神奈川県『横浜スタジアム』/プロ野球観戦を盛り上げる、球団オリジナルのクラフトビール
野球観戦といえば、贔屓のチームをリアルに応援できるのが醍醐味。でもそれほど野球に興味がなくても、球場で飲むビールに惹かれて出かける人も多いはず。どこの球場でもたくさんの種類のビールが売られていますが、注目は横浜スタジアム。本拠地とする横浜DeNAベイスターズのオリジナル醸造ビールがあるのです。
- 更新日:
2015年、球団オリジナル醸造ビールを開発
お話を伺ったのは、横浜DeNAベイスターズ事業本部飲食部の山岸さん。
“I☆YOKOHAMA”というキャッチフレーズのもと“横浜スポーツタウン構想”を掲げ、野球やスポーツを通じて、地域密着の街づくりに貢献してきた横浜DeNAベイスターズ(以下ベイスターズ)。女性や子どもを意識したイベントをはじめ多彩な試みでも人々を魅了し、2019年は主催試合32試合目にして、初の観客動員100万人超え(昨年より4試合早い)を達成。試合当日の横浜の街は、青いユニフォームをまとった老若男女であふれています。
さまざまな試みの先駆けとなったひとつがビール。そう球団オリジナルのビールを造ってしまったのです。地元密着を常に意識しているベイスターズ、いかにもビール発祥の地(※諸説あり)らしいチャレンジですが、どのようにしてビールの醸造販売を手がけることになったのか? その味わいや魅力と合わせて、飲食部の山岸信(やまぎし・まこと)さんにお聞きしました。
「きっかけは2015年の8月25日から30日にわたって開催した『YOKOHAMA BAY BEER FESTIVAL 2015』というサマーイベントです」。通常この時期、横浜公園のスタジアム外周のレフト側芝生エリアで『ハマスタBAYビアガーデン』と銘打ち、大型スクリーンで野球観戦しながら、ビールと食事をたのしめるビアガーデンが開かれているのですが、この6日間限定で神奈川県内のビール醸造所が出店、クラフトビールを提供するイベントを行ったのです。
「そこで球団として初めてオリジナルビールを出そうと考えて、スタジアムの近くに醸造所を持つ横浜ベイブルーイングさんと共同で開発しました。完成した『BAYSTARS ALE(ベイスターズ・エール)』をフェスで販売したところ、大変好評だったので、翌2016年シーズンからスタジアムで扱うことになったのです」。
初のオリジナルビール『BAYSTARS ALE』(左)と続いて開発された『BAYSTARS LAGER』。©YDB
「こうした流れで2016年シーズン当初から、『BAYSTARS ALE』のスタジアム販売が始まりました。ただ、もちろん『BAYSTARS ALE』は自信を持っておすすめできる味わいなのですが、コクを強く感じるタイプ。一杯目にはもう少し喉越しが良くゴクゴク飲めるタイプがあればといいなという意見が出てきました」と山岸さん。
そこで開発されたのが、『BAYSTARS LAGER(ベイスターズ・ラガー)』。スッキリとした味わいで乾杯に適したこのビールは、シーズン途中から登場。ゲストは2種類のクラフトビールをスタンドでたのしめるようになったのです。
現在スタジアムで飲めるのは、3アイテム
2019年シーズン限定の『BAYSTARS VOYAGE』。©YDB
さらに2019年シーズン、ビール好きにたのしみが増えました。「今年は球団創設70年というメモリアルイヤー。こちらを記念した特別企画“70th ANNIVERSARY PROJECT”の一環として、今シーズン限定の『BAYSTARS VOYAGE(ベイスターズ・ヴォヤージュ)』を新たに発売いたしました」。
そう2019年は3種のオリジナルクラフトビールがスタンドで飲めるチャンス。では、3アイテムそれぞれの特徴をみていきましょう。
王道をいく味わいの『BAYSTARS LAGER』
700円。©YDB
乾杯シーンで飲んでもらいたい心地よい飲みごたえを目指したラガービール。日本のナショナルブランドのデフォルトのビールが採用しているのと同じ下面発酵で醸され、雑味を抑え麦汁とホップが強調された、スッキリとした味わい。プレイボール時の勝利を願う乾杯シーンにふさわしい一杯です。
ちなみに製造しているのは、1823年茨城県で創業した『木内酒造』。180年以上も携わってきた日本酒造りをビールにも活かした『常陸野ネストビール』で知られています。独特のフクロウのラベルを目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
フルーティな『BAYSTARS ALE』
700円。©YDB
『YOKOHAMA BAY BEER FESTIVAL 2015』を機に誕生した、球団初のオリジナルビール。ビールの本場であるチェコにおいて、最大とされる審査会で高い評価を受けた『横浜ベイブルーイング』による製造です。こちらは伝統的な上面発酵製法を用いたエールビール。特徴であるフルーティさを活かした香り豊かなビールですが、アルコール度数を抑えたことで、女性など比較的ビールが苦手な方でも親しみやすい味わいに仕上がっています。
興味深かったのは、誕生にまつわるエピソード。とことんベイスターズオリジナルを目指すため、当時の選手やコーチなどチーム関係者にビールに関するアンケートを実施。色、アルコール度数、ホップの香りや苦味などをリサーチして、味わい造りに反映したとか。もしかしたら、今でもファンに人気のある中畑清前監督の好みが入っているかも知れません。
柚子フレーバーの『BAYSTARS VOYAGE』
800円。©YDB
VOYAGE(ヴォヤージュ)とは「航海」の意味。どうして球団創設70年記念のビールにそのような名前を付けたのでしょう? その答えはその創設の地にあるようです。1949年に大洋漁業(現マルハニチロ)を山口県下関市に設立し、セントラル・リーグを結成。その翌年に名称を大洋ホエールズとしています。「下関から横浜まで辿り着くのに要した70年を航海になぞらえたことから、このネーミングになりました」。漁業の拠点・下関と港町・横浜ということを考えても、ぴったりの名前ですね。
原材料の麦芽は、山口県産100%。1種類の麦芽だけを使用したシングルモルト製法により麦芽のよさが最大限に引き出され、深いコクとほどよい苦味を実現したエールビールです。あと口にフワッと香るのは、神奈川県産の柚子。生誕の地と現在の地に対するリスペクトが込められたビールなのです。
ビールをたのしむための観戦ポイント
コップが汗をかいている姿はたまりません。©YDB
ここからは、ビールをじっくり味わうために重きを置いた観戦ポイントをいくつか。試合でなく、あくまでビールを飲むというのが目的なので、練習見学のコツとかではありません。
ゲーム開始ぎりぎりに行くと、ビールを買ったり、豊富なおつまみ(詳細は後ほど)を物色する時間がないため、できるだけ余裕を持って入場するのがおすすめ。平日ならだいたい試合開始時間の1時間30分前(土日祝は2時間前)からスタンドに入ることができます。
ゲートでは手荷物のチェックがあり、缶や瓶の飲料などは持ち込み禁止ですが、熱中症予防のための少量のペットボトル飲料は許されています。ビールを飲む際は、同時に水分を摂った方が体によいのは言うまでもありません。スタジアムでも、もちろんお水を購入できますので、適度に摂取しましょう。
一歩スタンドに入ると、目の前に広がる光景に思わず息を呑んでしまいます。雨の心配はあるものの、やはり屋外球場は魅力的。青空の下、夜空の下…開放的な空間は、とても贅沢なビアガーデンのように映ることでしょう。
スタンドの向こうには、横浜の名所も望めます。©YDB
気持ちが高ぶったところで、さあビール! ナショナルブランドと同じく、ベイスターズのビールもスタンドで売り子さんから買えます。ただ売り子さんがスタンドにいるのは、試合開始直前からと試合の終盤ぐらいまで。それ以外の時間なら、コンコースにある売店などで求めましょう。
『CRAFT BAY BAR(クラフトベイバー)』はじめ、数多くのショップで売っています。©YDB
いざプレイボールという時、次の山岸さんからのメッセージを思い出してください。
「野球は“間”のあるスポーツ。投手がボールを投げる間、攻守交代となるイニングの間など、私たちは試合が動いていない時間も含めて野球観戦をたのしんでいただきたいと考えています。ベイスターズが手がけたオリジナル醸造ビールもそのひとつ。丹精込めて造りあげた3種類のビールを、気持ちのよい浜風を感じながら味わってみてください」。
ちなみに3種のビールを制覇するなら、『BAYSTARS LAGER』→『BAYSTARS ALE』→『BAYSTARS VOYAGE』の順がおすすめだとか。
最後に、ビールに夢中になり過ぎて、ボールから目を離さないように。ファールボールにはくれぐれも注意しましょう。
応援がヒートアップしてくると、自ずとビールも進みます。©YDB
もちろん勝てばよし。もし負けても、「お疲れ様~」と声をかけ合うスタンドの雰囲気は最高です。©YDB
ビールがグイグイ進む、オリジナルフード
ビールだけではなく、おつまみも球団オリジナルを。©YDB
ビールだけ飲んでいては、酔いも回るしお腹も減ります。じつはベイスターズ、力を入れているのはビールだけではありません。スタジアムで販売しているフードも、球団が独自に開発したものばかり。とくにビールにおすすめと思われるフードをチョイスして紹介しましょう。
チーズが薫る『ベイカラ』
550円。©YDB
ビールのお供の定番といえば、鳥のから揚げ。西麻布の名店・日本料理『La BOMBANCE』(ラ・ボンバンス)の料理長・岡元信氏によって、『ベイカラ』が誕生しました。二度揚げることで、外はカリッと、中身はジューシーに。仕上げにパルミジャーノチーズを絡めるという新感覚のから揚げです。
ジューシーな『ベイメンチ』
300円。©YDB
横浜・野毛の老舗洋食店『センターグリル』監修、“肉”“ソース”“揚げたてサクサク”が特徴的なメンチカツ。肉は地元神奈川のブランド『やまゆりポーク』と『やまゆりビーフ』のミンチをブレンド、和風だしや醤油を使用した薄口のソースも開発したそうです。ソースにくぐらせてから渡されるので、そのまま片手でいただけます。
しっかり味の『ベイ餃子』
550円(4個入り)。©YDB
“球団オリジナル醸造ビールに合うフード”を追求し、満を持して登場したという焼き餃子です。ベイスターズと共同開発したのは、明治27年外国人居留地(現横浜中華街)で創業し、今なお横浜の味として親しまれている老舗『江戸清』。具材にしっかり味が付いているので、タレ要らず。そのままで美味しく食べられます。
旨辛さが際立つ『BAYSTARS DOG』
700円。©YDB
ベイスターズの名を冠したホットドッグの粗挽きソーセージは、世界的名声を得ている神奈川県の『厚木ハム』が、自社農場で育てた豚肉だけを使用したというオリジナル。さらに、大きな特徴としてハラペーニョ(青唐辛子)の輪切りをふんだんに載っていること。SNS映えする見た目のインパクトとともに、口に広がる旨辛さが魅力で、まさに“HOT”なホットドッグです。
※金額などはすべて取材時のものです(税込)。
テレビで野球観戦しながら冷えたビールもよいですが、風や光を感じる屋外で飲むビールは特別な味わい。打球音と歓声と溜息をBGMに、ほろ苦いビールをグイッとやる幸せを求めて、横浜スタジアムに出かけてみませんか?
横浜スタジアム
神奈川県横浜市中区横浜公園
TEL/045-661-1251
アクセス/ JR根岸線「関内駅」南口より徒歩2分
同「石川町駅」北口より徒歩5分
横浜市営地下鉄「関内駅」1番出入口より徒歩3分
みなとみらい線「日本大通り駅」2番出入口より徒歩3分