【滋賀の日本酒】「七本鎗」の魅力とは?冨田酒造の歴史と酒造りに迫る!

【滋賀の日本酒】「七本鎗」の魅力とは?冨田酒造の歴史と酒造りに迫る!
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滋賀の日本酒「七本鎗」を飲んだことはありますか?創業470年の歴史を持つ冨田酒造が醸す、戦国時代のエピソードに由来する“勝利の酒”です。今回は、地元米へのこだわりが生んだ、世界が認める日本酒の魅力をご紹介します。

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「七本鎗」は戦国以来の歴史を持つ湖北の老舗蔵の代表銘柄

「七本槍」は戦国以来の歴史を持つ湖北の老舗蔵の代表銘柄

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滋賀の地酒「七本鎗」を醸す小さな老舗、冨田酒造

「七本鎗」を造るのは、滋賀県長浜市、賤ヶ岳(しずがたけ)山麓の北国街道沿いにある宿場町、木之本宿に蔵を構える冨田酒造。
小規模な蔵ながら、戦国時代まっただなかの天文3年(1534年)の創業以来、500年近くにわたる歴史を重ねてきた老舗蔵です。
代々受け継がれてきた厳寒仕込みにこだわり、江戸期に建てられた酒蔵で、今も昔ながらの手造りを守り続けています。

「七本鎗」という銘柄の由来は戦国時代の勇将から

「七本鎗」という銘柄の由来は、老舗の蔵元にふさわしく歴史ロマンあふれるものです。
本能寺の変の翌年にあたる天正11年(1583年)、織田信長の跡目をめぐり羽柴秀吉と柴田勝家が戦った「賤ヶ岳の戦い」がぼっ発。この戦で活躍した七人の若武者が、秀吉を天下人へと導いた「賤ヶ岳の七本鎗」と称えられ、今に語り継がれています。
そんな由来を持つ「七本鎗」は、“縁起の良い酒”、“勝利の酒”として人気を集め、贈答品としても喜ばれています。

「七本鎗」をめぐる、歴史ある蔵元ならではのエピソード

「七本鎗」の蔵元、冨田酒造には、このほかにも歴史ある老舗ならではのエピソードが豊富です。
たとえば、大正初期には食通として知られる芸術家、北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)がこの蔵に逗留し、その手で彫った貴重な扁額を残しています。

「七本鎗」の原料米は、地元篤農家とのタッグで育つ

「七本槍」の原料米は、地元篤農家とのタッグで育つ

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「七本鎗」は地元米へのこだわりが活きた日本酒

「七本鎗」の大きな特徴が、地元素材へのこだわりです。地元・滋賀県産の水と米を用いてこそ、真の意味での地酒が造れると考えているからです。
原料米は、近年、栽培を復活された滋賀県発祥の「渡船(わたりぶね)」をはじめ、「山田錦(やまだにしき)」「玉栄(たまさかえ)」「吟吹雪(ぎんふぶき)」などの酒造好適米を、地元農家との契約栽培により調達。2010年からは完全無農薬米による酒造りにも挑戦しています。
5軒ある契約農家のひとつに長浜農業高校があり、高校生が育てた米から純米酒「七本鎗 長農高育ち」が造られるなど、まさに地域ぐるみの地酒造りを実践しています。

米の旨味をしっかりと引き出した低精白の純米酒

酒造りの際に、雑味を取り除くために米の外側を磨くことを「精白(せいはく)」と言い、その度合いを精米歩合(磨いて残った比率)で表します。
一般には、精米歩合が低いほど(=数字が少なくなる、高精白)クリアな味わいになるとされていて、「大吟醸」だと精米歩合は40%(60%を削り取る)など、「七本鎗」の定番となる純米酒も60%程度です。
冨田酒造では、丹精込めて育てた米を大切にしたいとの想いから、あえて低精白米での酒造りにも挑戦。80%精米(20%しか削らない)による米のどっしりとした旨味を活かした純米酒を提案しています。

「七本鎗」は酒造りの文化を世界に発信する酒

「七本槍」は酒造りの文化を世界に発信する酒

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「七本鎗」を通じて日本の酒造り文化を発信したい

冨田酒造の現当主、15代目にあたる冨田泰伸氏は、蔵を継ぐ前に欧米のワイナリーや蒸溜所を巡り、酒造りが地域を象徴する文化であることを改めて実感したと言います。
歴史ある蔵元の後継者として、日本酒造りの伝統と文化を広く発信したいという想いから、酒器やデザート、Tシャツやストラップなどのグッズも積極的に開発。若い世代にも日本酒の魅力を伝えるとともに、2005年からは海外にも「七本鎗」を輸出しています。

滋賀の地酒「七本鎗」が世界的な評価を獲得

「七本鎗」は滋賀の地で育まれた滋賀の地酒ですが、そのおいしさに国境はありません。2018年には、フランス・パリで開かれた日本酒の品評会「Kura Masuter」において「七本鎗 純米渡船」が100本以上の銘柄のなかから第2位の「審査員賞」に輝きました。
フランス人ソムリエや有名レストランの関係者らが審査員を務める品評会で高い評価を得たことで、「七本鎗」が洋の東西を問わず愛される日本酒であることを証明したと言えるでしょう。

滋賀が世界に誇る地酒「七本鎗」は、長い歴史と豊かな自然に育まれた銘柄です。おだやかな香りとキレのある飲み口は、食中酒にピッタリ。ぜひ一度は味わっていただきたい1本です。

製造元:冨田酒造有限会社
公式サイトはこちら

監修者

工藤貴祥

工藤貴祥

(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ・エクセレンス、同SAKE DIPLOMA、きき酒師、焼酎きき酒師、日本ビール検定2級。29年以上お酒業界にいて、特に日本酒愛、ワイン愛、ビール愛が止まらない。もちろんこれ以外のお酒も(笑)。料理やアウトドア、古典酒場巡りが趣味。

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