「寫樂(しゃらく)」は“幻の酒”と呼ばれる、会津若松を代表する日本酒

「寫樂(しゃらく)」は“幻の酒”と呼ばれる、会津若松を代表する日本酒
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「寫樂(しゃらく)」は会津若松を代表する蔵元、宮泉銘醸が製造する日本酒。その品質の高さで全国の地酒ファンの人気を集め、入手困難なことから“幻の酒”とも呼ばれる逸品です。ここでは、そんな「寫樂」の魅力の背景を探ってみました。

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「寫樂」を生んだ会津の酒蔵、宮泉銘醸

「寫樂」を生んだ会津の酒蔵、宮泉銘醸

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「寫樂(しゃらく)」は、漢字が難しいので「写楽」と記載される場合もありますが、その蔵元、宮泉銘醸(みやいずみめいじょう)は、福島県会津若松市のシンボル、鶴ヶ城のすぐ近くで、昭和30年(1955年)に創業しました。
数百年の歴史をもつ酒蔵も少なくないなか、戦後の創業といえば歴史が浅いように思われるかもしれませんが、それは誤解というもの。宮泉銘醸は、享保3年(1718年)創業という会津若松でも指折りの老舗蔵、花春酒造から分家独立した蔵元であり、会社としての歴史は短くとも、300年にわたる酒造り歴史が受け継がれているのです。

会津若松といえば、日本人にとっては幕末の「白虎隊」で知られており、現在は観光地としても有名ですが、東北有数の酒処でもあります。
その理由として、まず挙げられるのが、日本酒造りに適した気候風土です。四方を山々に囲まれた会津盆地は、大小多くの河川に恵まれており、日本酒造りに不可欠な清水をふんだんに得ることができます。
また季節ごとの寒暖差が大きいことも、日本酒造りの大切な条件。日本酒を仕込む冬場は寒冷で雑菌が少なく、熟成させる夏から秋にはかけては一定の暑さが必要とされましたが、盆地の気候はこの条件にぴったり当てはまります。

こうした風土に加え、会津若松は鶴ヶ城の城下町として早くから栄えており、日本酒の消費地としても東北有数。それゆえ、江戸時代の初期からこの地に多くの酒蔵が建ち、競い合うように酒造りの技術を磨いてきた歴史があります。
「寫樂」の蔵元、宮泉銘醸は、そんな酒処、会津若松を代表する酒蔵のひとつとして、近年、全国的な注目を集めています。

「寫樂」は、一度は途絶えかけた歴史をつないで甦った酒

「寫樂」は、一度は途絶えかけた歴史をつないで甦った酒

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「寫樂」は、現在では会津若松はもちろん、東北地方を代表する地酒のひとつとして、全国的な人気を集めています。
当然ながら、蔵元の宮泉銘醸にとっては看板銘柄ですが、じつは「寫樂」を造り始めたのはここ10数年のこと。それ以前は蔵元の名を冠した「會津宮泉」という銘柄が主力でした。

もともと「寫樂」という銘柄は、宮泉銘醸と同じく花春酒造から分家した会津若松の蔵元、東山酒造のものでした。東洲斎写楽の浮世絵が描かれたラベルが印象的な日本酒で、会津の人々から人気を集めていたのだとか。ところが、東山酒造は2009年に惜しまれながらも廃業することに。そこで、起源を同じくする宮泉銘醸が「寫樂」の銘柄を引き継ぐことになったのです。

宮泉銘醸は、地元で愛されてきた「寫樂」という銘柄を、全国に通用する銘柄へと成長させるべく、培ってきた酒造りのノウハウを注いでリニューアルさせました。
その結果、一時はその歴史を終えかけていた「寫樂」が、全国区の人気を誇る日本酒へと成長。現在、「寫樂」は「會津宮泉」そして「玄武」とともに、宮泉銘醸の3本柱として、全国の地酒ファンをたのしませています。

「寫樂」の魅力は、名水とこだわりの米が育んだ味わい

「寫樂」の魅力は、名水とこだわりの米が育んだ味わい

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「寫樂」は、原料となる米、水、製法など、さまざまな面にこだわりぬいて造られた日本酒です。なかでも特徴的なのが「名水」と「純米造り」へのこだわりです。

そもそも「宮泉」という蔵名は、酒蔵にある井戸の水質が、酒造りに最適といわれる灘の「宮水」に近いことから名づけられたもの。日本有数の名水の地として知られる会津でも、とくに良質な水に恵まれたことが、「寫樂」の酒質を支えているのです。

質のよい水に恵まれた土地には、質のよい米が育つといわれるように、会津は良質な米が育つ米処でもあります。
宮泉銘醸では、日本酒の品質を大きく左右する米の品質を何よりも重視し、「五百万石」や「山田錦」「雄町米」「夢の香」といった酒造好適米を、地元の契約農家とともに栽培しています。
一方で、地元産だけではなく、兵庫県や岡山県など、国内各地で栽培される、それぞれの気候風土に応じた酒造好適米も使用。
これらを銘柄によって使い分けることで、さまざまな個性をもった日本酒を提供しています。

「寫樂」は、大地の恵みである米と水を用いて、酒造りに適した風土のもとでていねいに醸すことで、原料の旨味を徹底して引き出し、誰もがたのしめる上品でふくよかな味わいを実現しているのです。

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