「隆(りゅう)」全国にわずかしか出荷されない限定品【神奈川の日本酒】
「隆」は、神奈川県足柄の蔵元、川西屋酒造店の日本酒です。この蔵元は「丹沢山」などの銘柄で知られていますが、「隆」はタンク1本に仕込んだ酒を、調整なしで出荷する限定酒。原料米の個性と、酒造年や仕込みタンクごとに変化するお酒「隆」の魅力を紹介します。
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「隆」は「丹沢山」と同じ蔵元で醸される最上級の限定品
出典:川西屋酒造店facebook
「隆」を造っているのは、神奈川県に13ある日本酒の蔵元のひとつ、川西屋酒造店です。明治30年(1897年)に創業した歴史ある蔵元で、名水と名高い丹沢山系の水と、地元の足柄地区産の酒造好適米「若水(わかみず)」を使った、「丹沢山(たんざわさん)」という銘柄で名を馳せています。
「隆」も丹沢山系の水を使っている点は「丹沢山」と同様ですが、原料米はあえて品種を固定せず、各名産地の契約田から届く良質な米を使用します。そして、タンク1本に仕込んだ酒を、調整せずに瓶詰めして出荷するのが特徴。「隆」のラベルには、使用した酒米とその収穫年が記されています。
安定した酒質で人気の「丹沢山」と違い、米の品種や収穫年ごとに味わいが異なるのが「隆」の個性です。また、出荷数が極めて少ない希少な日本酒としても知られ、販売する特約店も数十店のみとなっています。
「隆」は良質の原料米でていねいに仕込む酒
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「隆」が原料米に使うのは、川西屋酒造店が契約する日本各地の最高級の酒造好適米です。たとえば、信州長野の「美山錦」や、宮城県産「亀の尾」などの希少米。そして、最高級の酒米である「山田錦」は、阿波徳島産と播州兵庫産を仕入れています。
ただし、使う米の品種はタンクごとに異なり、1本のタンクは同一品種・同一産地の米を全量使用するというのが「隆」のこだわり。精米歩合もそれぞれで変わります。
つまり「隆」は、品種ごと、めざす酒質に適した精米歩合で磨いた米を、中硬水で仕込み、緻密な発酵管理のもとで醸されるお酒。川西屋酒造店の伝統と技術、酒造りの挑戦が凝縮された銘柄といえるでしょう。
「隆」の魅力は熟成期間ごとに異なる味わい
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「隆」が飲むたびに異なる個性を見せるのは、米の品種や収穫年の違いだけが理由ではありません。熟成期間で変わる味わいも、「隆」の持ち味になっています。
一般的に日本酒は、貯蔵・熟成した後に、「火入れ」と呼ばれる加熱処理や、水や醸造アルコールを加えるといった調整を施し、瓶詰めされます。しかし、「隆」はこの調整をいっさい行いません。何も加えることなく瓶詰めし、手間のかかる「瓶燗火入れ」による加熱処理のみを行って出荷します。
そのため「隆」は、瓶詰め後も、瓶のなかでじっくりと熟成されていき、原料米による違いに熟成期間による変化が加わり、同じラベルの「隆」であっても、1年、2年と時間を経るうちに、異なる味わいになります。「隆」はそうした1本1本異なる個性を、何よりも大切にしている日本酒なのです。
「隆」は限定生産ゆえに、入手が難しい銘柄ですが、もし「隆」に巡り会うことができたら、ぜひ裏のラベルを見て、酒造年をチェックしてみてください。そして、米と熟成による酒質の違いを味わうために、まずは冷酒で飲んでみることをおすすめします。
製造元:合資会社川西屋酒造店
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