「トリスバー」が日本のウイスキー史に残した足跡を振り返る

「トリスバー」が日本のウイスキー史に残した足跡を振り返る
出典 : Kondor83/ Shutterstock.com

「トリスバー」とは、その名のとおり「トリスハイボール」でお馴染みのウイスキー「トリス」をメインにした酒場のこと。1950~60年代にサラリーマンたちの憩いの場として愛され、社会現象ともなったトリスバーの歴史と魅力を紹介します。

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「トリスバー」はトリスハイボール主体の“庶民のバー”

「トリスバー」はトリスハイボール主体の“庶民のバー”

出典:サントリーサイト

「トリスバー」は60年代サラリーマンが集う社交場

「トリスバー」は、日本が戦後の復興を果たし、高度経済成長を遂げつつあった1950年代、仕事帰りのサラリーマンたちが気軽に立ち寄れる酒場として、全国の盛り場に登場しました。
「トリスバー」でたのしめるのは、サントリーが“庶民のウイスキー”として開発した銘柄「トリス」。まだ高級品のイメージが強かったウイスキーを、炭酸水で割った「ハイボール」で飲むことを提案するなど、日本にウイスキー文化を浸透させるうえで大きな役割を果たしました。

「トリスバー」は今もなお、レトロな老舗バーとして健在!

「トリスバー」は、手頃な値段でたのしめる庶民の酒場として人気を博し、ピーク時の1960年代には全国で2千軒を数えるほどでした。
その後、お酒や酒場の多様化を背景に、「トリスバー」は次第に減少。もはや、お父さんたちの記憶にしか残っていないと思われるかもしれませんが、ロングセラー銘柄「トリス」とともに、今も何軒かの「トリスバー」は健在です。
「ちょっぴり洋風」という当時のコンセプトは、今では貴重な「昭和レトロ」な雰囲気がたのしめる空間として、かつてを懐かしむ年配世代はもちろん、若者からも注目を集めています。

「トリスバー」を生んだサントリー2代目社長の戦略

「トリスバー」を生んだサントリー2代目社長の戦略

出典:サントリーサイト

「トリスバー」で日本にウイスキー文化を根づかせたい!

「トリスバー」の生みの親は、サントリーの創業者である鳥井信治郎氏の次男で、2代目社長(当時の社名は「寿屋」)を務めた佐治敬三氏です。
佐治氏は、国産ウイスキーの発展に情熱を注いだ父の跡を受け、ウイスキーの普及に尽力。サラリーマン層をターゲットに、おいしいウイスキーを低価格で提供する「トリスバー」を全国の盛り場に展開し、第一次洋酒ブームを牽引しました。
「トリスバー」は、今も続く人気キャラクター「アンクルトリス」や、PR誌「洋酒天国」などとともに、日本にウイスキーをたのしむ文化を広く浸透させたのです。

「トリスバー」の魅力は、お洒落さと居心地のよさ、そして安価でおいしいウイスキー

「トリスバー」の基本的なスタイルは、カウンターの前に「止まり木」と呼ばれる腰掛けが並び、バーテンと客が気軽な会話を交わしながら、安価で上質なウイスキーをたのしむというもの。
さほど広くない店内をダウンライト照明が照らし、おつまみも軽いものだけでしたが、これまでの酒場になかった雰囲気は、西洋文化に憧れる当時のサラリーマンたちに癒しと活力を与え、日本の経済成長を陰から支えてきたとも言えるでしょう。

「トリスバー」を象徴する「トリス」とはどんなウイスキー?

「トリスバー」を象徴する「トリス」とはどんなウイスキー?

出典:サントリーサイト

「トリスバー」の定番ウイスキー、トリスの魅力

「トリスバー」の主役は、「トリハイ」の愛称で親しまれた「トリス」のハイボール。
戦後間もない昭和21年(1946年)に誕生した「トリス」は、深刻なモノ不足のなかで、「安くてもしっかりした品質のウイスキーを飲んでもらいたい」という想いから開発された銘柄です。
その後も、時代の変化に合わせてリニューアルを重ね、現在も広く愛されるロングセラーです。

「トリスバー」の歴史をしのびつつ、「トリスハイボール」を味わおう!

「トリスバー」で提案されたハイボールは、アルコール度数の高いウイスキーを気軽にたのしめる飲み方として、当時のサラリーマンたちに絶大な人気を博しました。
近年のハイボール人気を受けて、伝統の「トリハイ」をたのしめる缶入り飲料「トリスハイボール」も発売されています。
若者同士でたのしむのもよいですが、時には、かつて「トリスバー」に親しんだお父さん世代とともに、「トリスハイボール」を酌み交わしてみてはいかがでしょう?

高度成長期のサラリーマンを支えた「トリスバー」は、数こそ少なくなったものの、今も「トリス」とともにウイスキーを愛する人々の訪れを待っています。機会があれば、昭和レトロな雰囲気をたのしんでみましょう。

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