連続式蒸溜器がウイスキーの歴史を変えた!?【ウイスキー用語集】

連続式蒸溜器がウイスキーの歴史を変えた!?【ウイスキー用語集】
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「連続式蒸溜器」と聞くと、蒸溜酒であるウイスキー造りで重要な役割を担っていることはイメージできると思いますが、その構造や特徴を説明するのは意外と難しいかもしれません。ここでは、連続式蒸溜器の歴史や仕組み、伝統的な「単式蒸溜器」との違いなどを、初心者向けにわかりやすく説明します。

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ウイスキーの連続式蒸溜器の仕組みとメリット

ウイスキーの連続式蒸溜器の仕組みとメリット

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連続式蒸溜器とはどんな仕組み?

「連続式蒸溜器」とは、その名のとおり、連続して蒸溜できる装置のこと。
ウイスキー造りで伝統的に用いられてきた「単式蒸溜器」は、ごくシンプルな構造で、蒸溜するたびに毎回、原料を投入する、いわば「単発式」です。連続式蒸溜器は、この単式蒸溜器をいくつも連結させたもので、内部で単式蒸溜を繰り返すことで、アルコール度数の高いウイスキー原酒を効率的に造ることができます。

連続式蒸溜器や単式蒸溜器が担う「蒸溜」とはどんな工程?

連続式蒸溜器や単式蒸溜器について詳しく説明する前に、そもそも「蒸溜」と何かをおさえておきましょう。
蒸溜とは、異なる成分を含んだ液体から、成分ごとの沸点の違いを利用して特定の成分だけを取り出し、純度を高めることを言います。
ウイスキーや焼酎などの蒸溜酒は、原料をアルコール発酵させてできた原液(ウォッシュ:もろみ)から、水よりも沸点の低いアルコールを蒸溜して造ります。ビールや日本酒などの醸造酒と比べて度数が高いのはこのためです。

連続式蒸溜器で造られるウイスキーの特徴は?

連続式蒸溜器で造られるウイスキーの特徴は?

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連続式蒸溜器がもたらしたウイスキー造りの“産業革命”

連続式蒸溜器が誕生したのは19世紀、いわゆる“産業革命”の時代です。
イギリスで始まった産業革命は、蒸気機関を利用した機械工業が大量生産を可能にし、生産能力を急速に向上させました。この現象がウイスキー造りにも波及。1826年にスコットランドのロバート・スタイン氏が開発した原型を、1830年にアイルランドのイーニアス・カフェ氏が改良して特許(パテント)を取得しました。
今日では「パテント・スチル」あるいは「カフェ式連続式蒸溜器」と呼ばれる装置の登場により、ウイスキーの大量生産が可能になったのです。

連続式蒸溜器と単式蒸溜器では、どれほど効率が違う?

連続式蒸溜器では、原料となるウォッシュを連続して投入でき、一度の操作で90度前後のアルコール度数の高いウイスキー原酒が得られます。
これに対し、一度の単式蒸溜で得られる原酒のアルコール度数はだいたい20度前後。より純度の高いアルコールを得るには、何度も蒸溜を繰り返す必要があり、それだけ時間も手間もかかります。

連続式蒸溜器で造られるウイスキーの味わいは?

連続式蒸溜器で造るウイスキーは、アルコール以外の成分をあまり含まないため、雑味の少ない、クリアな味わいになる傾向があります。
これに対し、単式蒸溜器で造られるウイスキーは、一度の操作で得られるアルコール度数が低い分だけ、原料由来の香味成分を豊富に含んでいます。このため、原料や造り手の個性を反映した、クセのあるウイスキーが得られます。

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連続式蒸溜器の誕生がブレンデッドウイスキーを生んだ

連続式蒸溜器の誕生がブレンデッドウイスキーを生んだ

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連続式蒸溜器がウイスキーの新時代を開く

連続式蒸溜器がウイスキー業界にもたらしたのは、優れた生産効率だけではありません。じつは、連続式蒸溜器の登場が、ウイスキーを世界に普及させたと言われているのです。
もともとウイスキーは、スコットランドやアイルランドなど一部地域で伝統的に造られてきた“地酒”。その主流は、大麦麦芽(モルト)を主原料に、単式蒸溜器で造られるモルトウイスキーでした。
クセの強いモルトウイスキーは万人受けするものではありませんでしたが、連続式蒸溜器で造られるグレーンウイスキーの登場によって、状況は一変します。

連続式蒸溜器がウイスキーを世界に広げた

グレーンウイスキーとは、トウモロコシや小麦、ライ麦などの穀類を主原料に、糖化のための大麦麦芽を加えて造られるウイスキーのこと。
もともとは麦芽と比べて安価で入手可能な穀物を使って、コストダウンのために造られていたウイスキーでしたが、連続式蒸溜器の登場により、クリアでクセが少ない、リーズナブルなウイスキーとして、広く人気を博すようになりました。
その後、グレーンウイスキーにモルトウイスキーを混ぜ合わせた「ブレンデッドウイスキー」が登場。飲みやすさと奥深さをあわせ持った洗練された味わいで、一気に市場を拡大。ウイスキーの魅力が世界に広げる役割を果たしました。

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連続式蒸溜器で造られるウイスキーの種類は?

連続式蒸溜器は現在、グレーンウイスキーのほか、アメリカンウイスキーの代名詞として知られる、トウモロコシを主原料としたバーボンウイスキーなどでも用いられています。
一方で、蒸溜所ごとの個性を重視するスコットランドやアイルランド、日本のモルトウイスキー造りでは、今も伝統的な単式蒸溜器が用いられていて、造り手のめざすウイスキーによって、両者が使い分けられています。
これはちょうど、焼酎における連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)と単式蒸溜焼酎(乙類焼酎/本格焼酎)のような関係と言えるでしょう。

「甲類焼酎」と「乙類焼酎」、その違いを知ろう!

連続式蒸溜器は、ウイスキーのほかにも甲類焼酎やウォッカ、ラムなど、さまざまな蒸溜酒造りで活躍しています。蒸溜器の違いによる味わいの違いを知れば、こうした蒸溜酒をより深くたのしめるかもしれませんね。

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