長崎の焼酎【かぴたん】南蛮渡来の技法で造られた風味豊かな秘酒
「かぴたん」は元禄元年(1688年)に平戸藩主から清酒福鶴の製造許可を受けた由緒ある酒蔵が、南蛮伝来の製法を受け継いで造り上げた個性あふれる麦焼酎です。その最大の特徴である深いコクと香ばしさの秘密に迫ります。
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「かぴたん」は樫樽貯蔵の麦焼酎
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「かぴたん」の製造元は、天文19年(1550年)にポルトガル船が初めて来航して以来、南蛮貿易の拠点として栄えた長崎の平戸で、元禄元年(1688年)以来の歴史をもつ老舗、福田酒造です。
福田酒造では、「福鶴」「長崎美人」などの日本酒と、米焼酎「旭 西海」、じゃがいも焼酎「じゃがたらお春」、さらには薬味酒やあま酒などを幅広く造っています。「かぴたん」は麦焼酎の主力銘柄で、ヨーロッパ伝来の製法をもとに、樹林の原生林の湧き水で仕込んでいます。
「かぴたん」が秘酒と呼ばれる理由は、独特の風味とまろやかな舌触りを生み出す、この蔵ならではの製法にあります。詳細は企業秘密とされていますが、昔ながらの常圧蒸溜で麦の風味を引き出した後、樫樽のなかで5年以上の歳月を掛けてじっくりと熟成。さらに、まろやかな旨味と麦本来のコクを封じ込めるべく、独自のろ過を施したうえで、ビン詰めされるのだとか。
こうして生まれる「かぴたん」の円熟した琥珀色の雫は、グラスに注ぐと深い香りをもたらし、口に含めば樫樽特有のスパイシーな香りがここちよく広がります。ウイスキーのようにロックや水割りで飲むのがおすすめですが、お湯割りでもおいしくいただけるので、いろいろ試してお気に入りの飲み方を探してみてください。
「かぴたん」の名に込められた想い
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「かぴたん」という聞き慣れない銘柄名は、もともと英語の「キャプテン(Captain)」を意味するイスパニア語(スペイン語)です。
江戸時代の儒学者・小瀬甫庵によって書かれた豊臣秀吉の一代記「甫庵太閤記」には、「宣教師カピタン・ザビエルらはキリスト教を布教するため、ぶどう酒や焼酎をもてなし、医療や教育を通じて民衆の心をつかんだ」とあり、一説には、これが日本の焼酎の起源ともいわれています。ここに登場する「カピタン」という単語が、銘柄の由来となっています。
「カピタン=キャプテン」は、日本語では船長や機長のほかに、集団の統率者やリーダーを意味します。「かぴたん」の蔵元、福田酒造は、南蛮伝来の秘技をもとに、研究を重ねてたどり着いたこだわりの製法で生み出した自慢の麦焼酎に、「本格焼酎の先導役になってほしい」という願いを込めて「かぴたん」と命名しました。
昭和32年(1957年)に発売された「かぴたん」は、その名のとおり、まろやかで飲みやすい麦焼酎の先駆けとして、昭和50年代の麦焼酎人気や、その後の本格焼酎ブームを牽引する銘柄となったのです。
「かぴたん」の独特な味わいをたのしむならこの1本
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「かぴたん」は現在、大麦100%の焼酎を樫樽で5年間貯蔵・熟成させた「35°かぴたん 5年」と、10年貯蔵・熟成させた「かぴたん 10年」の2種類で展開しています。
どちらも味わい深い焼酎ですが、焼酎好きにおすすめしたいのは、やはり「35°かぴたん 10年」。より深いコクと香ばしさがたのしめる最上級の1本です。
出荷されるまでに10年以上の歳月を要するため、当然ながら、生産数は限られています。一つひとつにシリアルナンバーがついているので、特別な日の祝い酒や、大切な人への贈り物にも最適です。
長期熟成酒ならではのまろやかさと、南蛮伝来の秘技が醸し出す、何ともいえない独特の味わいを、ぜひ一度堪能してみてください。
「かぴたん」は、創業300余年の老舗蔵だけが知り得た南蛮伝来の秘技で醸された至高の焼酎。その琥珀色の雫が織りなす、円熟した香味に酔いしれながら、西洋文明の息吹に触れてきた平戸の歴史に想いをめぐらせてみてはいかがでしょう。
製造元:福田酒造株式会社
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