ビールを一番飲んでいる国は? 世界のビール事情を知ろう
ビールは世界中で親しまれているお酒ですが、各国でどのくらいの量が飲まれているのか知っていますか? 今回はビールの消費量に注目して、よく飲む国や地域はどこなのか、どんなたのしみ方がされているかなど、世界のビール事情について見ていきましょう。
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世界各国の人々はどのくらいビールを飲んでいる?
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ビールは世界でどのくらい消費されている?
そもそも、ビールは世界でどのくらい消費されているのでしょうか。
キリンビールがまとめた「2018年世界主要国のビール消費量/生産量」 の調査結果によると、ビールの世界総消費量は約1億8879万キロリットル。東京ドームをジョッキに見立てて換算すると、約152杯分に相当します。
また、国別の消費量TOP5 は以下のとおりです(2018年調査時)。
◇第1位:中国(約3,936万キロリットル)※2003年より16年連続トップ
◇第2位:アメリカ(約2,403万キロリットル)
◇第3位:ブラジル(約1,266万キロリットル)
◇第4位:メキシコ(約898万キロリットル)
◇第5位:ドイツ(約832万キロリットル)
以下、第6位ロシア(約782万キロリットル)、第7位日本(約511万キロリットル)と続きます。
地域別に見ると、アジアの構成比が約33.3%で、2009年より10年連続でトップ 。また、2010年以降、アフリカの消費量が増加傾向 にある点も注目されています。
1人あたりどのくらいビールを飲んでいる?
次に、国や地域全体ではなく、1人あたりのビールの消費量 を国別に見ていきましょう。
◇第1位:チェコ(192リットル)※26年連続トップ
◇第2位:オーストリア(108リットル)
◇第3位:ドイツ(101リットル)
◇第4位:ルーマニア(99リットル)
◇第5位:ポーランド(98リットル)
伝統的にビールをたのしんできた国々が上位を占めています。とくに、ドイツは国全体の消費量と1人あたりの消費量がいずれも上位で、ビールがドイツの人たちの生活に密着していることがうかがえます。
ちなみに、日本の1人あたりのビール消費量は約40リットルで世界第52位です。
こうして見渡してみると、ビールの「国全体の消費量」は人口数にも関係しているとはいえ、「1人あたりの消費量」との間に違いがあるのは興味深いところです。
参照:ビール消費量/生産量 2010~2018 キリンビール大学
参照:ビール酒造組合
ビールは世界各国でどのようにたのしまれている?
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何百年もビールを造り続けるヨーロッパの事情
世界中で愛されているビールですが、国や地域によってお酒の事情は少し異なります。
イタリアやスペイン、フランスなど、よくブドウが採れるヨーロッパでは、ワインを中心とした食生活が発達しています。
一方、それより北にあるドイツやチェコ、ベルギー、イギリス、アイルランドといった国々では、麦(大麦や小麦)を使ったお酒(ビール)造りが盛んです。国ごとにさまざまな特徴を持つビールが造られ、何百年もの歴史と伝統を持つ醸造所が数多く存在します。また、イギリスやアイルランドでは、パブでビールを飲みながら会話をたのしむ習慣が根づいています。
クラフトビールの中心地アメリカ
アメリカでビール造りが始まったのは、17世紀ごろといわれています。北アメリカの先住民はお酒を造る文化をほとんど持たなかったため、ヨーロッパからの入植者たちが母国のスタイルをもとにビールを醸造するようになったことで、アメリカの酒造りの歴史がスタートしました。
アメリカでは、禁酒法や大手企業の寡占化といった時代を経て、「バドワイザー」「クアーズ」「ミラー」といった、大手ビールメーカーの造るアメリカンラガーが世界的にも有名です。
さらに、1965年ごろからクラフトビールが注目され、現在でもブームが継続しています。2018年時点で、アメリカのクラフトビール醸造所は7,000か所以上 にも上り、比較的大きなメーカーだけでも104社が存在しています。
さわやかな飲み口のラガーが主流のアジア
もともとアジアには、現代に通じる土着のビール文化はなかったようです。北アメリカと同様に、アジアのビール文化はヨーロッパから持ち込まれたといわれています。
イギリスの植民地だったスリランカなどには、イギリスの伝統的なビールで香りや苦味の強い「エール」スタイルも残っているようです。しかし、アジア全体では、世界的に流行した「ピルスナー」が伝わったことから、軽い飲み口が特徴の「ラガー」が主流となっています。
アジアのビール文化は歴史が浅いため、独自のスタイルと呼べるものは存在しません。しかし近年は、あちらこちらで小規模醸造所が誕生し、クラフトビールを提供するところも増えています。今後は、それぞれの国や地域ならではのビールが誕生することも期待されます。
世界各国のおもなビアスタイルと銘柄
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豊かな味わいと香りが魅力のエールビール
ビールは発酵方法の違いから、「エール」「ラガー」「自然発酵ビール」の大きく3つに分類できます。まずはエールから紹介しましょう。
「エール」は、伝統的なビールの醸造法で造られ、豊かな味わいと香りが特徴です。代表的なビアスタイルには、以下のようなものがあります。
【ヴァイツェン】
小麦を使って醸造したドイツ発祥のビール。バナナやクローブ、ナツメグを思わせる香りに特徴があります。ドイツのプランク醸造所が造る「プランク ヘフェ ヴァイツェン」が有名です。
【ペールエール】
イギリスの伝統的なビール。苦味が強く、すっきりとしたドライな味わい。フルーティーなエステル香も特徴です。イギリス・フラーズ社の「ロンドンプライド」のほか、アメリカのシエラネバダ・ブリューイングによる「シエラネバダ・ペールエール」などが知られています。
【スタウト】
大麦をロースト(焙煎)して造ったビールで、コーヒーのような強い苦味が口に残ります。クリーミーな泡立ちも特徴。イギリスの「ポーター」をもとに「スタウト」を考案した、アイルランドのアーサー・ギネスによる「ギネス エクストラスタウト」が代表的な銘柄です。
すっきりとした飲み口のラガービール
「ラガー」は、エールよりも新しい時代に生まれたビール。爽快で飲みやすいのが特徴です。
【ピルスナー】
すっきりとしたシャープな味わい、ホップの爽快な香りと苦味が特徴。黄色い液体に乗った真っ白な泡が映えます。日本の大手メーカーが造るビールはほとんどがこのピルスナー。ほかには、1842年にチェコで生まれた「ピルスナーウルケル」などが知られています。
【ボック】
ドイツ発祥のビールで、アルコール度数が6〜7%と高めなのが特徴。ホップの苦味よりモルトの風味が強く感じられます。ドイツ・アインベッカー社の「マイウアボック」などが代表的です。
【シュヴァルツ】
「シュヴァルツ」はドイツ語で「黒」の意。暗い茶色から黒色の見た目が特徴です。色合いの印象ほど味わいは重くなく、ほろ苦さと甘味があります。「ケストリッツァー・シュヴァルツビア」などの銘柄が知られています。
野生酵母による強い酸味が魅力の自然発酵ビール
「自然発酵ビール」は、醸造所の空気中に漂う野生酵母を使って発酵させるビール。醸造所ごとに香味が異なり、フルーツなどが加えられることもあります。
「自然発酵ビール」を代表するのは、ベルギーのブリュッセルとその近郊で造られる「ランビック」というビアスタイル。レモンや酢を思わせる強い酸味が特徴です。代表的な銘柄には、カンティヨン醸造所の「カンティヨン・グース」などがあります。
ランビックはそのまま飲むことはほとんどなく、若いランビックと古いランビックをブレンドさせたり、砂糖を加えて飲みやすくしたり、チェリーを加えて発酵させたりと、さまざまな調整をしてたのしむのが一般的。また、ランビックは、副原料にフルーツを使用して造る「フルーツビール」のベースとしてもよく使われています。
ビールの消費量をもとに世界を眺めてみると、各国でさまざまなビールが愛されていることがわかります。日本のビールももちろん魅力的ですが、この機会に世界の個性的なビールにもチャレンジしてみてはいかがでしょう。