アードベッグの魅力と、アードベッグを生んだアイラモルトの魅力を語ろう

「アードベッグ」は、スモーキーさが魅力とされるアイラモルトのなかでも、ひときわスモーキーな存在として知られています。強烈なスモーキーさと繊細な甘さが調和した独特の味わいをもつアードベッグについて、詳しく紹介していきましょう。
- 更新日:
アードベッグを生んだ「スコッチの聖地」、アイラ島とは?

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト
「アードベッグ」はスコッチウイスキーの6大生産地のひとつ、アイラ島で造られるモルトウイスキー「アイラモルト」の代表的な銘柄です。
「ウイスキーの代名詞」ともいわれるスコッチウイスキーを生んだスコットランドは、地域ごとに自然環境が大きく異なります。このため、「ハイランド」「ローランド」「スペイサイド」「キャンベルタウン」「アイランズ」、そして「アイラ」といった生産地ごとに、それぞれ異なる個性をもったウイスキーが造られています。
アイラ島は、オークニー諸島やスカイ島などと同様、スコットランド北西の海上にある多くの島々のひとつ。スコッチウイスキーの生産地としては、これらの島々をまとめて「アイランズ」と分類されていますが、最南端にあるアイラ島だけは、「アイラ」として独立した分類とされています。
アイラ島は、面積は日本の淡路島程度で、人口は3,500人にも満たないほどの小さな島。にもかかわらず、他の島々と一括りにされることなく、産地のひとつとして分類されています。このことからも、いかにその個性が強烈なものかが想像できるでしょう。
アードベッグをはじめとしたアイラモルトの最大の特徴は、強烈なスモーキーさにあります。ウイスキーのスモーキーなフレーバーのもととなるのは、原料となる大麦麦芽を乾燥させる際に一緒に焚きしめるピート(泥炭=植物が腐食した堆積物)です。アイラ島は全島が厚いピートの層に覆われており、古くからピートを豊富に使用することが伝統となっていました。
また、島内にある9つの蒸溜所(※)は、いずれも海沿いに位置しており、熟成中に独特のヨード臭、いわゆる「潮の香り」が風味として加わるのもアイラモルトの特徴です。
こうした独特の味わいが多くのブレンダーに注目され、「有名なブレンデッドウイスキーでアイラウイスキーがブレンドされていない銘柄はない」ともいわれています。このため、アイラ島はスペイサイドと並んで「スコッチの聖地」とまでいわれるほど、スコッチウイスキーでは重要な存在になっているのです。
※2018年末に、9番目の蒸溜所として「アードナッホー蒸溜所」が操業を開始しました。樽詰めから3年以上経たないと出荷できないため、市場に出るのは2022年頃になりそうです。
「スコッチの聖地」アイラ島のウイスキーを飲みつくす!
アードベッグの特徴は、強烈なスモーキーフレーバー

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト
「アードベッグ」は、個性の強いアイラモルトのなかでも、もっともアイラらしさにあふれているといわれています。その「アイラらしさ」の一番の要因といえば、やはりピート由来のスモーキーなフレーバーです。
アードベッグのスモーキーさが、いかに強烈なものかは、スモーキーさの源であるピートの使用量を比較すればわかります。
アイラモルトのなかでもスタンダードな味わいとされる「ボウモア」と比較すると、アードベッグのピート使用量は倍以上。比較的、飲みやすいといわれる「ブナハーブン」や「ブルックラディ」に比べると、何と10倍以上にもなるのだとか。
さらに、アードベッグ同様にアイラらしいといわれる「ラフロイグ」と比較しても、アードベッグの方が多く、まさに「アイラのなかのアイラ」といえる存在です。
だからといって、スモーキーさだけがアードベッグの魅力かというと、そんなことはありません。
アードベッグの仕込み水には、ピートの地層を通ったウーガダール湖の軟水を使用。また、発酵槽にはウイスキーになめらかな質感を与えるオレゴン松を使用しています。
さらに、蒸溜器に設置された精溜器(ピューリファイア)が与える、フルーティでフローラルな甘さが、スモーキーさと融合して複雑な旨味を引き出します。
アードベッグは強烈なスモーキーさと、繊細な甘さという、一見して相反する魅力をあわせ持つことから、「ピーティー・パラドックス(=矛盾)」として高く評価されています。スコッチ愛好者にとっては外せない銘柄といえるでしょう。
アードベッグを育んだ蒸溜所がたどった波乱の歴史

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト
「アードベッグ」の生みの親であるアードベッグ蒸溜所が誕生したのは、今から約200年以上も前の1815年のこと。アイラ島の南部にある、岩に囲まれた小さな岬に立つこの蒸溜所は、その個性豊かなウイスキー造りによって、世界中のウイスキー愛好家に知られる存在となり、「アードベギャン」と呼ばれる熱狂的なファンを生むほどでした。
世界的な名声を得たアードベッグ蒸溜所ですが、その歴史は決して順風満帆といえるものではありませんでした。蒸溜所としての規模は大きくないだけに好不況の波を受けやすく、何度となく経営不振に陥りました。とくに1980年代は、世界的なウイスキー不況によって、多くの蒸溜所が閉鎖に追い込まれており、アードベッグ蒸溜所も閉鎖の危機を迎えました。
存続すら危ぶまれたアードベッグ蒸溜所ですが、1997年、ハイランドモルトの代表格として知られるグレンモーレンジィ社の傘下に入ることで、不死鳥のごとく蘇りました。
こうした復活劇の背景に、アードベッグをこよなく愛するアードベギャンの存在があったことは間違いありません。
世界中のアードベギャンは、二度とこうした危機を迎えないようにと、2000年に「アードベッグ・コミッティー」を結成。いまやその輪は世界130カ国、12万人以上の規模に拡大しています。
国境を越え、世代を超えて愛されるアードベッグ蒸溜所の歴史は、こうした熱狂的なファンに支えられ、これからも続いていくことでしょう。
アードベッグの強烈な香りをたのしむための、おすすめの飲み方
- 1
- 2
