和歌山の日本酒【南方(みなかた):世界一統】紀州の天才・南方熊楠の実家が醸す酒
「南方」という和歌山県の地酒を知っていますか? 和歌山が生んだ天才博物学者、南方熊楠(みなかた・くまぐす)にちなんだ命名かと思いきや、なんと熊楠の実家が醸す酒。ここでは「南方」や、その蔵元である世界一統について紹介していきます。
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「南方」の蔵元は“知の巨人”南方熊楠の父が創業
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南方熊楠(みなかたくまぐす)は和歌山が生んだ天才
南方熊楠という人物を知っていますか? 和歌山が生んだ“博物学の巨星”と呼ばれ、地域の自然保護にも力を注いだエコロジストの先駆けとしても知られています。
幕末の慶応3年(1867年)に和歌山城下に生まれた南方熊楠は、幼い頃から自然界への並外れた好奇心を発揮。上京後は夏目漱石や正岡子規らの同門として学び、やがてアメリカやイギリスに留学し、科学雑誌「ネイチャー」への論文掲載で注目を集めます。
帰国後は、今や世界遺産として知られる熊野古道の入り口、紀州・田辺に定住し、豊かな自然のもとで植物や粘菌、さらには民俗学の研究を続け、幅広い分野でさまざまな成果を残しました。
南方熊楠の父が創業した蔵元、「世界一統」
南方熊楠は酒豪としても知られ、豪快な飲みっぷりを語るエピソードが数多く残されていますが、その実家が日本酒の蔵元だということはあまり知られていません。
南方熊楠の父、南方弥右衛門が、紀州候の米蔵を譲り受けて酒造りを始めたのは明治17年(1884年)のこと。その後、明治23年(1890年)には熊楠の弟、南方常楠が2代目を継ぎ、今も続く「世界一統(せかいいっとう)」の酒名で人気を博しました。
熊楠が国内外で研究生活を続けられたのは、こうした実家の支えがあったからこそと言えるでしょう。
「南方」の蔵元、世界一統がめざす「うまさの先へ」
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「南方」の蔵元、世界一統の命名者は大隈重信
「南方」の蔵元、世界一統は、もともと創業者の姓を取って「南方酒造」を名乗っていましたが、昭和46年(1971年)に代表銘柄の酒名を冠した社名に変更しました。
この気宇壮大な酒名は、2代目・南方常楠の時代に、早稲田大学の創立者としても知られる明治の政治家・大隈重信侯によって命名されたもの。大隈候が紀州を訪れた折、酒名の選定を依頼したところ、「世界を一統する酒界の一統たれ」との意味を込めて、「世界一統」と名づけられました。
「南方」の蔵元が酒造りに込めた想い
「南方」や「世界一統」など、世界一統が造る日本酒は、いずれも同社のスローガンである「うまさの先へ」という想いの結晶です。
創業者の息子・南方熊楠の業績に象徴されるように、好奇心と探求心、そしてチャレンジ精神は、世界一統を経営する南方家の血統であり、強みと言えます。
この持ち味を受け継ぎ、現在まで6代にわたって酒造りを続けてきた世界一統は、日々、進化し続ける食文化の未来を見据え、「うまさの先」を追求し続けます。
「南方」は酒好きだった熊楠も喜ぶ酒
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「南方」は限定醸造の吟醸酒
「南方」の蔵元、世界一統は、社名にも冠した代表銘柄「世界一統」だけでなく、辛口本醸造「五十五万石(ごじゅうごまんごく)」や純米酒「紀州(きしゅう)」など、地元・紀州にちなんだ銘柄を造り分けています。
なかでも、蔵元の名を冠した「南方」は、限定醸造の純米吟醸酒。精米歩合50%までていねいに磨き上げた国産米を、“酒造好適米の王様”と呼ばれる兵庫県産「山田錦」で造った麹で醸したこの酒は、華やかな吟醸香と、ふくらみのある芳醇な味わいがたのしめます。酒豪で知られた南方熊楠もきっと満足することでしょう。
「南方」だけではない、熊楠にちなんだ銘柄
「南方」と飲み比べをたのしみたいのが、南方熊楠の生誕120周年を記念して発売された「熊楠(くまぐす)」です。
「熊楠」は本醸造、大吟醸、特醸大吟醸の3酒類がラインナップされていますが、いずれも熊楠の写真がラベルになっています。熊楠直筆の句をラベルに入れた記念酒もあり、贈答品や紀州土産としても人気を集めています。
熊野古道の世界遺産登録や、生誕150周年などを機に、近年、改めて注目を集めている南方熊楠。和歌山を訪れる機会があれば、ぜひ、熊野にも足を伸ばして、「南方」を味わってみてください。
製造元:株式会社世界一統
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