「新酒鑑評会」とは? 「金賞」に選ばれるのはどんなお酒?

「新酒鑑評会」とは? 「金賞」に選ばれるのはどんなお酒?
出典 : shige hattori / PIXTA(ピクスタ)

「新酒鑑評会」とは、新酒のコンクールのことです。今回は、全国新酒鑑評会の概要、鑑評会と品評会の違い、全国新酒鑑評会の歴史や目的、審査の方法や審査員、受賞酒の傾向、出品酒は飲めるかどうか、全国新酒鑑評会以外の鑑評会や品評会などについて紹介します。

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「新酒鑑評会」の概要からみていきましょう。

「新酒鑑評会」とは?

新酒鑑評会の概要

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「新酒鑑評会」とはどんなものなのでしょう。「鑑評会」と「品評会」の違いもみていきます。

「新酒鑑評会」とは? 日本酒の製造技術の向上をめざす鑑評会

「新酒鑑評(かんぴょう)会」とは、日本酒の新酒のコンクールのことです。

現在、「新酒鑑評会」という名称で開かれている鑑評会は、独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催する「全国新酒鑑評会」と、北海道から熊本まで、全国で11の各国税局管内で製造された日本酒(清酒)などの品質評価などを行う、「各国税局における新酒鑑評会」(沖縄は国税事務所で、泡盛鑑評会)がありますが、この記事では、おもに「全国新酒鑑評会」について紹介します。

ところで「鑑評会」とは、どのようなコンクールなのでしょうか。よく似た言葉に「品評会」があります。両者の違いを確認していきましょう。

「鑑評会」とは、「酒を鑑定、評価する会」という意味を持つ造語。公的機関によって、酒類製造者の技術力の向上の一助になることを目的に行われます。したがって、「金賞」「入賞」などの賞は出品酒そのものではなく,出品者の技術力に対して授与されるものと考えられています。

一方、酒類の「品評会」は、需要の振興を目的とする傾向が強く、多くの場合、出品酒そのものに対して賞が与えられます。

全国新酒鑑評会の歴史

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「全国新酒鑑評会」は明治時代から続く歴史ある鑑評会

明治時代の日本では、酒税が国の主要財源だったことから、酒造業が推奨されていました。良酒を造って消費量を増やすため、日本酒を研究する国の機関である醸造試験場も設立されました。

明治22年(1889年)以降は、酒造産業の振興を目的とする地域単位の日本酒品評会が開かれるようになり、全国規模では明治40年(1907年)から、日本醸造協会主催の「全国品評会」が隔年で開催されるようになりました。

「全国新酒監評会」が始まったのは、明治44年(1911年)のことです。当初は「全国鑑評会」という名称で、大蔵省(現在の財務省および金融庁ほか)の醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)によって開催されました。

「全国鑑評会」は、日本酒の酒質の動向を知り、出荷時の酒質を予測するために開かれることになったもの。日本醸造協会主催の「全国品評会」や後継の品評会が姿を消していくなか、数度の名称変更を経つつ、全国規模の新酒コンクールとして歴史を刻んできました。

なお出品形式については、各地の税務監督局が代表酒を選び、その製造者に出品を勧めるという当初の方法が、昭和55年(1980年)以降、各地の国税局ごとに出品数の制限をかけた予選のような形となり、現在はその制限も取り払われた任意出品の形式となっています。

現在の全国新酒鑑評会の目的

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現在の「全国新酒鑑評会」の目的は?

独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催で行われている、現在の「全国新酒鑑評会」の目的は次のとおりです。

新酒を全国的に調査研究することにより、製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、もって清酒の品質向上に資すること

出典 独立行政法人 酒類総合研究所

ちなみに、直近で開催された「令和4酒造年度 全国新酒鑑評会」は、全国規模で行われる唯一の日本酒(清酒)鑑評会として、令和5年(2023年)の4月に予審、5月に決審を実施。818点が出品され、394点が入賞。そのうちとくに優れた218点が金賞を受賞しています。

「全国新酒鑑評会」の金賞や入賞はどうやって決まる?

全国新酒鑑評会の審査方法

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「全国新酒鑑評会」の審査方法を、出品者の資格や出品酒の規定からチェックしていきましょう。

「全国新酒鑑評会」の審査方法とは? 審査員はどんな人が務めるの?

「全国新酒鑑評会」の審査方法は、予審と決審で異なります。

「全国新酒鑑評会」の規定は、長い歴史のなかでしばしば変わっているので、「令和4酒造年度 全国新酒鑑評会」を例にみていきましょう。

まず、出品者の資格と出品酒の規格を確認します。

出品者は、清酒の製造免許を受けている製造場(蔵元や酒造メーカーなど)に限られ、条件を満たした製造施設(蔵)ごとに出品することができます。

出品酒については、令和4酒造年度内に製造された酸度0.8以上の吟醸酒の原酒1点の出品が可能。共同製造した清酒も、もろもろの条件に合致していれば出品が認められます。

次に、審査の方法をみていきます。

予審では、「香味の品質及び総合評価(5点法)並びに特徴的な香味について」の評価が行われます。

予審用の審査カードには、「香り」については「香り品質」「華やか」「吟醸香 芳香」などの8項目、「味」については「味品質」「濃淡」「あと味 軽快さ」など6項目の審査項目があり、特記事項を記入できる「その他」欄も設けられています。

それらの審査を踏まえて、「すばらしい」から「難点あり」まで5段階で「総合評価」を行うという方法です。

予審を通過した出品酒は、決審に進みます。

決審では、「総合評価(3点法)について」の評価が行われます。出品酒の「香味の調和や特徴が吟醸酒の品格及び飲用特性から」みてどうかが問われ、総合評価「1」は「特に良好」、「2」は「良好」、「3」は「1及び2以外のもの」となっています。

決審用の審査カードには、1・2・3のほかに「入賞外」という選択肢があり、入賞外とした理由を記載する欄も設けられています。

審査の結果、金賞を受賞した製造場には賞状が贈られるほか、すべての出品酒について詳細な評価結果がフィードバックされ、その後の酒造りに活用されます。

なお審査委員も、予審と決審で異なります。メンバーに名を連ねているのは、酒造会社の杜氏や酒造組合の代表者、独立行政法人酒類総合研究所の研究者や全国各地の産業技術センターなどの酒造技術担当者、国税局や国税庁の鑑定官ら、日本酒や日本酒造りのプロたちです。

全国新酒鑑評会の受賞酒の傾向

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「全国新酒鑑評会」の金賞酒や入賞酒の傾向は?

「全国新酒鑑評会」で金賞を受賞したり入賞したりするお酒の傾向を表しているのが「YK35」という言葉で、以下のような意味があります。

◇Y:酒造好適米「山田錦」の頭文字
◇K:「9号酵母(または9号酵母の元株である「熊本酵母〈香露 酵母〉」)」の頭文字
◇35:精米歩合35パーセント


つまり、酒造好適米の代表格である「山田錦」を、精米歩合35パーセントまで磨き、華やかな吟醸香(ぎんじょうか) をもたらす「きょうかい9号酵母」 で醸した出品酒が、全国新酒鑑評会で評価されやすいと、まことしやかにいわれていたのです。

しかし近年では、原料や酒質について、多様化の傾向が強まっているといわれています。

たとえば原料米では、平成19酒造年度などですでに、「山田錦」以外の米を使った出品酒の金賞率が「山田錦」を使った出品酒の金賞率を上回る など、多様化の傾向が現れています。

また直近の令和4酒造年度では、以前はとくに評価が高かったリンゴ様の華やかな香りを生む成分「カプロン酸エチル」が高濃度のもの より、香味の調和が取れているお酒が評価される傾向がみられ、バナナを想わせる「酢酸イソミアル」が生む香りを持つ出品酒も評価される など、審査の傾向も変化し、多様性がより高まっていることがうかがえます。

全国新酒鑑評会の出品酒は飲めるの?

市販されているものもある全国新酒鑑評会の出品酒

「全国新酒鑑評会」の出品酒は一般に、原料を吟味し酒造技術の粋を集めて小仕込みで造られるもので、かつてはほとんど販売されなかったといわれています。

しかし現在は、醪(もろみ)も製法も出品酒とすっかり同じものや、醪は同じで搾りのみ機械で行ったものなどが、「出品酒」や「金賞受賞酒」と銘打たれて販売されるようになりました。

いずれも、販売数量が少ない限定酒であることが多く、高価かつ入手困難な場合もあります。「飲みたい」と思った出品酒があったら、こまめに情報を集めて、販売開始から間を置かず購入を検討してみてくださいね。

良酒の基準はひとつじゃない! 「全国新酒鑑評会」以外の鑑評会や品評会

全国新酒鑑評会以外の鑑評会や品評会

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鑑評会は「全国新酒鑑評会」だけではありません。

上述の各「国税局における新酒鑑評会」など、全国の国税局が行う鑑評会では、その地域の地酒としての個性が加味されることもあるようです。そのため、入賞酒が「全国新酒鑑評会」では金賞を取れなかったり、その逆もあったりします。

杜氏組合が主催する鑑評会は、蔵元の所在地と関係なく、同じ組合に所属する杜氏たちがそれぞれ造ったお酒を持ち寄って行われるもの。見知っている職人同士が、酒造りの腕を競い合う場となっています。

現在では、市販酒のみを対象とする「SAKE COMPETITION(サケ・コンペティション)」、フランスで開催されるフランス人のための日本酒コンクール「Kura Master(クラマスター)」、イギリスで開かれる世界的なワインの審査会「International Wine Challenge(インターナショナル・ワイン・チャレンジ/IWC)」のSAKE部門など、特徴のある日本酒品評会が、国内外問わず数多く行われています。

全国新酒鑑評会にも、そのほかの鑑評会や品評会にも、それぞれに良酒の基準があります。ぜひ受賞酒を味わって、さまざまなおいしさを堪能しましょう。

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