「酒類総合研究所」とは何を研究するところ? 【日本酒用語集】
「酒類(しゅるい)総合研究所」という国の機関があるのを知っていますか? 酒好きならずとも、何を研究しているか興味をかきたてられそうな名前です。酒類総合研究所という名のとおり、日本酒に限らず、お酒全般に関する研究を行う、この機関の正体に迫ってみましょう。
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「酒類総合研究所」は日本で唯一、酒に関する国の研究機関
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酒類総合研究所はどんな機関なのか?
「酒類総合研究所(略称:酒総研)」は、財務省国税庁の管轄下にある独立行政法人として、日本酒など酒類全般に関する研究活動を行っています。
その目的は、「独立行政法人酒類総合研究所法」において、大きく次の3つが定められています。
(1)酒税の適正かつ公平な賦課の実現を図ること
(2)酒類業の健全な発達を図ること
(3)酒類に対する国民の認識を高めること
酒類総合研究所の歴史は110年以上!
酒類総合研究所の前身である「大蔵省醸造試験所」が設立されたのは、今から110年以上もさかのぼる明治37年(1904年)のこと。古くからの技術に頼りがちな酒造りを進化・発展させるべく、醸造技術を科学的に研究する国立研究機関として、東京都北区の滝野川に誕生しました。
戦後は国税庁の所轄となり、1995年には広島県東広島市に移転し、名称も「醸造研究所」に改称。さらに2001年に独立行政法人酒類総合研究所として新たなスタートを切りました。
広島に移転後も、東京事務所としての機能が滝野川に残っていましたが、2015年に廃止・統合されています。
「酒類総合研究所」が日本の酒造り技術を支える
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酒類総合研究所が牽引する酒造り技術の進化
酒類総合研究所が創設以来、一貫して取り組んできたのは、酒造りを科学的に分析・研究し、技術の向上を図ること。近代的な醸造技術や評価技術などの研究・開発を進め、その成果を酒造現場に提供するとともに、蔵元との共同研究や試験醸造の受託などを通じて、日本の酒造りを支えてきました。
なかでも注目すべきが、酵母や麹菌など微生物の分野における研究です。優良酵母の開発や麹菌のゲノム解析などを通じて、酒造りの進化に寄与するとともに、世界をリードする日本のバイオテクノロジーの発展にも大きく貢献しています。
酒類総合研究所による技術者・研究者の育成
酒類総合研究所酒では、日本の伝統文化である日本酒をはじめ、酒造業を継承・発展させていくため、技術者や研究者の養成にも力を入れています。
酒類の製造業者や流通業者向けに、酒類の製造に必要な知識や技術の習得を目的とした講習を実施するほか、研究成果を発表する講演会なども開催。さらに、外部から研究生を受け入れる研修制度を整備し、次代の酒造りを担う技術者・研究者を育成しています。
「酒類総合研究所」の幅広い取り組み
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酒類総合研究所が運営する「鑑評会」
酒類総合研究所の役割のひとつに酒類の品質評価があり、その一環として毎年、春に「全国新酒鑑評会」を開催しています。
全国新酒鑑評会は、酒類総合研究所の前身である醸造試験所が明治44年(1911年)に開始したもので、全国規模で新酒の品質を調査・研究することで、日本酒の品質向上に資することを目的としています。
酒類総合研究所は、ほかにも「洋酒・果実酒鑑評会」や「本格焼酎・泡盛鑑評会」を主催するなど、日本酒だけでなく酒造り全般の技術向上を支えています。
「全国新酒鑑評会」の役割とは? 【日本酒用語集】
日本酒を世界へ広める取り組み
酒類総合研究所では、日本酒人気が世界に広がるなか、その後押しとなる取り組みを行っています。
国内向けには、日本酒を輸出したい酒造業者を支援すべく、輸出先の法制度に合わせた酒類の分析を受託するほか、海外向けラベルの作成用に12カ国語での日本酒用語辞典の作成・頒布を行っています。
国外向けには、英語、中国語、韓国語で日本酒を紹介するリーフレットを作成・公開するほか、ワインにおけるソムリエのような存在となる「日本酒インストラクター」の養成を支援しています。
酒類総合研究所は一般消費者への啓発も
酒類総合研究所は、酒類に対する国民の認識を高める役割も担っていて、酒類の製造業者や流通業者向けの取り組みだけでなく、一般消費者向けのセミナーやイベントなどに協力。研究所の取り組みや酒類に関する情報を幅広く発信しています。
また、研究所のホームページでは、お酒に関するQ&Aコーナーなども公開されていますので、一度見てみてはいかがでしょうか。
独立行政法人酒類総合研究所
酒類総合研究所の取り組みは非常に幅広く、今回、紹介したのは、ほんの一部でしかありません。ホームページでは、その活動の全容や、興味深い研究トピックスなどが公開されているので、お酒に詳しくなりたいという人は必見です。