「生ビール」って何? 熱処理ビールとの違いは? 缶ビールや瓶ビールとの関係性や発泡酒との違いも確認
生ビールとは、熱処理をしていないビールのこと。居酒屋さんなどでサーバーからジョッキに注いで提供される樽生ビールのほかにも、さまざまなタイプがあります。今回は、生ビールの基本情報や、ドラフトビールや瓶ビール、発泡酒との違い、おすすめの銘柄などを紹介します。
- 更新日:
「生ビール」の「生」って何? と疑問に思ったことはないでしょうか。ここでは「生ビール」について徹底解剖していきます。
「生ビール」とは熱処理をしていないビールのこと
イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ)
「生ビール」とは、「熱処理をしていないビール」のこと。熱処理をしているビールに対し、「非熱処理ビール」とする場合もあります。
そもそもビールの「熱処理」とは?
ここでビールの製造方法をかんたんにおさらいしておきましょう。
1. 製麦工程
2. 仕込工程
3. 発酵・貯酒工程
4. ろ過工程
5. パッケージング工程
製麦工程で得られた麦芽は、仕込工程を経て麦汁になります。これに酵母を加えて発酵させ、さらに貯酒を行って熟成させると、濁りのあるビールができあがります。
この発酵・貯酒を終えたビールには、役割をまっとうした酵母が依然として生きた状態で残っています。このまま放っておくと、酵母は発酵を続けて「過発酵」の状態になり、風味に影響を与えかねません。そこで一般的なビールでは、ろ過工程で「熱処理」や「ろ過」を行い、酵母の働きを止めることで、品質を一定に保っています。また、熱処理(低温殺菌)には、菌の繁殖を抑え、保存性を高めるという目的もあります。
「熱処理」は熱殺菌によって酵母を死滅させる方法で、近代細菌学の開祖とも呼ばれる19世紀の科学者ルイ・パスツールの名から「パストリゼーション」とも呼ばれています。熱処理には、容器ごと殺菌する「トンネル・パストリゼーション」と、容器詰めする前のビールを殺菌する「フラッシュ・パストリゼーション」の2種類があります。
なお、熱処理ビールの代表的な銘柄には「キリン クラシックラガー」(キリンビール)や「サッポロラガービール」(サッポロビール)となどが挙げられます。どちらも熱処理ビールならではの厚みのある味わいがたのしめます。
genki / PIXTA(ピクスタ)
ろ過技術が進んで生まれた「生ビール」
「生ビール」とは、熱処理をしていないビールのこと。おもにろ過で酵母を取り除いた非熱処理ビールを「生ビール」と呼び、現在日本で親しまれている生ビールの多くがこれに該当します。
ビールのろ過は、濁りの原因となる物質や酵母を取り除く工程です。古くはこの工程で酵母を完全に取り除くことができなかったため、熱処理によって酵母の働きを止める熱処理ビールが一般的でしたが、ろ過技術の進化によって酵母を完全に除去できるようになってからは、熱処理を行わない「生ビール」が主流となりました。
ちなみに、ろ過を行わずに出荷される無ろ過(無濾過)のビールでも、非加熱ならば「生ビール」と呼ぶことができます。
「生ビール」の「生」=「熱を加えていないこと」と覚えておくとよいでしょう。
「生ビール」とほかのビールの違いを確認
harako / PIXTA(ピクスタ)
ここからは「生ビール」とほかのビールの違いについてみていきます。
「生ビール」と「ドラフトビール(ドラフトビア)」は同じもの?
ドラフトビールとは、樽だしビールのこと。「ドラフト」には「汲み出す」という意味があり、世界的には樽詰めビールをグラスに注いだものを「ドラフトビール(ドラフトビア)」と呼びます。
しかし日本では、ビール酒造組合が定める「ビールの表示に関する公正競争規約」において、以下のように規定されています。
出典 一般社団法人 全国公正取引協議会連合会|ビールの表示に関する公正競争規約生ビール及びドラフトビール
熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない。
つまり、日本においては「ドラフトビール」は「生ビール」と同義で、いずれも熱処理していないビールを指しているのです。
Taro / PIXTA(ピクスタ)
「生ビール」と「ビール」の違いは?
先述したように、「生ビール」とは、熱処理をしていないビールのことです。
一方「ビール」は、生ではないビール、すなわち熱処理ビールを指す場合と、「生ビール」を含むビール全般を指す場合があり、シチュエーションや文脈で判断するのが一般的です。
居酒屋さんなどの飲食店で「とりあえずビール」というと、生ではないビールと解釈される場合が多く、お店によっては「瓶ビールでよろしいですか?」などと確認される場合があるので、「生ビール」が飲みたいときはその旨はっきりと伝えましょう。
ジョッキのビールは生? 缶ビール、瓶ビールと「生ビール」の関係性は?
居酒屋さんで飲むジョッキのビールだけが「生ビール」だと思っている人もいるかもしれませんが、実際はジョッキのビールも缶ビールも瓶ビールも、熱処理をしていなければすべて生ビール。逆に、熱処理をしているビールは、どんな容器に入っていても「生ビール」とは呼べません。
居酒屋さんで提供されるジョッキのビールはたいていサーバーから注がれた生ビールですが、缶ビールや瓶ビールの場合は、ラベルで生かどうか、あるいは熱処理か非熱処理かを確認する必要があります。
HiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)
「生ビール」と「発泡酒」の違いは?
「生ビール」を含む「ビール」と「発泡酒」は、日本の酒税法において、おもに原料と麦芽の使用割合で区分されています。
<ビール>
◇麦芽、ホップおよび水を原料として発酵させたもの(麦芽の使用割合100%)
◇麦芽、ホップ、水および麦、米や果実、コリアンダーなどの香味料等の特定の副原料を使用して発酵させたもので、麦芽の使用割合が50%以上のもの
<発泡酒>
麦芽または麦を原料の一部とした発泡性のある酒類で、
◇麦芽の使用割合が50%未満のもの
◇ビールの製造に認められない原料を使用したもの
◇麦芽を使用せず麦を原料の一部としたもの
(参考資料)
国税庁|ビール・発泡酒に関するもの
ビールや「発泡酒」の定義についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事が参考になります。
おすすめの「生ビール(ドラフトビール)」
日本で流通している大手ビールメーカーの「生ビール(ドラフトビール)」のなかから、おすすめの銘柄を紹介します。
キリン一番搾り生ビール
出典:キリンホールディングス株式会社 一番搾りブランドサイト
「キリン 一番搾り」は、キリン独自の製法で一番搾り麦汁だけを使って造られた贅沢なビール。雑味の少ないクリアな味わいが特長です。
1990年に「一番搾り麦汁だけで造るビール」として誕生。現在は世界40カ国以上で愛されています。
製造販売元:キリンビール株式会社
ブランドサイトはこちら
アサヒスーパードライ
画像提供:アサヒビール株式会社サイト
「アサヒ スーパードライ」は、厳選した酵母を使用した、スッキリ辛口なビール。爽快なのどごしとキレをたのしめます。お店の生ジョッキのようにたのしめる「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」も人気があります。
製造販売元:アサヒビール株式会社
ブランドサイトはこちら
サッポロ生ビール黒ラベル
出典:サッポロビール株式会社サイト
「サッポロ生ビール黒ラベル」は、麦の旨味とさわやかな後味の完璧なバランス、そして何より、「生のうまさ」にこだわった、飲み飽きしない生ビールです。ビール好きに愛されるビールを目指しています。
製造販売元:サッポロビール株式会社
ブランドサイトはこちら
ヱビスビール(YEBISU BEER)
出典:サッポロビール株式会社サイト
ヱビス酵母とバイエルン産アロマホップ、長期熟成が奏でる旨味とコクが魅力の生ビール。
1890年に「恵比寿ビール」として誕生。130年以上の歴史のなかで、ビールのたのしみ方の進化と多様性を作り続けています。
製造販売元:サッポロビール株式会社
ブランドサイトはこちら
サントリー ザ・プレミアム・モルツ
画像提供:サントリー株式会社
「サントリー ザ・プレミアム・モルツ」は、しなやかな上質感あるプレミアムビール。きめ細かくクリーミーな泡と、鮮やかに広がる華やかな香り、深みのあるコクが特徴で、上質な味わいを堪能できます。
“グッとくる飲みごたえと、かつてない飲みやすさ”を両立させた新発売の「サントリー生ビール」も人気です。
製造販売元:サントリー株式会社
ブランドサイトはこちら
生ビールとは、熱処理を行わないビールのこと。熱処理ビールとの間に優劣はありませんが、生ならではの味わいを追求した商品が多く流通しているので、ジョッキや缶ビール、瓶ビールなどお好みのスタイルで、その魅力を味わい尽くしてみてください。