金陵(きんりょう)とは?「讃岐のこんぴら酒」と呼ばれる香川の日本酒を解説
日本酒「金陵」をご存知でしょうか?西野金陵が醸すこのお酒は、地元香川の米と名水で作られています。御神酒として、江戸時代から愛されてきたその歴史や楽しみ方をご紹介します。
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「金陵」の蔵元の歴史
出典:西野金陵サイト
「金陵」の名の由来と蔵元の成り立ち
「金陵」は、香川県琴平町などに蔵を持つ、西野金陵の銘柄酒です。「金陵」の名は、儒学者の頼山陽(らいさんよう)が、琴平を中国の古都、金陵(現在の南京)になぞらえたことに由来します。
蔵元の西野金陵は、万治元年(1658年)創業の歴史ある企業で、もともとは徳島で染料の藍を扱っていました。安永8年(1779年)に阿波国芝生で酒造りを始め、寛政元年(1789年)に琴平の地に移って本格的に日本酒造りを開始。これは、8代目当主が、水と米に恵まれた琴平で、酒造株を買い受けたことをきっかけとしています。
なお、染料事業は現在、化学品事業部が受け継ぎ、酒類部とともに西野金陵の両輪を担っています。
「金陵」と金刀比羅宮
「金陵」の蔵元、西野金陵の本店がある琴平町には、“こんぴらさん”の愛称で親しまれている神社、金刀比羅宮があります。金刀比羅宮は、伊勢神宮と並ぶ江戸時代の人々の憧れの参詣地で、現在も大勢の観光客が訪れます。
江戸時代から「讃岐のこんぴら酒」とも呼ばれる「清酒 金陵」は、この金刀比羅宮の神前に供えられる御神酒として珍重され、“こんぴら参り”に訪れる人々にも愛飲されてきました。
昭和63年(1988年)、西野金陵は、金刀比羅宮の参道口に面した酒造庫を改築し、創業当時の白壁の蔵を復元。資料館「金陵の郷」を開いて、往時の日本酒造りの様子などを現代に伝えています。
「金陵」を醸す3つの蔵では、こだわりの2名水を使用
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「金陵」を醸す3つの蔵
「金陵」は現在(2020年6月時点)、3カ所の蔵で醸されています。ひとつ目は、「金陵」が誕生した約230年前から醸造を続ける「琴平蔵(ことひらぐら)」。2つ目は、販売量が増えて琴平蔵が手狭になったことから、昭和44年(1969年)に建てられた「多度津蔵(たどつぐら)」。3つ目は、多度津蔵と同じ敷地に新築された「八幡蔵(やはたぐら)」です。多度津蔵と八幡蔵は、良質の水が湧く多度津町葛原(かずはら)にあります。
3カ所に分かれている蔵と蔵が、互いに切磋琢磨して日本酒造りを行う西野金陵。平成24年(2012年)には、3蔵すべてが、全国新酒鑑評会で最高位の金賞を受賞するという快挙も成し遂げています。
「金陵」の醸造に使われる2種類の水
「金陵」は、「酒造りは造る人の心のあり方、酒造りは人の和、蔵浄ければ自ずと酒清し 」を座右の銘に、原料を厳選し、日本酒造りを行っています。醸造に欠かせない水も、蔵元がこだわりを持つ原料のひとつで、蔵の建つ地域ならではの名水で仕込んでいます。
琴平蔵では、金刀比羅宮がある象頭山(ぞうずさん)から湧き出る「昭和井戸」の軟水を使用。また、多度津蔵と八幡蔵では、「八幡の恩湧(やはたのおんゆ)」と呼ばれる、中硬水の湧き水を使用しています。この水は、多度津蔵の新設時に近隣の葛原正八幡神社に分けてもらったもので、もとは「鬼湧(おにゆ)」と呼ばれていましたが、蔵元が「八幡の恩湧」と命名し重宝しています。
「金陵」の特徴は「ふくらみ・まるみ・のびやかさ 」
出典:西野金陵サイト
「金陵」の蔵元は米にもこだわる
「金陵」の蔵元は、「水を日本酒の父、米を日本酒の母」と位置づけ、米にもこだわりを持って、吟味を重ねています。
現在、兵庫県産「山田錦」などの酒造好適米とともに使われているのが、地元香川で生まれ育った「オオセト」や「さぬきよいまい」です。とくに、スッキリとしたシャープな味わいとまろやかな芳香が特徴の地元産「オオセト」は、「金陵」ブランドの数多くの商品で使われている良米です。
「金陵」はバラエティー豊かな銘柄
「金陵」は、「子供を育てるが如く、醪、麹の顔を見て、酵母菌の声をきき、手間暇惜しまず吟味して 」醸された、「ふくらみ・まるみ・のびやかさ」のある日本酒です。そのバラエティーに富んだラインナップのなかから、おすすめの商品を紹介します。
【金陵濃藍(こいあい) 純米吟醸 】
西野金陵のルーツ“藍”にちなんで、日本の伝統色でラベルを彩った「NIPPON COLORS」シリーズの1本。香川で生まれた「オオセト」を精米歩合58%まで磨いたもので、さわやかな果実香となめらかな旨味が特徴です。
【金陵千歳緑(ちとせみどり) 特別純米】
こちらも「NIPPON COLORS」シリーズの1本。穏やかでふくよかな香りと、旨味のある心地よい酸味が特徴的な特別純米酒です。「オオセト」の米味を引き出し、コクを感じさせる一方、スッキリとしたのど越しも味わえます。
【特別純米酒 楠神(くすかみ)】
金陵の郷にそびえ立つ酒造りの御神木、樹齢約900年の大楠から採取した「大楠酵母」を使用。落ち着いた果実香と味わいのバランスが絶妙で、刺身をはじめ、和食全般に合うことから、食中酒としてもおすすめです。
【金陵 瀬戸内オリーブ純米吟醸】
香川生まれの「さぬきオリーブ酵母」と「さぬきよいまい」を使用した、地元づくしの純米吟醸酒。「さぬきオリーブ酵母」は、地元産オリーブから抽出した天然酵母で、若いマスカットを思わせるフレーバーが特徴です。
【金陵 琥珀露(こはくつゆ)】
「金陵 純米大吟醸 大瀬戸の花嫁」を新しい膜分離技術を用いて濃縮したお酒です。凝縮された旨味とフレーバーが特徴で、アルコール度数は30度以上31度未満と、通常の2倍近くもあります。少しだけ冷やすか常温で飲むことで、香り、甘味、酸味の調和がたのしめます。また、ロックで飲むと、原酒では感じられなかった味わいを体験できるのでおすすめです。受注生産品。(アルコール度数が酒税法の清酒規定値22度未満を超えるため、分類上、清酒ではなく「雑酒」に分類されます。)
地元産の水や米にこだわって造られる「金陵」は、その昔“讃岐国”と呼ばれた香川の風土が生んだ日本酒です。“讃岐のこんぴら酒”として、多くの人に親しまれてきた「金陵」を味わい、“香川”を感じてみてはいかがでしょうか。
製造元:西野金陵株式会社
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