書籍『ウイスキー・ライジング』で、ジャパニーズ・ウイスキーに対する知見を深めよう

書籍『ウイスキー・ライジング』で、ジャパニーズ・ウイスキーに対する知見を深めよう
出典 : ridersuperone/ Shutterstock.com

『ウイスキー・ライジング』という書籍を知っていますか? 2018年発売の日本版には、ジャパニーズ・ウイスキーの歴史をはじめ、国内蒸溜所や銘柄などの詳しい情報がまとめられています。今回はジャパニーズ・ウイスキーの魅力が詰まった本書の概要を紹介します。

  • 更新日:

『ウイスキー・ライジング』とは?

『ウイスキー・ライジング』とは?

出典:小学館サイト
タイトル:『ウイスキー・ライジング』
著作者名:ステファン・ヴァン・エイケン氏 
販売元:小学館

『ウイスキー・ライジング』とはどんな本?

2018年発売の『ウイスキー・ライジング』(小学館、本体4,200円+税)は、ベルギー人ジャーナリストのステファン・ヴァン・エイケン氏が著した、ジャパニーズ・ウイスキーの専門書です。

本書は、2016年にアメリカで出版された『WHISKY RISING(ウイスキー・ライジング)』の日本版で、ページ数384ページの大作のなかには、ジャパニーズ・ウイスキーに関する貴重な情報が集約されています。

ジャパニーズ・ウイスキーの歴史や出版当時の全蒸溜所の情報などが詳細に綴られた初の本であることから、副題にあるように「ジャパニーズ・ウイスキーと蒸溜所ガイドの決定版」として注目されています。

『ウイスキー・ライジング』の出版に至るまでの経緯

『ウイスキー・ライジング』の著者、ステファン・ヴァン・エイケン氏が日本に移住したのは2000年のこと。ジャパニーズ・ウイスキーの価値が、世間にまだ認識されていなかった時代です。

日本を旅するなかで軽井沢蒸溜所と出会い、ジャパニーズ・ウイスキーに魅せられたエイケン氏は、日本の素晴らしいウイスキー生産者や銘柄について強い興味を抱きますが、深く知りたくても情報が少なくて困っていたといいます。そんな折、海外向けのジャパニーズ・ウイスキーの専門サイト「Nonjatta」の運営をイギリス人ジャーナリスト、クリス・バンティング氏より託されます。

2011年にサイトを引き継いで以来、エイケン氏は、独自の取材を通じて得たジャパニーズ・ウイスキーに関する情報を、英語で発信し続けてきました。その集大成ともいえる著作が本書です。

Nonjatta
公式サイトはこちら

『ウイスキー・ライジング』の構成とおもな内容

『ウイスキー・ライジング』の構成とおもな内容

mTaira/ Shutterstock.com

『ウイスキー・ライジング』の構成

『ウイスキー・ライジング』には、ジャパニーズ・ウイスキーが近年のような地位を得るまでの軌跡や、著者独自の調査に基づくジャパニーズ・ウイスキーに関する最新データ(2018年時点)などが包括されています。

構成は3章立て。パート1では「ジャパニーズ・ウイスキーの歴史」、パート2では「日本国内の蒸溜所」、パート3では「ジャパニーズ・ウイスキーそのもの」に焦点を当ててまとめられています。

それでは、3つのパートの内容をかんたんに紹介しましょう。

パート1:「オン・ザ・ウェイ」

パート1では、日本のウイスキー造りの黎明期から近年までの歴史が綴られています。

とくに興味深いのは、ジャパニーズ・ウイスキーの発展に大きく貢献した、鳥井信治郎氏と竹鶴政孝氏についての記述です。ジャパニーズ・ウイスキーが世界中から脚光を浴び、評価が高まり続けているのも、ジャパニーズ・ウイスキーの礎を築いた2人の立て役者が存在したからこそ。企業創設期の臨場感とともに、ウイスキー造りへの情熱を知ることができるでしょう。

パート2:「蒸留器:日本の蒸留所 現在と過去」

パート2では、現在稼働中(2018年時点)の15か所の蒸溜所と、すでに役割を終えた4つの蒸溜所について取り上げています。

各蒸溜所のページで紹介されているのは、歴史や立地環境、製造上の特徴のほか、導入されているマッシュタン(糖化槽)やウォッシュバック(発酵槽)、ポットスチル(蒸留器)の種類など。蒸溜所の写真とともにさまざまな視点で語られていて、より深く蒸溜所ごとの個性を知ることができます。

パート3:「ジャパニーズ・ウイスキーを飲む」

パート3では、ジャパニーズ・ウイスキーそのものに注目。希少なジャパニーズ・ウイスキーと出会える確率の高い日本全国のバーリストのほか、世界的にも人気の高いジャパニーズ・ウイスキーの8シリーズの魅力や、ジャパニーズ・ウイスキーに精通したプロが推すボトルを厳選し、それぞれの味わいをレビューした「33の記憶に残るウイスキー」について記されています。

また、後書きでは、ジャパニーズ・ウイスキーの製法にインスパイアされ、日本風の製法で商品を生み出したアメリカの2つの蒸溜所にフォーカス。日本独特の製法が、海外のウイスキー造りに少なからず影響を与えていることが紹介されています。

「ウイスキー・ライジング」の著者が魅了されたジャパニーズ・ウイスキー

「ウイスキー・ライジング」の著者が魅了されたジャパニーズ・ウイスキー

VECTORWOW / Shutterstock.com

軽井沢蒸溜所「軽井沢」

著者が日本で初めて恋に落ちた蒸溜所は、代表銘柄「軽井沢」で知られる軽井沢蒸溜所です。パート3では、この「軽井沢」の5つのボトルについてレビューされていて、希少なボトルの個性を知ることができます。

しかし、飲みたいと思っても、2012年に蒸溜所は閉鎖され、原酒はすべて売り払われているため、「軽井沢」のボトルを手にするのは非常に困難です。原酒を購入したいくつかのボトラーから限定リリースされることもありますが、2017年のオンラインオークションで「軽井沢1960 シングルカスク」が1,400万円を超える高値で落札されるほど、世界レベルで人気が過熱しています。

なお、「軽井沢」は、オーセンティックバーなどで出会えることもあるようですが、極稀なケースといえそうです。

ベンチャーウイスキー「羽生」「秩父」

本書では、アイコン的なシリーズものとして8つのシリーズを挙げていますが、そのうち「イチローズモルト」で有名なベンチャーウイスキーが手がけるシリーズを3つ紹介しています。

具体的には、トランプのカードがモチーフの「イチローズ・カード・シリーズ」、酒販店の信濃屋が厳選した羽生蒸溜所または秩父蒸溜所のシングルカスクをボトリングした「ザ・ゲーム」シリーズ、羽生・秩父両蒸溜所でボトリングした、福岡のフェスティバル限定の「月と失われゆく動物シリーズ」の3シリーズです。

著者は、世界的なジャパニーズ・ウイスキーブームが来る前にカード・シリーズの初期ボトルをいくつか入手していたそうですが、パート3のボトルレビューのページでもカード・シリーズやゲームシリーズの貴重なボトルを高く評価しています。

『ウイスキー・ライジング』は、ジャパニーズ・ウイスキーを深く知るうえで欠くことのできない書籍のひとつです。エイケン氏のていねいな調査と研究によってまとめられたジャパニーズ・ウイスキーの物語を読めば、よりいっそうジャパニーズ・ウイスキーへの興味が高まることでしょう。


版元:小学館
公式サイトはこちら

おすすめ情報

関連情報

ウイスキーの基礎知識
広告掲載について

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事