの種類
ウイスキーには、原料と蒸留の違いで3種類があります。
「モルトウイスキー」は大麦が原料。蒸留方法は、ポットスチルと呼ばれる単式蒸留器で行います。銅製の丸い形の蒸留器を見たことがあるかもしれません。単式蒸留器は1回ごとにウォッシュ(もろみ)を入れて蒸留する方式です。ポットスチルのサイズや形状でできる酒質が異なり、個性の強いウイスキーができます。
「グレーンウイスキー」は、大麦のほか、ライ麦やトウモロコシなどが原料。塔状の連続式蒸留機で行います。連続式はウォッシュを連続的に投入できる蒸留機です。アルコール度数を95度まで上げることができ、しかも短時間で大量に蒸留することが可能です。
そして、世界で流通しているウイスキーの約9割といわれるのが「ブレンデッドウイスキー」。複数の蒸留所のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものです。
ブレンディングとヴァッティング
たくさんの手間をかけてつくったモルトウイスキーとグレーンウイスキー。樽から出された後の作業がブレンディングとヴァッティングです。
ブレンディングとは、モルト原酒とグレーン原酒を合わせること。ヴァッティングとは、モルト原酒同士を合わせることです。グレーン原酒同士を合わせる場合もヴァッティングといいます。
シングルモルトは、単一蒸留所の複数の樽からモルト原酒がヴァッティングされたもの。ちなみに、あえてひとつの樽からボトリングしたものが、個性が強く稀少な「シングルカスク」です。
ひとつの銘柄でも20~50種類にも及ぶ原酒を合わせるのはウイスキーブレンダ―と呼ばれる専門家。何種類もの原酒を毎回同じ味わいに調合するエキスパートです。
ブレンディングとヴァッティング後、再び樽に詰めて数週間~2年ほど寝かせる場合もあり、これを「後熟(こうじゅく)」または「マリッジ」といいます。同じ樽で寝かせることで、あわせた原酒をしっかりなじませる効果があります。
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ブレンデッドウイスキーの考案者
ブレンデッドウイスキーを最初に考案した人物がアンドリュー・アッシャー。1853年にスコッチでブレンデッドウイスキーを造りました。ただし、彼が考案したブレンデッドウイスキーは現在のものとは異なり、熟成年数の異なるモルト原酒同士をヴァッティングしたヴァッテッドモルトでした。このウイスキーは「アッシャーズ・オールド・ヴァッテッド・グレンリベット」と名付けられて評判になりました。
当時ウイスキーは酒屋で量り売りされるのが一般的であったので、毎回味が違い品質にもばらつきがありました。複数の樽のウイスキーを混ぜることで味や香りのばらつきをなくし、品質も一定に保つことができたことがブレンデッドウイスキーでした。
当時は、モルト原酒とグレーン原酒を熟成庫内でブレンドすることは禁止されていましたが、1860年の酒税法改正で可能に。磨いたブレンドの技術を駆使してモルト原酒とグレーン原酒をブレンドし、ブレンデッドスコッチを完成させたのです。
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