日本酒を熱燗(あつかん)で飲もう! レンジでできる作り方やおすすめ銘柄も紹介
日本酒を50度前後に温めたものを「熱燗」といいます。今回は、熱燗の定義、味わいや香りの特徴、湯煎やレンジでの燗酒の作り方、燗酒に向く日本酒の種類や、冷酒向きの日本酒を温め飲んでも大丈夫かどうか、燗酒にするとおいしい日本酒銘柄などを紹介します。
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熱燗とはどんな飲み方なのか、まずはそこから確認していきましょう。
日本酒の熱燗ってどんな飲み方? その味わいや香りは?
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日本酒の「熱燗」の読み方は「あつかん」です。
「熱燗」とは、温めたお酒「燗酒(かんざけ)」のうち、50度前後に温めたものを指す言葉です。
一方、世間一般には、燗酒全般を「熱燗」と呼ぶこともあります。
この記事では、日本酒の燗酒全般について取り上げます。
日本酒は温度帯によって味わいが変わるお酒で、温めて燗酒にしたり、冷やして冷酒にしたり、常温で飲んだりと、さまざまな飲み方がたのしめます。
一般に、日本酒を温めると、飲み口や味わいにまろやかさやふくよかさが感じられたり、原料である米の香りがより感じられたりします。
また、温度が高くなるにつれ辛口に感じられるといった傾向もあります。
その一方、華やかな香りや清涼感が損なわれたり、温めすぎて味わいのバランスが崩れたりといったデメリットもあるため、日本酒を燗酒にする際には、蔵元や特約酒販店などが発信しているおすすめの温度帯を事前にチェックするとよいでしょう。
日本酒の熱燗の作り方
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日本酒の熱燗の作り方をチェックしていきます。
鍋・やかんを使うおいしい熱燗の作り方
鍋・やかんを使って、湯煎(ゆせん)でお酒を温めると、まろやかな飲み口に仕上がりやすいといわれています。作り方をみていきましょう。
<作り方>
1. 徳利(とっくり)に、9分目までを目安にお酒を入れます。香り成分が飛ぶのを防ぎたいときは、注ぎ口にラップをかけましょう。
2. 鍋またはやかんに徳利を入れ、徳利の首まで浸かるよう水を注ぎます。
3. いったん徳利を取り出してから加熱し、お湯を沸かします。
4. 湯温が80度くらいになるよう、沸騰する直前で火を止めてから徳利を入れ、火を止めたまま湯煎で徳利を温めます。
<ポイント>
◇温める時間は2~3分を目安に。
◇アルコールは加熱すると膨張するため、注いだお酒が徳利の縁まで上がってきたら徳利を上げて底の温度を確認しましょう。素材や厚みによっても変わってきますが、一般にやや熱いと感じたら、45度前後の「上燗(じょうかん)」といわれています。50度前後の「熱燗」にする場合にはもう少し温めます。
燗酒専用の酒燗計(しゅかんけい)など、温度計で測りながら温めてもよいでしょう。
湯煎で燗をつけるときに使われるポピュラーな酒器「ちろり」については、以下の記事をご参照ください。
なお、「酒燗器(しゅかんき / さけかんきと呼ぶこ とも)」や「燗銅壺(かんどうこ)」といった燗酒用の道具もあります。湯煎で温めるもの以外に電気を使うものなどさまざまな種類があるので、機会があればチェックしてみてくださいね。
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レンジを使うおいしい熱燗の作り方
電子レンジを使い、加熱ムラに気をつけながら手軽に燗酒を作りましょう。
<作り方>
1. 徳利に、9分目までを目安にお酒を入れます。香りが飛ぶのを防いだり、加熱ムラをなくしたりするため、注ぎ口にラップをかける場合には、電子レンジOKのラップを使いましょう。
2. 徳利の上と下で加熱ムラが出ることから、20秒程度電子レンジで加熱したら、いったん徳利を取り出し、ゆっくりと振って、なかのお酒の温度を均一にします。
3. 徳利を庫内に戻し、さらに少しずつ加熱して、お好みの温度になったらできあがりです。
<ポイント>
◇温め時間は機種によっても違いが出ますが、1合(180ミリリットル)のお酒を500Wの電子レンジで50度前後の「熱燗」にする場合、トータル60秒ほどを一応の目安として調整するとよいでしょう。
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ほかにもある! おいしい熱燗の作り方
湯煎・電子レンジ以外のお酒の温め方としては、以下のような方法もあります。
◇鳩徳利(はととっくり)
囲炉裏の熱くなっている灰のなかに、「鳩徳利」と呼ばれる鳩の形をした酒器を差して温める方法。炭火の遠赤外線効果で、まろやかな仕上がりになるといわれています。
◇蒸し燗
湯を少し張った蒸籠(せいろ)のなかに徳利を置き、蒸気で加熱する方法。飲み口がスムーズになるといわれていますが、温度をコントロールしにくいというデメリットもあります。
◇直火燗
鍋ややかんにお酒をじかに注ぎ、そのまま加熱する方法。湯煎よりも早くできあがる一方で、アルコールが揮発しやすい、温度のコントロールがしにくいといったデメリットがあります。
日本酒を熱燗で飲むなら純米酒って本当?
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商品ごとの特性にもよりますが、一般に、燗酒にするとおいしいといわれているのは、濃醇でコクのあるタイプの日本酒です。なかでも純米酒は、温めると米の旨味と甘味がより感じられ、いっそうおいしく飲めるといわれています。
しかし、温めるとおいしい日本酒は純米酒だけに限りません。
たとえば、本醸造酒や普通酒は、さまざまな温度帯の燗酒がたのしめる日本酒とされています。
なかでも本醸造酒の多くは、45度前後の「上燗」や50度前後の「熱燗」で飲むと、引き締まった香りと味わいを堪能することができます。ぜひ試してみてくださいね。
冷酒向きの日本酒を熱燗で飲んでも大丈夫?
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冷酒向きとされる日本酒でも、絶対に燗酒にしてはいけないということはありません。
とりわけ、冷酒で飲むことが多い吟醸酒・大吟醸酒クラスの日本酒は、温めて飲むと、冷酒で飲んだときとひと味違う味わいがたのしめることもあります。
ポイントは熱くしすぎないこと。
温度が高くなると、吟醸酒系の日本酒の特長である華やかな香りや繊細な味わいが感じにくくなるので、吟醸酒なら40度前後の「ぬる燗」、大吟醸酒なら35度前後の「人肌燗(ひとはだかん)」くらいまでにとどめておくのがおすすめです。
冷酒・常温・燗酒と、日本酒はさまざまな温度帯で多様な味わいがたのしめるお酒です。それを裏づけるように、冷酒・燗酒とも温度帯ごとに呼び名が変わり、味わいも変わってきます。
「熱燗」をはじめ、燗酒の各温度帯の呼び名や特徴については、こちらの記事を参照してみてくださいね。
熱燗にぴったりなおすすめ日本酒銘柄を紹介
燗酒で飲むのがおすすめの日本酒を紹介します。
「麒麟山(きりんざん) 伝統辛口」(新潟県/麒麟山酒造)
出典:麒麟山酒造株式会社サイト
蔵元の原点にして代表銘柄である淡麗×辛口のお酒。「デンカラ」の愛称で知られ、キレのよさと飲み飽きしない味わいが人気の1本です。「熱燗」よりも熱い55度程度の「飛びきり燗」をはじめ、冷やして飲んでも常温で飲んでもたのしめます。
製造元:麒麟山酒造株式会社
公式サイトはこちら
「蓬莱(ほうらい) 蔵元の隠し酒・番外品」(岐阜県/渡辺酒造店)
出典:有限会社渡辺酒造店サイト
地元・飛騨で生まれた酒造好適米「ひだほまれ」の旨味と甘味がふくらむ辛口本醸造酒。「全国燗酒コンテスト2022」お値打ち熱燗部門の最高金賞を受賞。蔵元がVIP客接待用にリザーブしているという逸品で40度前後の「ぬる燗」から冷酒までたのしめます。
製造元:有限会社渡辺酒造店
公式サイトはこちら
「司牡丹(つかさぼたん) 船中八策(せんちゅうはっさく)」(高知県/司牡丹酒造)
出典:司牡丹酒造株式会社サイト
高知の英雄・坂本龍馬に由来する名を冠した超辛口の純米酒。品のよい自然な香りとなめらかにふくらむ味わい、潔いほどの抜群のキレを持つ、香味のバランスに優れた食中酒です。燗酒では40度前後の「ぬる燗」から50度前後の「熱燗」がおすすめ。
製造元:司牡丹酒造株式会社
公式サイトはこちら
「菊姫(きくひめ) 山廃純米」(石川県/菊姫)
出典:菊姫合資会社サイト
兵庫県三木市吉川町・特A地区産の「山田錦」を使用した、濃醇で飲みごたえのある山廃仕込みの純米酒。芳醇な香りと力強い酸味、米由来の旨味が一体となり、コクのある風味が口中に広がります。「ぬる燗」や「熱燗」でたのしみたい逸品。
製造元:菊姫合資会社
公式サイトはこちら
日本酒は温めることで思いがけないほど味わいの表情が変わることがあります。さまざまな温度帯で日本酒をたのしんでみてくださいね。