シングルモルトウイスキーの魅力とは?特徴とおすすめ銘柄5選
シングルモルトウイスキーとは?その魅力や選び方、スコットランド、日本、アメリカ、アイルランドのおすすめ銘柄をご紹介。芳醇な香りと深い味わいを楽しむためのガイドとしてご参考になさってください。
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目次
「シングルモルト」とはどんなウイスキー?
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「シングルモルトウイスキー」は、大麦麦芽(モルト)を原料に、単一の蒸溜所で造られたモルトウイスキーのこと。
「モルトウイスキー」とはなにかというと、ウイスキーのもととなる原酒には、モルトを原料としたモルト原酒と、トウモロコシなどの穀類を原料としたグレーン原酒があり、このうちのモルト原酒のみを瓶詰めしたものを指します。
「カティサーク」「ジョニーウォーカー」「バランタイン」など、多くの有名なウイスキーは、基本的に複数のモルト原酒を組み合わせ(ヴァッティング)、さらにグレーンウイスキーをブレンドすることで造られる「ブレンデッドウイスキー」です。
それとは対照的に、ひとつの蒸溜所のモルト原酒しか使っていない、いわゆる混じり気のないウイスキーが、シングルモルトウイスキーと呼ばれるのです。
シングルモルトウイスキーは、同じ蒸溜所で造られたモルト原酒だけで造られているので、蒸溜所ごとの個性が色濃く表れやすいのが特徴です。
なお、複数の蒸溜所のモルト原酒をブレンドしたものは、ブレンデッドモルトウイスキー(ヴァッテドモルトウイスキー)と呼ばれます。
「 シングルモルトウイスキー」の選び方のポイント
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ここでは、シングルモルトウイスキーの選び方のポイントを紹介しましょう。
産地で選ぶ
シングルモルトウイスキーのおもな産地には、スコットランドや日本、アメリカ、アイルランドなどがあります。
シングルモルトウイスキーといえばスコットランドのスコッチウイスキーなので、まずはその定番銘柄から飲みはじめてみるのが王道です。またジャパニーズウイスキーも高品質な銘柄が多く、食事にも合わせやすいので、ウイスキーへの入り口としておすすめです。ただ、ジャパニーズウイスキーのシングルモルトは、世界的な人気で品薄なのが難点です。
近年は、台湾、インド、フランスなどの新興ウイスキー産地でもシングルモルトウイスキーが生産されていて、質の高さに注目が集まっています。ウイスキー好きの人は、試してみてはいかがでしょう。
熟成樽で選ぶ
ウイスキーは熟成樽で長期間熟成させることで完成します。寝かせている間に、樽材や過去に詰められていたお酒の個性がウイスキーに影響を与えるので、熟成樽もシングルモルトウイスキーを選ぶ際の大きなポイントになります。
熟成樽によく用いられている樽材には、アメリカンホワイトオークのほか、ヨーロッパ産のコモンオークやセシルオーク、日本特有のミズナラなどがあります。
また、ウイスキーの熟成に古樽を使うスコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーでは、過去に詰められていたお酒の風味も重要になってきます。おもにバーボンの古樽が用いられますが、ほかにもシェリー樽やワイン樽などが用いられることもあります。
なお、熟成樽の使用回数(フィル)によっても、風味が異なってきます。
定番銘柄で選ぶ
ウイスキーの初心者であれば、定番銘柄から選ぶのもおすすめです。スコッチウイスキーでは「ザ・マッカラン」「ボウモア」など、ジャパニーズウイスキーでは「山崎」「余市」などが挙げられます。
ただし、世界的な原酒不足によりシングルモルトウイスキーの供給量が需要に追いつかず、品薄状態が続いています。なかにはプレミアがついているものも。ボトルの購入にこだわらずに、バーなどのお店で1杯ずつたのしんだり、量り売りで少量ずつ試したりして、好みの味わいを見つけるのも手です。
産地によって違う「シングルモルトウイスキー」の特徴
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おもなシングルモルトウイスキーの産地と特徴をかんたんに見ていきましょう。
地域によって特色があるスコッチウイスキー
スコッチウイスキーはスコットランドで生産されているウイスキーの総称です。シングルモルトウイスキーのおもな産地は、スペイサイド、ハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラ、アイランズの6地域。それぞれで特色のある味わいのシングルモルトウイスキーが造られています。
【スペイサイド】
スコットランド最大の生産地。スコットランド北西部のスペイ川流域に、日本でも知られている有名蒸溜所をはじめたくさんの蒸溜所が集中しています。スペイサイドモルトは、フローラルかつフルーティーな味わいで華やかなものが多く、飲みやすいのが特徴です。
【ハイランド】
スコットランド北部の広大な地域に蒸溜所が点在していています。山や谷が多く起伏に富んでいて、絶景と評される美しい渓谷、グレンコーもここにあります。
ハイランドモルトは東西南北に分けて説明されることもありますが、一概にはいえず、各蒸溜所で独自の味わいのシングルモルトウイスキーが造られています。
【ローランド】
スコットランド南部のローランドはなだらかな平地が続く地域で、首都エジンバラを抱えます。穏やかな気候のなかで造られるローランドモルトには、初心者でも親しみやすい、まろやかでライトな味わいのものが多いのが特徴です。
【キャンベルタウン】
スコットランド南西部の海岸沿いの小さな港町に、数件の蒸溜所が稼働しています。キャンベルタウンモルトは、潮の香りのなかに調和した塩味・甘味が感じられる、リッチな味わいが特徴です。少数精鋭、少量生産で、質の高いシングルモルトウイスキーが造られています。
【アイラ】
スコットランド南西部に浮かぶアイラ島は、スペイサイドとともに「ウイスキーの二大聖地」と呼ばれています。アイラ島で造られるアイラモルトは、ピートをしっかり焚きしめたスモーキーさが特徴。クセが強く個性的な味わいで世界中のファンを魅了しています。
【アイランズ】
スコットランド西方に浮かぶ島々で生産されるウイスキーをまとめて、アイランズモルトといいます。オークニー諸島、スカイ島、ジュラ島など、島特有の厳しい環境から生まれるウイスキーはどれも個性的です。
品質の高さが魅力のジャパニーズウイスキー
ジャパニーズウイスキーのシングルモルトウイスキーは、スコッチウイスキーをお手本に造られています。世界で高く評価されている銘柄が多く、品質の高さが魅力です。なかには日本特有のミズナラ樽で熟成させたジャパニーズウイスキーもあり、とくに注目されています。
なお、日本には「ピュアモルト」と呼ばれる独自のジャンルもあります。もともとはシングルモルトウイスキーのことを指していましたが、近年は、複数の蒸溜所のモルト原酒をブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーのことを、ピュアモルトウイスキーと称することが多いようです。
バーボンだけじゃない!アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーといえば、トウモロコシなどの穀類を原料としたバーボンが思い起こされますが、数は少ないもののシングルモルトウイスキーも生産されています。
アメリカのモルトウイスキーの定義としてモルト(大麦麦芽)51%以上で造ることが規定されていますが、なかでもホワイトオークの新樽で2年の熟成期間を経たものはストレートモルトウイスキーとして流通しています。
なお、モルト100%以下で「シングルモルトウイスキー」と謳われていても、アメリカではモルト51%以上であれば問題なし。また「シングル」の意味合いも明確に定められていないので、単一の蒸溜所のモルト原酒のみで造られたウイスキーである必要もありません。
とはいえ、近年はスコットランドなどと同様に単一の蒸溜所で造られたモルト100%のシングルモルトウイスキーの生産を推進する動きも出てきているようです。
芳醇な香りをたのしめるアイリッシュウイスキー
アイルランドで生産されているウイスキーの総称がアイリッシュウイスキーです。アイルランドのシングルモルトウイスキーもまた、単一の蒸溜所のモルト100%の原酒から造られますが、スコットランドや日本とは蒸溜回数が異なる銘柄もあります。通常は2回のところ、なかには、伝統的な3回蒸溜で造られているものもあります。
なお、ピートを焚かないことが多いため、原料由来の芳醇な香りをたのしめる銘柄が多いのが特徴です。
ウイスキーの味を決める「熟成樽」
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ここでは、樽材と熟成樽の種類、特徴について見ていきましょう。
オーク樽とは?
オーク材で造った樽のことをオーク樽といいます。オークにはアメリカンホワイトオークのほか、「ヨーロッパ2大オーク」と呼ばれるコモンオーク(スパニッシュオーク)やセシルオーク(フレンチオーク)、日本特有のミズナラ(ジャパニーズオーク)などがあります。それぞれ以下のような風味をウイスキーにもたらすといわれています。
◇アメリカンホワイトオーク:バニラやココナッツのようなアロマ
◇コモンオーク:ドライフルーツのようなフルーティーなアロマ
◇セシルオーク:タンニン由来のスパイシーさ
◇ミズナラ:香木の白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)のようなオリエンタルなアロマ
熟成樽の種類
ウイスキーの熟成樽には、おもにバーボン樽とシェリー樽が使用されます。それぞれの特徴を確認しましょう。
【バーボン樽】
バーボン樽とは、バーボンの熟成に使った古樽のことで、おもにアメリカンホワイトオークが使われています。バーボンはアメリカの法律により、内側を焦がしたホワイトオークの新樽を使うことが定義づけられています。
【シェリー樽】
シェリー樽とは、シェリーの熟成に使用した古樽のことで、さまざまなオーク材が使われています。かつては、コモンオークやセシルオークで作られていましたが、近年はホワイトオークが多く用いられているようです。
シングルモルトウイスキーのオススメ銘柄
数あるシングルモルトウイスキーのなかから、オススメの銘柄を紹介しましょう。
シングルモルトのロールスロイス「ザ・マッカラン」
サントリー株式会社サイト
多彩なスコッチウイスキーの銘柄のなかでも、ひときわ高い知名度を誇るのが「ザ・マッカラン」です。
スコットランドでも最大のウイスキー産地であるスペイサイド地方では、華やかでバランスのよいウイスキーが多いとされています。ザ・マッカラン蒸溜所は1824年、この地で2番目にスコットランド政府の公認を得た、名門中の名門。その歴史に裏づけられた完成度の高さから「シングルモルトのロールスロイス」とも呼ばれています。
販売元:サントリー株式会社
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潮の香りのシングルモルト「タリスカー」
MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト
「タリスカー」は、スコットランド北西部に浮かぶ「アイランズ」と呼ばれる島々のひとつ、スカイ島を代表するシングルモルト。夏は霧に覆われ、冬は荒波が叩きつける、そんな生まれ故郷を体現するかのような荒々しさが「タリスカー」の持ち味です。
「舌の上で爆発するような海潮の香り」と評されるスパイシーな風味は、カクテルよりもロックやストレート向き。海潮と黒胡椒の風味が食事によく合うハイボールもオススメです。
販売元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社
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日本を代表するシングルモルト「山崎」
サントリー株式会社サイト
日本にウイスキー文化を根づかせたサントリーが、1923年に「名水の里」として知られる京都府の南西部、山崎の地に、日本初のモルトウイスキー蒸溜所として建設したのが山崎蒸溜所です。
「角瓶」「オールド」などサントリーのブレンデッドウイスキーにモルト原酒を供給してきた山崎蒸溜所が、1984年に初めて生み出したシングルモルトが「山崎」。飲みやすさのなかに、深みと華やかさを兼ね備えた味わいは、「ジャパニーズウイスキーの真骨頂」として、日本はもちろん、世界のウイスキー愛好家から高い評価を得ています。
販売元:サントリー株式会社
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アメリカの新生シングルモルト「ウエストランド ギャリアナ」
レミー コアントロー ジャパン株式会社サイト
「ウエストランド」は、ワシントン州シアトルのウエストランド蒸溜所のシングルモルトウイスキー。「ギャリアナ2019」は、ウエストランドシリーズではじめて、シェリー樽で熟成させたウイスキーで、コンテストでも高く評価されている銘柄のひとつです。
樽材は、地元に原生する希少なギャリーオーク。シェリーとの調和から生まれた、濃縮されたフルーツの甘味を存分にたのしめる銘柄です。
販売元:レミー コアントロー ジャパン株式会社
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アイリッシュシングルモルト「ブッシュミルズ シングルモルト」
アサヒビール株式会社
1608年創業、世界最古とも言われる「ブッシュミルズ蒸溜所」で生まれる、「ブッシュミルズ」のシングルモルトウイスキーは、伝統的な3回蒸溜で造られています。10年、12年、16年、21年がラインナップされていて、それぞれで個性的な味わいをたのしめます。
「ブッシュミルズ12年」は、オロロソシェリー樽とバーボン樽で熟成したのち、マルサラワイン樽でさらに熟成させて仕上げた逸品。 スパイシーさを持つ心地よい甘さと、濃厚でリッチな味わい、複雑な余韻をたのしめます。
販売元:アサヒビール株式会社
公式サイトはこちら
シングルモルトウイスキーは、蒸溜所の個性をたのしめる奥深いウイスキーです。さまざまな国のシングルモルトウイスキーを飲み比べて、味わいの違いを感じてみてはいかがでしょう。