長崎の日本酒【横山五十(よこやまごじゅう):重家酒造】世に再び送り出された壱岐の日本酒

長崎の日本酒【横山五十(よこやまごじゅう):重家酒造】世に再び送り出された壱岐の日本酒
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「横山五十」は、長崎県の離島、壱岐島(いきのしま)にある重家(おもや)酒造の日本酒銘柄です。一度は断念した日本酒造りを蔵元が再開し、平成26年(2014年)に発売したのがこの銘柄です。壱岐の日本酒復活の端緒を開いた「横山五十」を紹介します。

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「横山五十」はどんな日本酒?

「横山五十」はどんな日本酒?

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日本酒「横山五十」は、麦焼酎の島・壱岐の蔵元が醸す日本酒

「横山五十」は、長崎県の北、玄界灘に浮かぶ壱岐島の蔵元、重家酒造の日本酒銘柄です。

壱岐にはもともと清酒文化が根づいていましたが、16世紀ごろ、海上交易の拠点として栄えていた壱岐に大陸から蒸溜技術が伝わり、麦焼酎が造られるようになっていったといわれています。これが麦焼酎のルーツとされ、壱岐は「麦焼酎発祥の地」と呼ばれています。また、「壱岐焼酎」は、平成7年(1995年)にWTO(世界貿易機関)のトリプス協定で「地理的表示」が認められています。

そんな「麦焼酎の島」である壱岐に蔵を構える重家酒造でも、「ちんぐ」や「雪洲」といった壱岐焼酎が造られていますが、蔵元は壱岐唯一の日本酒蔵を再建し、焼酎とともに日本酒「横山五十」も醸しています。

日本酒「横山五十」の蔵元が使う水

「横山五十」の仕込みや洗米に使われている水は、重家酒造の日本酒蔵の地下約88メートルから汲み上げた軟水です。蔵元は、紫外線殺菌装置で殺菌したあと、炭とフィルターでろ過して使用しています。

この水は、変色を招いたり香味を悪くしたりする鉄分が含まれていない、日本酒造りに向いている水です。配管も鉄分が水に溶け出さないステンレス製パイプにするなど、扱いには細心の注意が払われています。

日本酒「横山五十」の原料米

「横山五十」は、特定名称酒のひとつである純米大吟醸酒です。原料米には、麹米、掛米ともに酒造好適米の「山田錦」が100%使用されています。

米の精米歩合は銘柄名にあるとおりで、「横山五十」の「横山」は重家酒造の当主家の名字ですが、「五十」は精米歩合を表しています。つまり「横山五十」は、「山田錦」を50%まで磨いて醸した純米大吟醸酒なのです。

また蔵元は、穏やかな気候で良米の産地でもある壱岐島での「山田錦」の栽培を推進していて、壱岐産の「山田錦」を使った日本酒造りも行っています。

「横山五十」の蔵元の日本酒蔵再建までの道のり

「横山五十」の蔵元の日本酒蔵再建までの道のり

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日本酒「横山五十」を醸す蔵元の歩み

「横山五十」の蔵元、重家酒造は、初代の横山確蔵(かくぞう)氏が大正13年(1924年)に創業して以来、もともとは日本酒と焼酎の製造販売を行ってきた蔵です。当時の壱岐には、焼酎蔵に加えて多くの日本酒蔵があったといいます。

しかし、時代の移り変わりとともに日本酒蔵の数は減っていきます。普通酒を中心としていた重家酒造も、平成2年(1990年)に、高齢となった杜氏が蔵を去ったのを機に日本酒造りを断念。壱岐産の原料で造った「ちんぐ」など、焼酎一本の蔵として活路を見出しました。これにより、壱岐での日本酒造りは途絶えてしまったといいます。

日本酒「横山五十」の誕生

日本酒造りを再開させたのは、「横山五十」の現専務で日本酒杜氏の横山太三(たいぞう)氏です。

蔵に入った当初は、重家酒造の当主で焼酎杜氏である兄、雄三(ゆうぞう)氏とともに焼酎造りに励んでいましたが、ある酒販店とのつき合いのなかで日本酒の旨さにのめり込みます。そうして、先代の願いでもある壱岐での日本酒造りの再開を決意したのです。

壱岐での日本酒蔵の再建には時間がかかることから、まず佐賀県の蔵元で修業と酒造りを行い、平成25年(2013年)に特別純米酒「確蔵 Our Sprit(僕らの想い)」を発表。23年ぶりの日本酒復活を成し遂げました。

続いて誕生したのが、山口県の蔵元の協力を得て仕込んだ「横山五十」です。平成26年(2014年)、太三氏2作目となる日本酒を「純米大吟醸 横山50」として発売し、「九州S1グランプリ IN TOKYO」で見事準優勝に輝きました。

日本酒「横山五十」の蔵元が再建した日本酒蔵

「横山五十」の誕生と前後して、蔵元が取り組んだのは、壱岐での日本酒蔵の再建です。

課題となったのは、日本酒に向いている水を探すことでした。重家酒造は、壱岐島南部に本社と焼酎を造る蔵を構えていますが、そこで使われているのは焼酎に適した水。そのため、日本酒造りに最適な水を求めて島内の水源を20か所ほど調査し、数年かけてようやく理想の水源を見つけることができたそうです。

平成30年(2018年)、この水源の上に建てられた壱岐唯一の日本酒蔵、「横山蔵」がついに完成します。動線を意識したコンパクトな設計で、さまざまな分析機や最新の設備が取り入れられました。蔵内は完全冷蔵で、常に5度前後で管理することができるため、年間をとおしての仕込みが可能となっています。

日本酒「横山五十」は1杯目に選ばれる酒をめざす

日本酒「横山五十」は1杯目に選ばれる酒をめざす

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日本酒「横山五十」のめざす味わいは?

「横山五十」は、1杯目で「おいしい」と感じてもらえる、そして1杯目に選んでもらえる「ファーストドリンク」を目標に造られています。

上品な甘さと芳醇でふくよかな味わい、さわやかな酸味でキレのよいあと口が、重家酒造の日本酒杜氏、横山太三氏のめざす酒です。

太三氏の理想どおりに仕上げられた「横山五十」は、果実をかじったようなジューシーな甘味と米の凝縮した旨味を味わえるのが魅力で、多くの日本酒ファンから好評を得ています。

日本酒「横山五十」のラインナップは「WHITE」と「BLACK」

「横山五十」には、「WHITE」と「BLACK」の2種類があります。どちらも冷やして、ワイングラスで飲むのがおすすめです。

【横山五十WHITE】

マスカットのような香りが特徴で、米の旨味と甘味が感じられる酒です。雑味はなく、きれいな強めの酸があと口のよさを引き立てます。1回火入れの通年商品のほか、12月・1月・2月に限定発売される「直汲み生」や、3月・4月・5月に限定発売される「うすにごり生」もあります。

【横山五十BLACK】

リンゴの香りが特徴の「BLACK」は、「WHITE」よりも芳醇で、フルーティーかつジューシーな米の旨味と甘味が味わえます。キレがよく、あと口は淡麗な印象です。1回火入れの通年商品のみ展開。

日本酒「横山五十」の蔵元が壱岐で造る「よこやま」シリーズとは

重家酒造の日本酒杜氏、横山太三氏が、壱岐唯一の日本酒蔵「横山蔵」の完成を機に誕生させたのが、「よこやま」シリーズです。

もともとは、複数の酵母をブレンドして仕込んだ日本酒シリーズとしてリリースされましたが、近年はひとつの酵母で造られた商品も登場しています。

「よこやま」を冠したラインナップには、純米吟醸酒の「SILVER」シリーズを中心に、蔵のフラッグシップ商品である純米大吟醸酒の「GOLD」や普通酒の「等外」なども並びます。「SILVER」と「等外」には、それぞれ「生」タイプと「火入れ」タイプがあるのが特徴です。

なお、「よこやま」シリーズの日本酒も「横山五十」と同じく「ファーストドリンク」をめざして醸されています。

「横山五十」は、焼酎の島・壱岐島の貴重な日本酒銘柄です。壱岐焼酎や「よこやま」シリーズとともに、洗練された味わいをぜひ堪能してみてくださいね。


製造元:重家酒造株式会社
公式サイトはこちら

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