静岡の日本酒【磯自慢(いそじまん)】原料や品質にこだわり抜いたお酒
「磯自慢」は静岡県焼津市に蔵を構える老舗、磯自慢酒造の醸す酒です。今や静岡はもちろん、日本を代表する銘柄ともいわれる「磯自慢」ですが、その背景には、苦難の時期を乗り越えた蔵元の努力がありました。磯自慢の歴史とその魅力に迫ります。
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目次
- 「磯自慢」を造るのは伝統と革新の蔵元
- 「磯自慢」はこだわりの原料を独自設備で醸すお酒
- 「磯自慢」の魅力はフルーティな風味
「磯自慢」を造るのは伝統と革新の蔵元
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「磯自慢」を醸すのは、静岡県焼津市の鰯ケ島(いわしがしま)に蔵を構える老舗、磯自慢酒造です。その創業は、江戸時代後期の天保元年(1830年)。この地の庄屋であった創業者が、農業経営を営むかたわら、年貢米の余りを使って酒造りを始めたと伝えられています。
明治から大正、昭和にかけて、大地主として農業を営みつつ、冬場の農閑期には酒造を営むという形で、蔵の名を冠した「磯自慢」を造り続けてきました。
酒造りを専業とするようになったのは、第二次大戦後の農地解放を受けてのこと。その後、周辺の小規模な蔵元が整理・統合されるにともない、焼津で唯一の蔵元として、この地の酒造りを担うことになります。
その後、戦後の経済成長にあと押しされる形で、各地の蔵元は売り上げを伸ばしましたが、昭和末期になると日本酒の人気は低迷。磯自慢酒造もまた、この状況に危機感を覚えていたといいます。そこで行きついたのが、「生き残るためには本当に高品質な日本酒を造るしかない」という考えでした。
業界に先駆け、「吟醸酒」「純米酒」など特定名称酒だけの製造に切り替えたことで、「磯自慢」は全国の日本酒好きから人気を集め、近年の日本酒ブームを牽引する存在に。その酒造りの姿勢を見た周辺の蔵元が切磋琢磨することで、静岡の酒造りのレベルを引き上げ、いつしか「吟醸王国・静岡」と呼ばれるようになったのです。
「磯自慢」はこだわりの原料を独自設備で醸すお酒
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「磯自慢」は、その名のとおり、海に面した焼津の地で育まれた“海の酒”。古くからの漁港として知られた地にふさわしい、さっぱりとした辛口の酒として、海の男たちから人気を集めてきました。
また、海の幸との相性がよく、食中酒としても親しまれてきました。
近年、特定名称酒だけの製造に切り替わってからも、こうした「磯自慢」本来の魅力を受け継ぎつつ、原料や製法にこだわり抜くことで、さらなる高みを追求しています。
たとえば、「磯自慢」に用いられる酒米は、兵庫県加東市で生産される酒造好適米「山田錦」のみ。加東市は全国でも数少ない「特A地区」にあたり、最高ランクの酒米が獲れる地として名を馳せています。
2010年からは、加東市のなかでも3つのエリアから収穫される山田錦だけを用いることを決めました。これほど厳格な生産地指定は、日本酒業界でも類を見ません。
また、古きよき時代の面影を残す蔵の内部は、一面ステンレス張りになっています。これが冷蔵庫のような働きをするため、酒造りの最中に雑菌が入り込むことを防止。蔵内を常に清潔に保つことを可能にしました。
さらにもろみを入れるタンクには、ガラスをコーティング。県内でも珍しい急速加熱、急速冷却機能を備えた火入れ装置を導入するなど、安定した日本酒造りのためなら徹底した設備投資もいとわない姿勢が、「磯自慢」の味わいを支えているのです。
「磯自慢」の魅力はフルーティな風味
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「磯自慢」はときに、静岡型吟醸の代表とも称されます。静岡型吟醸とは、同県が開発したオリジナル酵母「静岡酵母」によって醸される日本酒のこと。やさしい果実香をもち、飲み飽きないきれいな風味が特徴です。なかでも「磯自慢」は、全国新酒鑑評会でもたびたび金賞を獲得するなど、静岡酵母の特性を引き出した酒として全国から高い評価を得ています。
こうした「磯自慢」の確かな品質は、グレードを問わず、あらゆる商品に共通しています。
たとえば「磯自慢 吟醸」は、澄んだ甘味とフレッシュな酸味のバランスが心地よい1本。それでいて料理の味をふんわりと包み込むような奥深さも備えています。
また、「磯自慢 純米吟醸」は、特A地区の山田錦を50%まで精白した、こだわりの酒です。白桃やメロン、洋ナシを思わせる香りがさわやかに吹き抜け、あと味は白雪のようにすっきりとしています。
安定した品質を備える一方、商品ごとに確かな個性を発揮する「磯自慢」。その魅力を知るためにも、各商品を飲みくらべることをおすすめします。
「磯自慢」は原料収穫から仕込み、流通段階に至るまで、徹底的に品質管理がなされているこだわりの日本酒です。老舗酒造がたどり着いた「本当においしい酒」を、ぜひ一度味わってみてください。
製造元:磯自慢酒造株式会社
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