「ハイランドモルト」の魅力とは?【ウイスキー用語集】
「ハイランドモルト」は、スコッチウイスキーの分類のひとつで、6大産地のひとつ「ハイランド」で造られるモルトウイスキーのこと。では、ハイランドとはどんな地域で、そこで造られるハイランドモルトにはどんな特徴があるのでしょう? ハイランドモルトの代表銘柄を含めて紹介しましょう。
- 更新日:
ハイランドモルトはスコットランド北部・ハイランド産のモルトウイスキー
Alin Popescu/ Shutterstock.com
広大なハイランド地方で造られるモルトウイスキー
「ハイランドモルト」とは、文字どおりハイランド地方で造られるモルトウイスキーのこと。では、「ハイランド」とはどんな地域でしょうか?
ハイランドとは、スコットランド北部の広大な地域を指します。1,000メートル級の山脈が連なり、山や谷が多い高地のため、南部の低地「ローランド」と対比して「ハイランド」と呼ばれます。
ハイランドはスコッチの6大生産地のひとつ
ハイランドは、ローランドやスペイサイド、キャンベルタウン、アイラ、アイランズとともに、スコッチウイスキーの6大生産地に数えられます。このうち最大の規模を誇るスペイサイドも、かつてはハイランドに含まれていて、スコットランドの蒸溜所の約8割が集まる一大生産地でした、
スペイサイドが独立した地域として分類された今でも、ハイランドの広大な地域に約40もの蒸溜所が点在しています。したがって、ハイランドモルトの特徴を一言で語るのは難しく、東部、西部、南部、北部と4つに分けて説明されています。
ハイランドモルトの特徴はエリアによって変わる
Alexandru Nika/ Shutterstock.com
ハイランドモルトの地域別に見る特徴
ハイランドモルトは、全体としては辛口でピート香が穏やかなものが主流ですが、広大な地域ゆえに、多種多様な銘柄が存在します。そこで、ハイランドモルトの特徴の傾向を、東西南北に分けて簡単に紹介しましょう。
【東ハイランド】
東ハイランドは、ハイランドのなかでも比較的、平野部が広く、石油の採掘拠点として知られるアバディーンもこの地にあります。フルーティーな香りと、口に含んだときのフレッシュさを特徴とするモルトウイスキーがよく見られます。
【西ハイランド】
イギリス諸島の最高峰「ベン・ネビス山」(標高1,344メートル)がそびえる地域で、蒸溜所は山間部と港町の2カ所にあります。山間のベン・ネビス蒸溜所ではレーズンやサクランボのような香り、港町のオーバン蒸溜所では磯の香りが特徴のモルトウイスキーを造っています。
【南ハイランド】
スコットランド中央部を貫くグランピアン山脈の南部で、ローランド地方と境を接する地域。口当たりが軽めで、飲みやすい銘柄が多く見られる地域です。
【北ハイランド】
ハイランドの首都と呼ばれる都市、インヴァネス近辺から北の地域を指します。モルトウイスキーの特徴はさまざまで、バランスがよくてキレのある初心者にもオススメの銘柄から、アイラモルトを彷彿とさせるヘビーな香りの銘柄まで多彩です。
ハイランドモルトの蒸溜所に「グレン」が多い理由
stocker1970/ Shutterstock.com
ハイランドのグランピアン山脈が作り出す「グレン」
ハイランドモルトには、「グレンモーレンジィ」や「グレンゴイン」、かつて含まれていたスペイサイドモルトも含めれば「グレンリベット」「グレンフィディック」と、「グレン」とつく銘柄が多く見られます。これは、グランビアン山脈が作りだす谷のことを、ゲール語で「グレン」と呼ぶためです。
1707年にイングランドがスコットランドを併合した際、ウイスキー造りに高額の酒税が課せられ、これを逃れるため、多くの酒造業者が身を寄せたのが、人目につきにくいハイランドの峡谷でした。このため、地名に「グレン(谷)」とつく峡谷に多くの蒸溜所が集まり、その地の名を冠しているのです。
ハイランドモルトの代表銘柄
Alexandru Nika/ Shutterstock.com
ハイランドモルトを代表する3銘柄を紹介
ハイランドには、広大な地域に多くの蒸溜所が点在し、それぞれの地域の風土を活かした個性あるモルトウイスキーを造っています。そのなかから、代表的な3つの銘柄を紹介します。
【グレンモーレンジィ】
北ハイランドのグレンモーレンジィ蒸溜所は、一度熟成させたモルト原酒を別種の樽に移して再熟成させる「ウッドフィニッシュ(追加熟成)」のパイオニアとして知られています。口に含むと、さわやかな柑橘系と花の甘い香り、舌の上には繊細なスパイシーさが広がります。
【クライヌリッシュ】
「グレンモーレンジィ」と並ぶ、北ハイランドの代表銘柄が「クライヌリッシュ(クラインリッシュ)」。花の風味と潮風の香り、スパイシーさと、スコッチのすべてのテイストを含んでいると言われる、バランスの取れた銘柄です。
ほとんどはブレンデッドウイスキーの原酒として使われ、シングルモルト(単一の蒸溜所の原酒だけで造られたウイスキー)として市場で見かけるのは稀少です。
【グレンゴイン】
南ハイランドを代表する銘柄が「グレンゴイン」。その特徴は、スコッチには珍しく、麦芽の乾燥にピートを焚かない「ノンピート」のモルトを使用していること。柑橘類の芳醇な香りとフルーティーな味わいが特徴のクセの少ない銘柄で、ブレンデットウイスキー「カティーサーク」の原酒としても有名です。
スコットランド北部、ハイランド地方で造られるハイランドモルトは、広大な地域ゆえに多種多少な特徴を持った銘柄が揃っています。そのバラエティーさをたのしみながら、スコットランドの風土に思いを馳せてみてはいいかがでしょうか?