日本酒をお燗でたのしむ! おいしい燗酒の作り方
日本酒を温めてたのしむ「燗酒(かんざけ)」。燗酒の大きな魅力は、温めることで引き出された日本酒の豊かな香りや味わいを、存分に堪能できることにあります。今回は、燗酒の種類や燗酒に適した日本酒とともに、おいしい燗酒の作り方を紹介しましょう。
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日本酒のお燗には種類がある
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日本酒は温度によって味わいが変化する
日本酒は、飲むときの温度によって香りや味わいが変化するお酒です。温度帯で大きく分けると「冷酒」「常温」「燗酒」の3つに分類でき、それぞれで違った魅力をたのしめます。
日本酒をキリッと冷やした状態で飲む「冷酒」は、すっきりとした飲み心地が魅力で、とくに暑い季節にぴったり。温度が20度前後の「常温(冷や=ひや)」は、口当たりがよく、そのお酒が持つ個性を繊細に味わうことができます。初めて飲む銘柄は、まず常温で飲んでみると風味がわかりやすいでしょう。
また、30度以上に温めて飲む「燗酒」では、日本酒のタイプにもよりますが、香りがよりいっそう引き立ち、深みのあるふくよかな味わいがたのしめます。
なお、日本酒を加熱して温めることを「お燗する」「燗をつける」といいます。お燗した日本酒=燗酒は、飲むと体が芯から温まり、比較的早くほろ酔い気分になれるので、とくに寒い季節に人気です。
日本酒の燗酒の種類と特徴
燗酒は、温度によって以下の6種類に分けられます。温度が変化すると、呼ばれ方が変わり、日本酒の香りの立ち方や味わいも変化します。
◇30度程度……「日向燗(ひなたかん)」
ほんのりと香りが立ち上り、味わいはなめらかになります。
◇35度程度……「人肌燗(ひとはだかん)」
米や麹由来のよい香りをたのしめます。
◇40度程度……「ぬる燗(ぬるかん)」
日本酒の香りがよく引き出されます。
◇45度程度……「上燗(じょうかん)」
ぬる燗よりも引き締まった香りや味わいをたのしめます。
◇50度程度……「熱燗(あつかん)」
味わいは辛口に、香りはシャープに感じられます。
◇55度以上……「飛び切り燗(とびきりかん)」
味わい、香りがより辛口でシャープになります。
このように、日本酒は温めることでいっそう魅力が広がりますが、すべての日本酒がお燗に向いているわけではありません。また、おいしいと感じられる温度は個人の好みにもよるので、いろいろと試してみるとよいでしょう。
お燗に向いている日本酒とは
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お燗に適した日本酒の選び方1:精米歩合が高めのものを選ぶ
日本酒をお燗すると、米の香りや風味がより豊かに感じられるようになります。そのため、お燗には原料となる米を高度に磨いた日本酒よりも、精米歩合(精米後に残った米の割合)が高めの日本酒が向いているといわれています。
米の磨きが比較的少ない以下のタイプなら、お燗することで芳醇な米の旨味をたのしむことができるでしょう。
【純米酒系】
米、米麹、水だけで造られる純米酒は、米本来の旨味が感じられる日本酒で、お燗することでその魅力を存分に堪能できます。なかでも、伝統的な製法である「生酛(きもと)造り」や「山廃(やまはい)仕込み」で造られた純米酒は、お燗にすると米の魅力が最大限に引き出されるのでおすすめです。
ただし、純米酒はお燗の温度が高いと辛さが強く感じられるようになるともいわれているので、温めすぎないようにしましょう。
【本醸造酒系】
本醸造酒は、米、米麹、水に醸造アルコールを加えて造られます。本醸造酒は高い温度のお燗でも香りや旨味が損なわれにくいため、熱燗や飛び切り燗など高めの温度で日本酒をおいしく味わいたいときにおすすめです。
【普通酒】
原料や精米歩合など特定の要件を満たした「特定名称酒」に該当しない日本酒は、「普通酒」と呼ばれます。「普通酒」はたいてい、「特定名称酒」よりも手ごろな価格で購入できるのが魅力です。この「普通酒」も、お燗することでよりおいしく飲めるものが多い傾向にあります。また、高い温度の燗酒にも向いています。
お燗に適した日本酒の選び方2:酸度が高めのものを選ぶ
酸度とは、日本酒に旨味や酸味をもたらす、乳酸やコハク酸などの有機酸の量を示した数値のことで、瓶の裏ラベルで確認することができます。
日本酒は、酸度が高いほどコクや旨味を感じられる濃厚な味わいになるうえ、お燗にも向いているといわれています。日本酒の平均的な酸度は1.3程度ですが、お燗にする場合は1.4以上を目安に、数値が高めのものを選ぶとよいでしょう。
日本酒を自宅でお燗する方法
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日本酒をお燗するなら湯煎がおすすめ
日本酒を自宅でお燗する場合、おすすめの方法は湯煎です。湯煎すれば全体を均一に温めることができ、やわらかな味わいの燗酒を作ることができます。
【湯煎でお燗する手順】
1:徳利の九分目まで日本酒を入れ、口にラップをします。
2:鍋などに徳利が肩まで浸かるくらいの水を入れ、火にかけて沸騰させます。
3:火を止めて、鍋のなかの湯に徳利を浸します。
4:2~3分程度で徳利を引き上げます。
徳利の素材などによっても異なりますが、引き上げた際に底がやや熱いと感じるくらいになっていれば、45度程度の「上燗」に仕上がっています。
この手順を基本として、好みの温度になるように調整してみるとよいでしょう。正確に温度を計るなら、調理用の温度計を使うのもよい方法です。
湯煎以外で日本酒をお燗する方法
日本酒をお燗する方法として、湯煎以外にも「蒸し燗」と呼ばれる方法があります。手順とともに確認しましょう。
【蒸し燗の手順】
1:日本酒を入れた徳利を蒸し器あるいは蒸籠(せいろ)に入れます。
2:蒸気で蒸し、好みの温度で取り出します。
この方法はアルコールの香りが抜けにくく、また、湯煎がうまくいかなかったときなどに生じる「焦げ臭」がつかないという長所があります。
なお、日本酒を蒸してお燗するという方法は昔からあったようですが、近年、「白隠正宗(はくいんまさむね)」を醸す高嶋酒造の蔵元杜氏・高嶋一孝氏が、独自の「蒸シ燗」の手法を提唱し、注目されています。
日本酒をお燗する「酒燗器(さけかんき・しゅかんき)」を使用する方法もある
手軽にお燗ができる「酒燗器」を用いるのも手です。電気式のものと湯煎式のものがあり、それぞれに以下のような長所があります。
【電気式の特長】
電気式の「酒燗器」は、付属の容器にお酒を入れてスイッチひとつで温められる手軽さが魅力です。準備や操作が非常にかんたんなことに加え、温度調整機能や保温機能など、便利な機能を備えたものが多くあります。
【湯煎式の特長】
湯煎式の「酒燗器」は、まず本体にお湯を入れ、日本酒を注いだ別容器をセットして温めます。電気式よりは手間と時間がかかるものの、陶器を用いたものなど趣のあるデザインのものが多く、雰囲気を味わいながら燗酒をたのしむことができます。
日本酒をお燗することで、同じ銘柄でも違った香りや味わいをたのしむことができます。とくに寒い季節には、体の温まる燗酒をゆっくり味わいたいですね。