単式蒸溜器がウイスキーの伝統製法と呼ばれる理由は?【ウイスキー用語集】

単式蒸溜器がウイスキーの伝統製法と呼ばれる理由は?【ウイスキー用語集】
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「単式蒸溜器」という用語は、ウイスキーに興味のある人なら聞いたことがあると思いますが、「具体的に何をするもの?」「他には何式がある?」など、今さら聞きづらい疑問を持っている人もいるかもしれません。ここでは、単式蒸溜器の仕組みやメリット、その歴史などを、改めて紹介します。

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ウイスキーの単式蒸溜器の仕組みとメリット

ウイスキーの単式蒸溜器の仕組みとメリット

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単式蒸溜器について知る前に、まずは「蒸溜」を知ろう

「単式蒸溜器」は、英語で「ポットスチル(Pot Still)」と呼ばれます。「蒸溜器」という言葉から、蒸溜酒であるウイスキー造りで重要や役割を果たしていることが読み取れると思いますが、まずは、この「蒸溜」について、おさらいしましょう。
蒸溜とは、成分ごとの沸点の違いを利用して純度を高めること。異なる成分が含まれた液体を熱すると、沸点の低い成分から蒸気になるので、これを抽出して冷やせば、純度の高い液体を得ることができるのです。
ウイスキーや焼酎などの蒸溜酒を造る際は、原料をアルコール発酵させてできた原液(ウォッシュ:もろみ)から、水よりも沸点の低いアルコールを蒸溜することで、アルコール度数の高いお酒を得ています。

単式蒸溜器は、なぜ「単式」と呼ばれるのか?

単式蒸溜器は、蒸溜器のなかでも古くからある仕組みで、ウォッシュを入れて加熱する「蒸溜釜」と、アルコールの蒸気を冷やして液体にする「冷却器」を、「連結管」でつないだだけのシンプルな構造をしています。
シンプルな構造だから「単式」と呼ばれているわけではなく、蒸溜するたびごとに毎回、ウォッシュを投入する必要があるため。つまりは「単発式」という意味です。
もともとは蒸溜器=単式蒸溜器なので、あえて「単式」とつける必要はありませんでしたが、後発の「連続式蒸溜器」と区別するために定着した呼び方です。

単式蒸溜器と連続式蒸溜器の違い

単式蒸溜器が伝統的な技術であるのに対し、連続式蒸溜器は19世紀、産業革命の時代に誕生した新しい技術です。
単式蒸溜では、一度に投入した量しか蒸溜できず、一度の操作で得られるアルコールの純度はウォッシュの約3倍程度。ウォッシュの度数はだいたい7度前後なので、20度くらいになります。より純度の高いアルコールを得るには、何度も蒸溜を繰り返す必要があり、それだけ時間も手間もかかります。
これに対し、連続的にウォッシュを投入し、一度の操作で高アルコール度数な蒸溜できるのが連続蒸溜器。いわば、単式蒸溜器がアナログ、単式蒸溜器はハイテクと言えるでしょう。

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単式蒸溜器で造られるウイスキーの魅力

単式蒸溜器で造られるウイスキーの魅力

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単式蒸溜器で造るウイスキーの特徴とは?

単式蒸溜器と連続蒸溜器では、ウイスキー造りの効率だけでなく、できるウイスキーの味わいにも大きな差が生じます。
単式蒸溜器の場合、一度の操作で抽出される原酒は純度が低く、アルコールと一緒にさまざまな成分も蒸溜されます。このため、原料由来の香気成分が豊富な、個性の強いウイスキーが得られます。
これに対し、連続式蒸溜器では、一気に高純度なアルコールが得られるため、原料の風味はあまり残らず、クリアな味わいのウイスキーとなります。
これはちょうど、焼酎における単式蒸溜焼酎(乙類焼酎/本格焼酎)と連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)のような関係と言えるでしょう。

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単式蒸溜器で造られるのはモルトウイスキーが主体

ウイスキーは、原料とする穀物によって、大麦麦芽を主原料とするモルトウイスキーや、各種の穀物を用いるグレーンウイスキー、トウモロコシを主原料とするコーンウイスキーなどに分類されます。
このうち、現在、単式蒸溜器で造られるのは、モルトウイスキーが中心。スコッチウイスキーでは、2回蒸溜によってアルコール度数70度前後のモルト原酒を造り、これを熟成、加水して40度程度に調整して瓶詰めするのが一般的。スコッチをお手本としたジャパニーズウイスキーも同様です。
アイリッシュウイスキーでは、単式蒸溜器による3回蒸溜が伝統的で、雑味の少ないなめらかな味わいを引き出しています。

単式蒸溜器にこだわる蒸溜所が多い理由

単式蒸溜器にこだわる蒸溜所が多い理由

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単式蒸溜器と連続式蒸溜器、どちらを選ぶべき?

単式蒸溜器と連続蒸溜器は、どちらが優れているかというものではなく、造り手となる蒸溜所が、どんなウイスキー造りを目指すかによって選ばれるものです。
造り手の個性やこだわりを反映させた“唯一無二”のウイスキー造りには、時間や手間がかかっても単式蒸溜器が向いています。一方、飲みやすくクセのないウイスキー造りをめざすなら、連続式蒸溜器が向いているでしょう。

単式蒸溜器と連続式蒸溜器、異なる個性が築いたウイスキーの歴史

実際、単式蒸溜器と連続式蒸溜器の歴史を振り返ると、両者を使い分けることで、ウイスキーが多様化し、世間に広がってきたことがわかります。
もともとは単式蒸溜器で造ったクセの強いモルトウイスキーが主体でしたが、その後、連続式蒸溜器で造るクセの少ないグレーンウイスキーが登場。両者の魅力を備えたブレンデッドウイスキーの誕生によって、より多くの人々にウイスキーの魅力が伝わりました。
やがて、飲みやすいブレンデッドウイスキーでは飽き足らない愛好家のために、単式蒸溜器による個性を活かしたシングルモルトウイスキー(単一の蒸溜所で造られたモルトウイスキーのみを瓶詰したもの)が注目されるようになり、ウイスキー文化はさらに発展していったのです。

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単式蒸溜器は、ウイスキー蒸溜のための古典的な製法が、現在まで受け継がれてきたもの。連続式蒸溜器の仕組みや歴史とあわせて知ることで、ウイスキーの魅力や奥深さが理解できそうですね。

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