「フロアモルティング」が“スコッチの伝統の証”と呼ばれる理由は? 【ウイスキー用語集】

「フロアモルティング」が“スコッチの伝統の証”と呼ばれる理由は? 【ウイスキー用語集】
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「フロアモルティング」とは、ウイスキーの製造工程のひとつ「モルティング(製麦)」における伝統的な手法です。ウイスキーマニアには有名なこの手法は、果たしてどのようなものか、その歴史ともに紐といていきましょう。

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「フロアモルティング」はスコッチウイスキーの伝統的な製麦方法

「フロアモルティング」はスコッチウイスキーの伝統的な製麦方法

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「フロアモルティング」の「モルティング」とは?

「フロアモルティング」とは、ウイスキー造りの重要な工程である「モルティング」における手法のひとつ。では「モルティング」とは何か、まずはウイスキーの製造工程をおさらいしましょう。
ごく単純に言うと、まずは原料となる穀物に含まれるデンプン質から糖類を作り(糖化)、酵母の力でアルコール発酵させます。これを蒸溜してアルコール濃度を高めたうえで、樽で熟成させれば完成です。
モルトウイスキーの場合、原料となるのは大麦の麦芽(モルト)。大麦のままでは糖化できませんが、発芽させて麦芽にすることで、糖化酵素が活性化します。この大麦を発芽させる工程を「モルティング(製麦)」と呼びます。

「フロアモルティング」とはフロア(床)で行うモルティング

「フロアモルティング」とは、文字どおり「モルティング」を「フロア(床)」で行うこと。その一般的なプロセスは、以下のようなものです。
まず、大麦を仕込み水に数日間浸し、しっかりと水を含ませます。水を含んだ大麦を床一面に広げ、空気に触れさせることで発芽を促します。発芽が均一になるよう、また発芽した根っこ同士がからまらないよう、「モルトマン」と呼ばれる職人が時折シャベルで撹拌します。
数日かけて発芽させた大麦麦芽は、ウイスキー造りに最適な状態で成長を止めるため、キルン(麦芽乾燥棟)で乾燥させ、発酵の時を待つことになります。

「フロアモルティング」を行う蒸溜所が少なくなっている理由

「フロアモルティング」を行う蒸溜所が少なくなっている理由

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「フロアモルティング」は過去のものに?

フロアモルティグは、モルトウイスキーの本場・スコットランドで古くから行われてきた伝統的な手法です。かつては、どのウイスキー蒸溜所でも、フロアモルティングを行う製麦施設を設け、専門のモルトマンを雇用していました。
しかし、モルティングは熟練の技術を要するとともに、重労働でもあり、生産性が高いとは言えません。また、広い施設も要することから、ウイスキー造りの近代化とともに、少しずつ姿を消していきました。

「フロアモルティング」から「モダンモルティング」へ

フロアモルティングに代わって、現在、主流となっているのが、機械化された「モダンモルティング」。回転する巨大円筒で発芽させる「ドラム式」、床下から空気を送って撹拌する「サラディン式」、大麦の浸水から発芽、撹拌、乾燥までをひとつの建屋内で行う「タワー式」など、さまざまな方式があります。
こうした大型施設を持った製麦専門業者「モルトスター」に委託するのが、近年のウイスキー造りのスタイル。蒸溜所自らがフロアモルティングを行うという伝統的なスタイルを守り続けているのは、現在では少数派となっています。

「フロアモルティング」で造られる代表的なウイスキー「ボウモア」

「フロアモルティング」で造られる代表的なウイスキー「ボウモア」

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フロアモルティングの伝統を守り続ける「ボウモア蒸溜所」

フロアモルティングの伝統を守り続ける蒸溜所は、今やスコッチでも数えるほどしかありません。なかでも有名なのが、「スコッチの聖地」とも呼ばれるアイラ島で最古の蒸溜所、ボウモア蒸溜所です。
1779年創業という歴史と伝統を誇り、イギリス王室とも縁が深いことから「アイラの女王」と称えられる存在ですが、そのモルトウイスキーの品質を支えているのがフロアモルティングです。

フロアモルティングで造る「ボウモア」の味わいは?

ボウモア蒸溜所が、今もかたくなにフロアモルティングを続けているのは、独自の麦芽造りにこだわるため。手間ひまかけて、じっくりと発芽させた麦芽を、潮風がたっぷりと浸み込んだピート(泥炭)を炊いて乾燥させることで、独特のスモーキーなフレーバー「ピート香」がもたらされます。
潮の香り漂う上品な味わいは、ボウモア蒸溜所のシングルモルト「ボウモア」ならではの魅力であり、その個性を守り続けるために、フロアモルティングにこだわり続けているのです。

「ボウモア」がスコッチの聖地、アイラの女王と称される理由

「フロアモルティング」という伝統手法が維持されている背景には、日本酒造りにおける「自家精米」や「手作業での麹造り」「生酛(きもと)造り」などと共通する考え方があるようにも思えます。洋の東西を問わず、お酒造りには伝統的な文化や技法を継承するという役割があるようですね。

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