滋賀の日本酒【不老泉(ふろうせん)】昔ながらの製法で造る旨口の酒
「不老泉」は、江戸時代末期に創業した老舗蔵、上原酒造の代表銘柄。「山廃仕込み」や「木槽天秤しぼり」といった伝統的な製法を用いて、特別な情熱とこだわりを込めて造られています。ここでは「不老泉」を生み出す蔵元のこだわりや、その魅力を紹介します。
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「不老泉」の由来である井戸水が酒造りの原点
出典:上原酒造サイト
「不老泉」の酒銘は蔵元にある自噴井戸の言い伝えに由来
「不老泉」の蔵元は、琵琶湖西岸の新旭町(しんあさひちょう)にある上原酒造です。江戸時代末期の文久2年(1862年)に創業した蔵元で、昔ながらの手法を用いたこだわりの酒造りで知られています。
代表銘柄である「不老泉」の名前は、敷地内の自噴井戸にまつわる言い伝えに由来しています。かつて初代当主が井戸を発見した際、なかからお地蔵さんが出てきたのだとか。「不老の泉」と名づけられたこの井戸の湧き水を仕込みに用いた日本酒だから「不老泉」というわけです。
「不老泉」の仕込み水は日本酒造りに適した名水
「関西アルプス」とも呼ばれる比良(ひら)山系の麓に位置する新旭町は、古くから湧き水が豊富な地域として知られています。この地では、自噴する水を「生水(しょうず)」、水路やその水を利用するための仕組みを「川端(かばた)」と呼び、日常生活に欠かせないものとして活用してきました。
上原酒造のお店の前にも湧き水を引いた水場があり、訪れる人々がたのしむことができます。この湧き水は「平成の名水100選」のひとつにも数えられ、ミネラルの少ない軟水で、「不老泉」のようななめらかな日本酒造りに適した水質となっています。
「不老泉」の蔵元がこだわる「山廃仕込み」と「木槽天秤しぼり」
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「不老泉」蔵元のこだわりは「無添加山廃仕込み」
上原酒造の最大の特徴は、伝統的な製法である「山廃仕込み」を、それも無添加にこだわって続けていること。
「山廃仕込み」とは、天然の微生物の働きを活かした「生酛(きもと)造り」から派生した、昔ながらの日本酒の製法です。「不老泉」をはじめとした上原酒造の日本酒は、もともと蔵に住みついている「蔵付天然酵母」を用いて、通常の2~3倍もの時間と手間をかけて造られます。温度管理に細心の注意を要するなど、高度な技術とノウハウも求められる製法ですが、これにより濃厚で芳醇な日本酒が造り出されるのです。
「山廃仕込み」ってどんな日本酒なの?
「不老泉」のもうひとつの特徴は全国でも珍しい「木槽天秤しぼり」
お酒のもとである「醪(もろみ)」からお酒を搾り出す作業にあたって、全国でも数少ない「木槽(きぶね)天秤しぼり」を用いているのも大きな特徴です。
「木槽」と呼ばれる木製の容器内に醪の入った袋を詰め、石の重みで加圧してお酒を搾り出します。機械を使用すれば1日で終わる作業にも関わらず、この製法だと3日かかります。また、機械のように最後まで搾り切ることができませんが、それゆえ、雑味が袋のなかの酒粕に残り、クリアな味わいのお酒を抽出できるのです。
「不老泉」は少量生産ながらバラエティ豊か
出典:上原酒造サイト
「不老泉」は味わいの異なる充実したラインナップも魅力
上原酒造は年間の醸造量が400~500石という小規模な蔵ですが、「不老泉」のラインナップは驚くほど多彩です。火入れやろ過の有無といった製法の違いに加え、「山田錦」「玉栄」「雄町」「渡船」「亀ノ尾」など多様な酒造好適米を使い分け、幅広い味わいを実現しています。
なお、上原酒造では年に1度、一般のお客様が商品を対象とした「呑み切り」イベントが開催され、例年50種類もの「不老泉」を飲み比べることができ、人気を集めています。
「不老泉」を代表する看板商品たち
数ある「不老泉」のラインナップのなかでも看板商品と言えるのが「山廃仕込 特別純米 原酒 参年熟成(赤ラベル)」です。3年かけて熟成させ、ろ過せずにそのまま瓶詰めされたもので、濃醇な味わいと鋭い切れ味が特徴です。
また、「杣の天狗(そまのてんぐ) 純米吟醸 うすにごり 生原酒」も人気の高い1本です。滋賀県産「山田錦」を100%使用したうすにごりの純米酒で、フレッシュさと心地よい旨味が魅力となっています。
日本酒造りに適した名水を活かした「不老泉」は、手間と時間をかけた製法で造られるなど、数々のこだわりが込められています。労を惜しまない昔ながらの製法だからこそ実現できる味わいを、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
製造元:上原酒造株式会社
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