焼酎のアルコール度数は25度が主流、その理由は? 25度と20度があるのはなぜ?
焼酎のアルコール度数は25度と20度が一般的ですが、九州の一部の地域を除いた広いエリアで数多く流通しているのが25度の商品です。ここでは、25度が主流となった経緯や、いくつかの人気銘柄が25度と20度を展開する理由を探っていきます。
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焼酎のアルコール度数はなぜ25度が多い?
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酒税法にみる焼酎のアルコール度数
焼酎のアルコール度数は、「連続式蒸溜焼酎は36度未満」「単式蒸溜焼酎は45度以下」と酒税法で定められています。連続式蒸溜焼酎とは、酎ハイやサワーのベースに使われる甲類焼酎のこと。単式蒸溜焼酎とは、芋焼酎や麦焼酎、米焼酎に代表される本格焼酎(乙類焼酎)のことを指します。
定義上は、「35度」や「45度」まで度数を上げることが可能ですが、上限に近い焼酎を飲む機会は少ないかもしれません。なぜなら、市場に流通する焼酎の多くは25度や20度で、なかでも広い地域で定番とされているのが25度の焼酎だからです。
焼酎のアルコール度数は、割水によって調整される
蒸溜したての焼酎(原酒)のアルコール度数は、芋焼酎で約37〜40度、麦焼酎や米焼酎で約43〜45度です。通常、蒸溜後の原酒は、「割水(割り水)」によってアルコール調整されます。
焼酎造りにおける割水は、香味のバランスをととのえ、理想の酒質に近づける重要な工程のひとつです。同じ原酒から造られた焼酎でも、アルコール度数によって味わいが変わってきます。そのため、蔵元ごとにこだわり抜いた水を使って、25度の焼酎が造られています。
アルコール度数25度が主流になった経緯
焼酎の度数に25度が多い理由には諸説あります。ここでは2つの説を紹介します。
【旧酒税法説】
よく聞かれるのは、昭和15年(1940年)に制定された旧酒税法に端を発しているという説。
酒税法では、酒類のタイプに応じて1キロリットルあたりの基本税率が規定されていて、基準となるアルコール度数より低いものには、一律同額の税が課せられることになっています。しかし、基準を超える場合は、アルコール度数が1度超えるごとに一定の税額が加算されていきます。
旧酒税法では、この基準が「26度未満」と定められていたため、飲む人がもっとも効率よくたのしめる25度の焼酎が主流になったといわれています。
【密造焼酎対策説】
もうひとつ、よく語られているのが、明治時代に密造焼酎対策として改正された酒税に起因しているという説です。当時の基準は「30度未満」で、この度数を超えない範囲で味わいを追求した結果、25度に辿りつき、その製法が伝統として後世に引き継がれたのではないかといわれています。
同銘柄の焼酎に25度と20度がラインナップされる理由
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20度の焼酎が普及した理由も税率にあった
アルコール度数20度の焼酎の普及にも、酒税法が関わっているといわれています。
戦後の貧しい時代、正規販売されている25度の焼酎が売り上げ不振になるほど密造酒が横行していたため、昭和28年(1953年)に酒税法が改正されます。密造酒の度数は20度ほどのものが多かったことから、対抗措置として基本税率の基準となるアルコール度数が、21度未満に設定されました。基準を超えた分の税額が販売価格に上乗せされることになるため、20度の焼酎が定着したのは必然の帰結といえそうです。
ちなみに、現行の酒税法でもこの基準は変わらず、蒸溜酒類の基本税率は21度未満。20度を1度超えるごとに一定の税額が加算されていきます。
ひとつの銘柄が25度と20度を展開する理由
焼酎のなかには甲類乙類を問わず25度と20度の2種類を展開している銘柄が増えています。おもな理由を紹介しましょう。
ひとつは地域的な流行によるもの。多くの地域では25度の焼酎が主流ですが、焼酎出荷量日本一を誇る宮崎県や麦焼酎ブームを牽引した大分県では、20度の焼酎が多く出回っています。とくに宮崎県では古くから20度の焼酎がよく飲まれてきました。それに合わせて、蔵元やメーカーが、県内向けには20度、県外向けには25度を用意したというわけです。
それから、原料高騰による本格焼酎の値上がりも関係しているといわれています。消費者にとっては、価格が上がると買い控えたくなるもの。そこでメーカーが、25度よりも酒税分を抑えられる20度の商品を投入すれば、手頃な価格におさめられます。そのため、飲む人が手に取りやすいように、20度の焼酎も造られるようになってきたのです。
25度の焼酎と20度の焼酎を飲み分けよう
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焼酎25度か20度か、迷ったらそれぞれの特徴で選ぼう
同じ銘柄でもアルコール度数が5度違うだけで味わいが異なります。25度ではしっかりとした個性をたのしめ、20度では軽やかでマイルドな口当たりをたのしめるでしょう。
また、鹿児島の焼酎を飲むなら25度、宮崎や大分の焼酎を飲むなら20度を選ぶなど、その地域に根付いている焼酎文化に合わせて選ぶのもよいかもしれません。その土地の料理と一緒に味わいたいですね。
もちろん好みにもよりますが、どちらを買うかで迷ったときの参考にしてみてください。
焼酎25度、焼酎20度、飲み比べて魅力を堪能しよう
それぞれの焼酎を用意して、飲み比べてみるのもひとつのたのしみ方。同じ飲み方で、香りや味わいの違いを感じてみてはいかがでしょう。
それから、度数に合わせた飲み方も試してみましょう。しっかりした味わいの25度は、ロックやお湯割り、まろやかな口当たりの20度は、ストレート、またはストレートのまま温めて飲む「燗」もおすすめです。
また、25度の焼酎は、「前割り」という飲み方でもたのしめます。焼酎を6:4や5:5など好みの比率で割水して、常温で一晩から数日ほど寝かせると、焼酎と水がよくなじんでまろやかな味に変化します。ぜひお試しください。
25度と20度の焼酎を飲み分けることで、焼酎のたのしみ方が広がります。たとえば、焼酎ハイボールやサワーを作るとき、25度では濃厚に、20度ではマイルドな味わいに仕上がります。さまざまな飲み方のバリエーションを試してみてくださいね。