「田酒」は米の旨味が生きた日本酒の原点ともいうべき逸品【青森の銘酒】

「田酒」はみちのく青森の老舗蔵、西田酒造が醸す日本酒です。昔ながらの手造りにこだわった“日本酒の原点”ともいうべきお酒で、ふくよかな米の旨味に特徴があります。蔵元のこだわりや想い、「田酒」のおいしさの秘密を余すところなく紹介します。
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「田酒」を醸す西田酒造店のこだわり

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「田酒」の造り手、西田酒造店とは
「田酒」を手がけるのは、青森市唯一の蔵元である西田酒造店です。明治11年(1878年)、外ヶ浜と呼ばれる津軽半島東海岸の町・油川大浜に蔵を構え、140年以上もの長きにわたって日本酒造りに勤しんできました。
代表銘柄は、人気の「田酒」と、各地の清酒品評会で幾度となく高評価を得てきた、定番酒の「喜久泉(きくいずみ)」。この2銘柄を主軸に、こだわりの銘柄を造り続けています。
「田酒」を育む蔵元のこだわり
「田酒」の蔵元、西田酒造店が追求するのは、味へのこだわり。「田酒」が日本中から注目され、需要が高まってもなお醸造高を増やさず、昔ながらの手造りと原料の米にこだわり、ていねいな酒造りに徹しています。
本醸造酒の「喜久泉」では、淡麗かつ軽快な味わいを出すため、醸造アルコールの量を必要最低限に抑え、醸造用糖類は一切使用せずに味わいを追求。平成19年(2007年)以降は添加するアルコールにもこだわり、レギュラー酒でも贅沢に「吟醸造り」で醸し、理想の味に仕上げています。
そして、厳選した米で風味よく造り上げているのが、旨口の純米酒「田酒」です。蔵元の原料米へのこだわりは果てしなく、県産の酒造好適米で醸すだけでは満足せずに、“幻の米”といわれる青森県産初代酒造好適米「古城錦(こじょうにしき)」を復活させ、新たな味わいの「田酒」を誕生させています。
「田酒」に込められた蔵元の想い

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「田酒」は日本の原風景を象徴する田から生まれた純米酒
「田酒」が世に送り出されたのは昭和49年(1974年)のこと。読んで字のごとく、田から生まれた酒「田酒」は、日本の田で作られる米だけを主原料に造られています。このお酒に込められているのは、「日本酒の原点に返り、風格ある本物の酒を造りたい」という想いです。
醸造に着手した昭和45年(1970年)といえば、ビールやウイスキー、焼酎などの人気に押され、日本酒の消費が低迷した時代。しかし、蔵元はそんな逆境を跳ねのけ、日本酒本来の魅力を引き出すために3年以上もの歳月を重ねて、昔ながらの手造りによるこだわりの純米酒ブランドを完成させたのです。
「田酒」の原点、米に懸ける蔵元の熱意
「田酒」は、よい米にこだわり、米が持つ旨味を存分に引き出した純米酒です。原料米には、おもに「山田錦」に匹敵するといわれる「華想い」や、特別純米酒に使われる定番米「華吹雪」といった青森県産の酒造好適米を使用しています。
耐冷性や耐病性などの問題から後継品種に変えて醸していたなかで、米への追及心から“幻の米”「古城錦」の復活に着手。平成3年(1991年)に特定農家の力を借りて復活させた「古城錦」で仕込みを開始し、完成した酒に「田酒 古城乃錦」と名づけました。こだわりの純米吟醸は現在、県内向けに販売されています。
「田酒」の特徴とおいしさの秘密

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「田酒」の特徴は米の旨味と雫の色
「田酒」の特徴は、何といっても米の旨味。米と米麹と水だけで醸しているため、米の旨味がギュッと凝縮された風格のある味わいをたのしめます。青森県産の酒造好適米を使い、その個性や魅力を存分に引き出した、まさに「青森の地酒」の名にふさわしい純米酒ブランドといえるでしょう。
淡い山吹色の雫も「田酒」の特徴です。多くの日本酒は透明度を上げるためにその製造工程で活性炭ろ過を行いますが、色と一緒に必要な旨味成分も取り除かれてしまうことがあります。そのため、西田酒造店では2003年にこれを廃止し、自然な色合いの酒に仕上げています。
「田酒」の製造工程はすべてが手作業
「田酒」の製法は完全な手造り。洗米に始まり、浸漬、蒸米、放冷、製麴、酒母造り、仕込み、槽掛け(ふながけ)、火入れ、瓶詰めに至るまで、全工程を人の手で行っています。熟練の杜氏が培ってきた経験と蔵人たちの細部にまで行き届いた作業が、特別な味わいを生むのです。
手造りにこだわる分、生産量が抑えられるため、市場に出回る数は限られてしまいます。その一方で、醸す酒の旨さから、「田酒」の人気が衰えることはありません。引く手あまたなので、なかなか手に入りにくい銘柄として知られています。
「田酒」シリーズの名酒を知ろう

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「田酒」を飲むなら特別純米酒から
【特別純米酒 田酒】
「田酒」シリーズのなかでも1年を通してたのしめるのが、「特別純米酒 田酒」です。原料米に青森県産酒造好適米「華吹雪」を使用。辛口ながら、旨味とコクを感じさせる飲み飽きしない逸品です。すっきりとした味わいは、料理との相性も抜群。
【特別純米酒 山廃 田酒】
11月から冬季のみの季節限定で出荷される山廃仕込みの特別純米酒。すっきりとした味のなかにも、厚みのある味わいが際立つ1本です。
「田酒」のこだわりラインナップ
【純米大吟醸 百四拾 田酒】
米麹・掛米すべてに青森県奨励の県産酒造好適米「華想い」(旧「青系酒140号」)を使用した純米大吟醸。まろやかなふくらみと華やかな吟醸香がたのしめます。5月のみ出荷の限定品。
【純米大吟醸 田酒】
「酒米の王」ともいわれる酒造好適米「山田錦」を使ったキレ味抜群の純米大吟醸。まろやかなふくらみと厚み、気品が共存した1本です。10月のみ出荷される数量限定品。
【純米大吟醸 四割五分 田酒】
原料米に精米歩合45%の山田錦を使用。米の旨味を存分に味わいたい人におすすめの純米大吟醸です。上品な香りも高ポイント。同じく10月のみの限定出荷です。
【純米大吟醸 山廃 田酒】
精米歩合40%の山田錦を使用。気品のある吟醸香と、厚みがあってバランスのよい味わいがたのしめる贅沢な逸品です。11月のみの限定出荷品。
【純米大吟醸 斗壜取り 田酒】
もろみを入れた袋を斗壜(とびん)と呼ばれる容器に吊るし、滴り落ちる雫を集めた希少なお酒。斗壜取りならではの華やかな香りと、上品かつ繊細な味わいを堪能できます。こちらは12月のみの限定出荷品。
「田酒」と料理のマリアージュをたのしもう

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「田酒」は至高の食中酒
「田酒」は、日本酒愛飲家の間でトップクラスの食中酒といわれています。その真価は、「食事と一緒に味わったときにこそ最大限に発揮される」といった声が上がるほどの高評価。
甘味が主体の料理と合わせればキリッと引き締まり、辛味を感じさせる料理と合わせれば米の甘味が引き立ちます。すっきりとしたあと味も、料理の味を引き立てるエッセンスのひとつ。米の旨味が生きた旨口の純米酒なので、料理と相性がよいのもうなずけます。
「田酒」はどんな料理とも相性抜群
「田酒」は白ごはんに合う料理となら、どんなメニューにも合うお酒です。鮮魚をはじめとする魚料理はもちろんのこと、肉料理や鍋物、煮物などとの相性もよく、絶妙に引き立て合います。
また、和食以外の料理やデザートともマッチ。合わせる料理次第で旨味が変化するのも、食中酒としての「田酒」の魅力でしょう。入手できたあかつきには、さまざまな料理とのマリアージュをたのしんでみてください。
「田酒」は日本酒の原点を再確認させてくれるお酒。生産数が少なく、増え続ける需要に供給が追いつかないため、入手はつねに困難ですが、チャンスがあったら逃さず手に入れたいものです。
製造元:株式会社西田酒造店
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