高知の日本酒【南(みなみ):南酒造場】量より質の姿勢を貫く酒造りが生む、人気の日本酒ブランド

高知の日本酒【南(みなみ):南酒造場】量より質の姿勢を貫く酒造りが生む、人気の日本酒ブランド
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「南」は、高知県の蔵元、南酒造場が醸す日本酒です。高知の酒は「淡麗辛口」が主流ですが、南酒造場の「南」は、「芳醇旨口」が特徴。今回は、手の掛かる「箱麹法」で麹造りを行うなど、人の手でていねいに造られている人気銘柄、「南」の魅力を紹介します。

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「南」の成り立ち

「南」の成り立ち

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「南」を醸す蔵元とは

「南」を醸しているのは、高知県東部の安田町で日本酒造りを行っている南酒造場です。

南酒造場は、地元での屋号を「山形屋」といい、江戸時代にはこの地で廻船問屋を営んでいました。酒造りを開始したのは明治2年(1869年)と、今から150年以上も前のこと。山形屋12代当主、南久吉郎氏の時代のことでした。

蔵のある安田町は、清流安田川に沿って広がる町です。面積の8割近くを森林が占める一方で、下流域の平野部は土佐湾に面している、山と海の自然に恵まれた穏やかな町として知られています。

「南」は、安田町の自然豊かな環境のなかで育まれているのです。

「南」の始まり

「南」は、蔵元の前当主、南卓治氏が、平成10年(1998年)に立ち上げた日本酒ブランドです。日本酒の消費量が減少するなか、卓治氏は、かねて販路を広げる必要性を感じていたそう。そこで、国内の一大消費地である首都圏への進出を考え、首都圏向けの商品として誕生させたのが「南」です。

蔵元の当時の主力銘柄は「玉の井」でしたが、東京の酒販店から助言を受けるなどして、味わいの方向性を模索。食事と一緒にたのしめるだけでなく、酒単体でもおいしく飲める、飲み飽きない酒を目指して新しい酒の開発に力を注いだといいます。

そうして生まれたのが「南」。銘柄名の「南」には、万人に覚えてもらいやすい名称であることに加え、「伝統ある家名に恥じないように」という想いが込められています。

「南」に使われている水と米

「南」に使われている水と米

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「南」に使われている水は?

「南」に使われている水は、南酒造場のそばを流れる安田川の伏流水です。

土佐湾に注ぐ安田川は、安田町の北隣、馬路村(うまじむら)の稗己屋山(ひやごややま)を源とする清流です。水質がよく、天然アユをはじめ多くの川魚が棲んでいることから、釣り人に人気のスポットとなっています。

「南」はこの良質な水で醸されているのです。

なお、「南」が生まれるまでの主力銘柄「玉の井」の名は、美しい玉のような清水である安田川の伏流水が、尽きることなく井戸に湧き出すことに由来しているそう。当然、「南」と同じく「玉の井」にも、きれいで質のよい安田川の伏流水が使われています。

「南」の原料米にはどんな米が使われている?

「南」の蔵元、南酒造場で醸造されている日本酒は、その9割が「純米」です。純米酒は米の旨味が生きたお酒で、使う米の種類によって酒質が変わってきます。そのため蔵元は、旨い純米酒を醸すために、さまざまな米を使用しています。

「南」の原料米の中心は「松山三井(まつやまみい)」です。愛媛県で育成された米で、一般のうるち米の扱いながら粒が大きいなど、日本酒造りに適した特徴を持っていることで知られます。

また酒造好適米では、「山田錦」「五百万石(ごひゃくまんごく)」「雄町(おまち)」といったメジャーな品種のほか、地元の高知県で生まれた「吟の夢(ぎんのゆめ)」、愛媛県の「しずく媛(ひめ)」、そして山形県の「出羽燦々(でわさんさん)」などを使用。地元産をはじめ全国各地の好適な品種を用いて、旨口で芳醇な酒を醸しています。

「南」は何杯でも飲みたくなる「芳醇旨口」の日本酒

「南」は何杯でも飲みたくなる「芳醇旨口」の日本酒

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「南」を生む、手を掛けたていねいな酒造り

「南」を醸造する南酒造場は、量を追わず味重視の姿勢を貫いてきた少量生産の蔵元です。

蔵元が心掛けているのは、目の届く範囲での酒造り。そのため、米は洗米機を使わず手で洗い、すべての麹は、昔ながらの「箱麹法(はここうじほう)」で造られています。麹箱(こうじばこ)という木箱で、人の手をかけて麹を造るため手間がかかりますが、杜氏の熟練の技が活きる製法でもあります。

また、酵母の働きを止め、品質を維持するために行われる火入れにもこだわりがあります。火入れは通常、貯蔵前と瓶詰め時の2回にわたって行われますが、「南」では搾りたてのフレッシュさ保つため、1回のみの火入れを基本としています。

「もう一杯」「もう一杯」と、何杯でも飲みたくなる「南」の味わいは、手を掛けてていねいに行われる酒造りと、味を追求する蔵元のこだわりから生まれているのです。

「南」は「芳醇旨口」の酒

「南」は、「淡麗辛口」が代名詞となっている高知の日本酒のなかで、ひと味違う「芳醇旨口」な味わいを持つ日本酒です。

香りが華やかで、旨味がたっぷりありながらも、甘さは控えめで、さらに酸味もキレも併せ持つため、飲み飽きないのです。何杯飲んでもおいしいと評判の「南」ブランドのラインナップから、いくつか紹介しましょう。

【南 特別純米 火入れ】

「松山三井」を60%の精米歩合で使用。米の旨味が十分に堪能できる特別純米酒で、きれいな酸とすっきりとしたキレ味が特徴です。冷やしても燗でも常温でもいける、飲み飽きしない1本です。

【南 純米中取り 無濾過 松山三井 生酒】

「松山三井」を60%の精米歩合で使って醸した純米酒。醪(もろみ)を搾る際に2番目に出てくる、「中取り」の部分のみを瓶に詰めた無ろ過生酒で、旨味と香り、キレのバランスが絶妙です。

【南 出羽燦々 純米吟醸 無濾過 生酒】

山形県の酒造好適米「出羽燦々」を50%まで磨いて使用。無ろ過原酒のしっかりとした旨味と生酒のフレッシュさ、そして「南」ならではの酸味とキレのよさがたのしめます。

「南」は少量生産の日本酒です。なかでも、酒造好適米の王様「山田錦」を使った商品は、仕込み量が少なく、「隠し酒」といわれることもあるそう。「南 特別純米 原酒 山田錦60」など、山田錦で醸した「南」を見つけたら、即購入がおすすめです。蔵元のていねいな酒造りによって醸される、さまざまな「南」の味わいを、飲み比べてみたいですね。

製造元:有限会社南酒造場
高知県安芸郡安田町安田1875番地(公式サイトなし)

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