日本酒の「生」には大きく3種類あるって知ってた?
日本酒には「生酒」「生貯蔵」「生詰め」など「生」と書かれたお酒がいくつかあります。じつは、これらには少しずつ違いがあります。ちょっぴり紛らわしい「生」の表記とその違いについて、今こそスッキリさせましょう!
- 更新日:
「生」の日本酒ってどういうお酒のこと?
kai keisuke/ Shutterstock.com
「生酒」だけが火入れをしていない日本酒
日本酒のラベルに「生」の文字があっても、全部が同じ製法とは限りません。一般的に、日本酒を醸したあとには、「火入れ」と呼ばれる60度くらいまで温度を上げる加熱処理が2度行われますが、「生」がつく「生酒」「生貯蔵」「生詰め」の3つは、この火入れの回数が通常とは異なります。
「生酒」は、火入れをまったく行わずに瓶詰めされる日本酒で、「生生」「本生」とも呼ばれます。また「生貯蔵」や「生詰め」は、それぞれ違うタイミングで1度だけ火入れをする日本酒のことを指します。
ここで注意したいのが、これらは単に製法の違いであって、搾りたてをたのしめる「生酒」が上位というわけではないということ。「愛飲家にとって選択の幅が広がっている」と考えるのが適切でしょう。
「生」の日本酒の魅力
「生」の日本酒がたのしめるようになったのは、日本酒の歴史からすれば、ごく最近のこと。保管や運送において冷蔵技術が進んでからです。とくに、搾りたて特有のフレッシュ感やシュワシュワとした活性感は、「生酒」ならではの魅力といえるでしょう。
日本酒の製造工程のひとつ「火入れ」には、殺菌のほかに、酵素の働きを止めて味の変化を穏やかにする目的があります。火入れをしていない生酒は、味の変化が速いので、0度以下で保管するなどして熟成を遅らせたり、あえて熟成させてたのしんだりする場合以外は、早めに飲み切ってしまうことをオススメします。
「生酒」はたいてい、多くの蔵元が秋に仕込みを始め、冬から春先ころに市場にお目見えする季節限定のお酒です。できたての旬の味わいを、ぜひたのしんでください。
日本酒の「生詰め」の魅力とは?
flyingv3/ Shutterstock.com
「生詰め」は1度火入れしている日本酒
前述のとおり「生詰め」と呼ばれる日本酒には、もろみを搾り貯蔵する前に、1度だけ加熱処理が施されています。「生」の風合いをできるだけ残すため、通常出荷前に行われる2度目の火入れは行いません。もろみを搾った日本酒に1度火入れを行ったら、あとはタンクや瓶で貯蔵しながら味がのってくるのを待ちます。
「生詰め酒」のうち、冬から春に搾ったお酒を夏の間寝かせて熟成させ、秋口に出荷する日本酒を「ひやおろし」といいます。こちらは、秋の風物詩として親しまれています。
ちなみに「生詰め」という呼び方は、瓶詰め前の火入れを行わずに「生」のまま詰めることに由来します。また“火入れ=2回”が日本酒のスタンダードの製法なので、1度しか火入れを行わないお酒は「半生」ともいわれます。
「生詰め」の日本酒の特徴と魅力
「生詰め」の日本酒には、火入れをしていない「生」の風合いがありながら、味わいにふくらみと厚みのあるタイプが多く見られます。
なかでもゆっくりと寝かされる「ひやおろし」は、やや熟成感があって、なめらかでとろみのある酒質が特徴です。熟成は徐々に進んでいくため、ひやおろしが出始める晩夏と、終わりごろの晩秋では味わいが異なります。違いをたのしむのも一興でしょう。
「生」の状態に近い「生詰め」は、劣化を防ぐためにもなるべく冷蔵保存することをオススメします。
日本酒の「生貯蔵」の魅力とは?
es3n/ Shutterstock.com
「生貯蔵」は出荷直前に火入れする日本酒のこと
「生貯蔵」とは、「生」のまま貯蔵し、出荷前に1度だけ火入れを行うことを指します。そうして造られた「生貯蔵酒」のことを、略して「生貯(なまちょ)」と呼ぶこともあります。
「生貯蔵酒」は、1980年代に「生酒」への注目度が高まるとともに販売量が増加 したお酒です。当時は大容量サイズが主流で、淡くきれいな味わいのものが多かったようです。
「生貯蔵酒」は「生酒」同様、冷やして飲むタイプが主流で、保存は冷蔵が推奨されています。ただし「生貯蔵酒」は火入れが行われているお酒なので、味が変化・劣化しやすい「生酒」よりも管理しやすいといえるでしょう。
「生貯蔵酒」の特徴と魅力
「生貯蔵酒」の魅力は、「生酒」に近いフレッシュさをたのしめること。味わいは爽快でスッキリしたタイプが多く、食中酒に向いています。キリリと冷やした「生貯蔵酒」は、飲み口が軽快で、夏にもピッタリ。
「生貯蔵酒」は常温保存できるものもありますが、やはり冷蔵がオススメです。近年は300ミリリットルなどの飲み切りサイズが増えているので、冷蔵庫でも保管しやすいでしょう。
また「生貯蔵酒」は、火入れのタイミングが異なる「生詰め酒」とも違った趣を見せます。味わいの違いを確認するのもたのしいですよ。
日本酒の「生」の表示について、スッキリ整理できたでしょうか。「生」にも「火入れ」にもそれぞれによさがあるので、同じ銘柄で飲み比べて違いを探ってみてはいかがでしょう。特徴をつかんで、ぜひ「生」の日本酒ライフをたのしんでください。