【死神】島根の加茂福酒造が造る、縁起の悪いクセになる日本酒
「死神」という名の島根県加茂福酒造の日本酒。恐ろしい名前に反し、クセになる味わいが魅力です。年間わずか60石しか造られない貴重な酒「死神」の誕生秘話や魅力をご紹介します。
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「死神」の造り手、加茂福酒造は島根県邑南(おうなん)町の小さな蔵元
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「死神」の蔵元、加茂福酒造の酒造りを支える邑南町の風土
「死神」の造り手、加茂福酒造が蔵を構える邑南町(おおなんちょう)は島根県の中部に位置する自然豊かな町。標高の高い山から見下ろせば、幻想的な雲海を見られる日も。
清らかな水と豊かな食材に恵まれ、近年は伝統的な郷土料理を中心に「A級グルメのまち」として地域のブランド作りに注力するこの町で、新たな名産品となりつつあるのが「死神」です。
「死神」を生んだ加茂福酒造の現当主による、独自の酒造り
加茂福酒造は、大正11年(1922年)に賀茂神社の御神酒酒屋として創業して以来、地域に根づいた酒造りを続けてきました。
杜氏の高齢化などの環境変化を背景に、現当主の吉賀憲一郎氏が「杜氏に頼らない、経営者自らによる酒造り」を始めたのは1995年のこと。周囲からは厳しい目を向けられることもあったそうですが、賢明な努力の結果、次第に酒造技術が向上し「全国新酒鑑評会」で何度も金賞を獲得するほどになりました。
「死神」は、加茂福酒造の“逆転の発想”から生まれた酒
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「死神」は、年間わずか60石しか造られない貴重な銘柄
「死神」が誕生したのは、今から20年ほど前のこと。当時の日本酒業界は淡麗辛口が主流でしたが、「あえて時流と真逆の日本酒を造ればおもしろいのでは」との“逆転の発想”から生まれた、芳醇旨口の純米酒です。
日本酒の銘柄には、おめでたい言葉をつけるのが一般的ですが、流行の逆をいくお酒だけに、正反対のイメージの「死神」と名づけたのだとか。
こうして誕生した「死神」は、インパクトのある名前やラベルデザインだけでなく、しっかりしたコクのある味わいが「一度飲むとクセになる」と評判に。年に60石(一升瓶にして約6,000本)しか造られない希少性もあって、知る人ぞ知る人気銘柄となっています。
「死神」のモチーフとなった落語「死神」とはどんな話?
「死神」のモチーフとなった恐ろしい神様は、古典落語にも登場します。加茂福酒造の公式サイトでも紹介されている落語「死神」は、借金まみれの自殺志願者が主人公という、世知辛いお話です。
「死神」に金儲けの方法を教えてもらった男は、おかげで大金持ちになりますが、最後には「死神」を出し抜こうとして、その恐ろしさをまざまざと思い知らされることになります。
現代にも通じる含蓄ある落語「死神」を聞きながら、純米酒「死神」をたのしむというのも、また一興かもしれませんね。
「死神」だけではない、加茂福酒造のチャレンジ精神
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「死神」と並ぶ加茂福酒造の独創的な酒「古代酒」
「死神」は、蔵元自らが酒造りを行う、小さな蔵だからこそできた銘柄と言えますが、加茂福酒造のユニークな取り組みは、それだけではありません。
例えば、江戸時代中期の正徳2年(1712年)に発刊された図解入り百科事典「和漢三才図会」を頼りに、古代の酒造技術を再現して作り上げたのが「古代酒」。もともとは飲み会の席で出た冗談が発端となったお酒ですが、今では「死神」に次ぐ人気商品となっているのだとか。
島根大学との産学連携が生んだ「加茂福純米吟醸無濾過生原酒」
近年では、加茂福酒造の新たなチャレンジとして、地元・島根大学との産学連携による酒造りが注目を集めました。
島根大学が「7号酵母」と「アルプス酵母」を掛け合わせて造った「HA11酵母」を使って醸した「加茂福純米吟醸無濾過生原酒」は、フルーティーな香りと濃厚な味わいが魅力。機会があれば「死神」との飲み比べてはいかがでしょうか。
加茂福酒造は、「死神」や「古代酒」だけでなく、今も実験的なお酒を造り続けています。毎年、酒造りの時期には常連客から「今年はどんなお酒ができますか?」と聞かれるのだとか。そんな加茂福酒造の酒造りに、これからも注目です。
製造元:加茂福酒造株式会社
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