深い絆で結ばれた兄弟が生み出す、地域に愛され続ける酒「白龍酒造」

深い絆で結ばれた兄弟が生み出す、地域に愛され続ける酒「白龍酒造」

長男の白井秀利さんが社長を務め、次男の伸児さんが製造責任者として醸す酒「白龍」は、地元の方たちの晩酌に欠かせない、心安らぐ味わい。先祖の代から地域の方々との交流を大切にし続け、土地の利を生かした酒造りを行う白龍酒造を訪ねてお話しを伺ってきました。

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江戸時代に創業、160余年に渡り造られ続けている米どころの酒

新潟県の北東部に位置する阿賀野市は、白鳥の飛来地として全国的にも有名な「瓢湖(ひょうこ)」があり、自然豊かな、県内でも有数の穀倉地帯。越後平野のほぼ中央に位置する肥沃な大地で、良質な酒米が育まれ、さらに、阿賀野川水系の豊かな水に恵まれている地で、白龍酒造は長きに渡り酒を醸し続けています。

創業は天保10年(1839年)。北前船で賑わう湊町新潟で、北海道と交易する回船問屋から分家し酒造業を開業。江戸時代、幕府の天領(直轄地)であり、維新後は、新潟県の前身である「水原(すいばら)県」として、県庁が置かれた歴史と伝統のある町で「白龍」は親しまれ続けてきました。

2014年に就任した白井秀利社長で六代目。製造部門は専務取締役兼製造部部長の9歳下の弟の伸児さんに一任し、兄弟がニ大柱となって蔵を支えています。

江戸時代に創業、160余年に渡り造られ続けている米どころの酒

かつては江戸幕府の直轄領で、この地域の豊かな生産力を背景にした年貢の収納を確保する目的で代官所が設置されていた水原町。2004年に近隣の町と合併し「阿賀野市」となりました。

山川氏によってさらに完成度が高まった至高の美酒

白龍酒造は、数年前まで、現役最年長杜氏として活躍した山川譲氏が中心となって酒造りを行っていました。山川さんは、発酵や醸造に関する研究で世界的な権威として有名な、故・坂口謹一郎氏と、自宅が近所だった縁で幼少期から交流があり、その影響もあって日本酒の世界へ入りました。

全国新酒鑑評会、関東信越国税局新酒鑑評会で多数金賞を受賞し、新潟県杜氏会会長を歴任、「現代の名工」や「黄綬褒章」、「にいがたの名工」などに選ばれるほどの実力者である山川杜氏を迎え入れたことで、白龍酒造は、さらに研ぎ澄まされた酒質を生み出し、それまでのモンドセレクションでの「金賞」を「最高金賞」にまで引き上げ、6年連続で受賞するなど進化を遂げます。

その山川杜氏が酒造りにおいて、一生涯をかけてこだわり続けていたのが「水」。原料の8割以上を占める「仕込み水」が日本酒に及ぼす影響がいかに大きいかを知り尽くしていただけに、杜氏になった頃から「理想の水」を求め、県内を探し歩いたそうです。

よい水があると聞けば、実際に足を運んで自ら確かめていましたが、同じ「山の水」でも、米山山系と妙高山系とでは水質が違い、また「川の水」もさまざま。理想とする酒の味を生み出すのに相応しい水を探し続けました。川底の下に流れている地下水は、「伏流水」とよばれる自然の濾過作用によって生まれるとてもきれいな水質ですが、山川杜氏は「阿賀野川の伏流水が湧き出した清水」で、「自分の求めていた水」を見つけます。まさに、「白龍」は山川杜氏のお墨付きの水で仕込まれた日本酒なのです。

92歳となった現在は、酒造りこそ引退はしましたが、蔵の顧問であり名誉杜氏として、「呑み切り」や「水神祭」など、大切な行事には必ず出席されています。

現役最年長杜氏として数年前まで酒造りを行っていた山川杜氏

現役最年長杜氏として数年前まで酒造りを行っていた山川杜氏。長年の経験から生まれた熟練の技術は、白龍酒造の酒造りに大切に受け継がれています。

充実した設備によって行われる丁寧な酒造り

現在の白龍酒造は、白井伸児専務が中心となり、20代~60代までの9名で酒造りを行っています。その中には2名の若い女性も含まれていて、蔵では昔から、女性の蔵人も男性と一緒に酒造りに取り組んできたそうです。チームワークがよく、仲間同士で助け合いながら一丸となって酒造りに向き合っています。

製造には、洗米、蒸米、製麹(麹造り)などの行程にも機械を導入することで、人的な労力を極力減らし、蔵人への負担が少ない環境を心がけていて、白井社長は「そうすることで知的分野にそれぞれの能力が発揮される時間が生まれて、よりよい酒を提供することにつながると考えています」と話し、蔵人たちの酒造りへの探究心を温かく見守っています。

麹造りは機械(自動製麹機)での造りと手造りを使い分けています。

麹造りは機械(自動製麹機)での造りと手造りを使い分けています。

発酵中の醪の品温管理を自動でできるサーマルタンクも導入。

発酵中の醪の品温管理を自動でできるサーマルタンクも導入。

地元の農家とともに行った酒造好適米の栽培研究

白龍酒造は、米どころの地の利を生かして、20年以上前に地元阿賀野市の農家とともに「酒米協議会」を設立しました。五百万石を中心に、お米の旨味が感じられる酒造好適米を栽培する研究を重ね、蔵には良質な酒米が安定して供給されています。農家数も増え、年々規模が大きくなり、より高品質な酒米の栽培に力を注いでおり、近年では新潟県で研究開発された酒米「越淡麗」なども手がけています。

契約栽培米を使用した日本酒には、農家の皆さんの集合写真と「阿賀野市の地元農家と契約栽培した酒造好適米」の文字が書かれたPOPをボトルの首に掛けて販売。
「丹念に育ててくれた生産者の顔が見えるお米は安心できますし、長いお付き合いによって私たちも使い慣れてきているので、相性もとてもよいです」。と製造を統括する白井専務は語りました。

農家の皆さんの一人ひとりの顔がわかる写真がPOPに。お酒に込められたそれぞれの想いが伝わってきます。

農家の皆さんの一人ひとりの顔がわかる写真がPOPに。お酒に込められたそれぞれの想いが伝わってきます。

やわらかな飲み口をベースに、さまざまな個性が光るラインナップ

越後平野で育まれた質のよい酒米と、阿賀野川水系の仕込み水で醸す白龍酒造のお酒は、淡麗さとしなやかさをベースに持つ、きれいな飲み口の美酒が揃っています。「新潟酒といえば“淡麗辛口”のイメージを持たれがちですが、うちでは、ただ辛いだけじゃなく、甘さも程よく感じられるお酒を目指しているんです」という白井専務の言葉どおり、やわらかく口中で膨らむ甘さが、程よく余韻に残るのが印象的です。

現在、定番の商品や毎月販売する季節商品などを合わせると、約30アイテムありますが、白龍酒造のお酒は、ベースの淡麗さとしなやかさを残しつつ、それぞれの味わいに個性があるのが大きな特徴。「酵母(製造の過程でブドウ糖をアルコールに変える際に必要な清酒酵母)は、新潟県で開発されたものも含め、数種類のものを使い分けています。ブレンドはせず、一つの酒に一種類ずつ使用しているので、それぞれのお酒が持つ雰囲気に違いが生まれてきます」と白井専務。

そのほか、酒米の品種や精米歩合、発酵の管理などによって、華やかな香りのもの、香りは穏やかでスッキリとしたもの、米の旨味やボリュームを感じられるものなど、さまざまなタイプの日本酒を醸し、幅広い味わいのお酒を揃えているのが白龍酒造の強み。初心者から愛飲家まで、ラインナップの中に必ず自分の好みの1本が見つけられると、地元の方からも長く支持され、親しまれています。

「あまり日本酒に馴染みがなく、今までほとんどお酒を飲んでこなかったという女性が、うちの酒を飲んで、『日本酒はあまり好みじゃないと思っていたけど、味がやさしくておいしい!』といって喜んでくれたという話しを聞いて、とてもうれしかったですね」と、白井社長。
ビギナーでもするすると飲めてしまう、口当たりのよさとやさしい味わいは、チームワークのよい蔵人たちが酒造りを行う、和やかな蔵の雰囲気がそのまま酒質に反映されているようです。

白龍 越後育ち 純米大吟醸

白龍 越後育ち 純米大吟醸

新潟県阿賀野市産 五百万石を使用。口当たりがなめらかで飲みやすく、フルーティーな香りと上品な旨味が口中に広がります。飲みやすいことで人気の純米大吟醸です。
商品の情報はこちら

契約栽培米 五百万石 純米吟醸 白龍

契約栽培米 五百万石 純米吟醸 白龍

契約栽培米の五百万石を使用。落ち着いた香りとスッキリとしたキレのよさを感じ、お米のふくよかな旨味と味わいが心地良く広がります。
購入はこちら

からくち 白龍

からくち 白龍

地元の料飲店でもっとも親しまれている白龍の定番酒。冷やしても、お燗にしてもおいしく味わえる、飲み飽きしない辛口のお酒です。スッキリとした口当たりで、料理を絶妙に引きたてます。
購入はこちら

米、水、人・・・地域の風土を生かした酒造りを

長い歴史を持つ白龍酒造ですが、これまでの蔵の歴史では、兄弟で酒造りを行ってきた時代はなかったそう。「先代の社長を務めた父にも弟(叔父)がいましたが、日本酒業界ではないところで仕事をしていましたし、どの時代を見ても、兄弟で蔵に入っていたことはなかったようです」と白井社長。

高校を卒業後、新潟を離れ東京の大学に進学した白井社長は、9歳違いの伸児さんとは一緒に暮らした期間も短かったことから、昔は「年の離れた可愛い弟」という印象が強かったとか。「でも、今は製造責任者として皆をまとめ、周囲からも評判のよい酒を造ってくれてとても頼もしい。」「血のつながった弟だから信用できるというのはもちろんありますが、杜氏として、しっかりとうちの酒の味を造りあげてくれることにも信頼を寄せています。信用と信頼を持てるパートナーがいることはとてもありがたい。」と静かに語った秀利さん。一方、弟の伸児さんからも、「血のつながった兄として、そして経営者として、私も同じく、信用と信頼がしっかりとあります」という言葉が。

ふたりに共通しているソフトな話し方とやさしい眼差しは、どことなく、「主張することなく、脇役に徹して料理に寄り添える酒がうちの目指す酒」という白龍酒造の酒のイメージと重なり、その酒が、長く地元の方たちに愛され、また、他の地域でも、一度味わった人がその後リピーターとなって長きに渡り親しんでいるのを物語っている気がしました。

「新潟は米や水に恵まれていて、そして、人もいい。今後は新潟で生まれた酒米『越淡麗』を極めてみたい」と、白井専務。
地域との関わりを大切にしてきた先祖に敬意と感謝の念を持ち、その想いを受け継ぎ、白龍酒造はこれからも、阿賀野市の恵まれた気候風土の恩恵を受けながら、おいしい酒を醸し続けます。

白龍ロゴ

白龍酒造株式会社

新潟県阿賀野市岡山町3-7
TEL 0250-62-2222
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ライタープロフィール

阿部ちあき

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定 きき酒師 日本酒・焼酎ナビゲーター公認講師
全日本ソムリエ連盟認定 ワインコーディネーター

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