【大阪・池田の日本酒「呉春」】300年にわたり愛され続ける理由とは?

【大阪・池田の日本酒「呉春」】300年にわたり愛され続ける理由とは?
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大阪の日本酒「呉春」を試したことはありますか?江戸時代中期に創業し、今なお「池田酒」の地酒として愛されています。今回は、老舗の蔵元が300年以上にわたって守り抜いてきた技とこだわりをご紹介します。

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「呉春」の造り手は名醸地・池田の老舗蔵

「呉春」の造り手は名醸地・池田の老舗蔵

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「呉春」を生んだ銘醸地・池田の酒造りの繁栄と衰退

室町時代末期から安土桃山時代ごろに始まったとされる池田の酒造りが最盛期を迎えたのは、江戸時代中期のことです。
猪名川(いながわ)の伏流水と山間部でとれる良質な米を活かした「池田酒」は、辛口の味わいが特徴で、江戸に運ばれる「江戸下り酒」として人気を博しました。
全盛期には38軒もの蔵を抱えるほどの酒処でしたが、その後、高い酒造技術と良質な水を活かした兵庫・灘の酒が台頭。「池田酒」は次第に衰退の道をたどり始めます。

「呉春」の蔵元は江戸時代中期に創業

こうした歴史を持つ池田の地に、「呉春」の蔵元が創業したのは、「池田酒」全盛期にあたる江戸時代中期、元禄14年(1701年)ごろと言われています。ただし、「呉春」という名が使われ始めたのは、江戸後期の弘化4年(1847年)ごろからだとか。
現在では、池田市で酒造りを続ける蔵元はわずか2社となってしまいましたが、呉春では今も「池田酒」の伝統を受け継ぎ、五味が調和した味わいをモットーとする酒造りを続けています。

「呉春」の由来には2つの説が

「呉春」の由来には2つの説が

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「呉春」の名は“呉服の里”に由来する

「呉春」という名前は、池田が「呉服(くれは)の里」と呼ばれた歴史に由来します。
はるか古代、中国の呉の国から呉織媛(クレハトリヒメ)、漢織媛(アヤハトリヒメ)という姉妹が渡来し、機織りや染色の技術を伝えました。姉妹の功績を讃えて仁徳天皇が建立したのが、現在も池田市に残る「呉服(くれは)神社」と「伊居太(いけだ)神社」です。こうした“織姫伝説”から、池田は「呉服の里」と呼ばれるようになり、この「呉」と、中国唐代の通語で「酒」を意味する「春」を組み合わせて、「呉春」と名づけられたのだとか。

「呉春」の名は日本画家・松村呉春に由来するとも言われる

「呉春」の由来には、もうひとつの説があります。それは、江戸時代の画家、松村呉春の名を取ったというものです。
四条派(しじょうは)の祖として知られるこの画家は、もともとは松村月溪と名乗っていましたが、妻と父を相次いで亡くした傷心を癒すため、天明元年(1781年)に池田に移住。その翌年、“呉服の里”で春を迎えたことから、名を「呉春」と改名したと言います。
松村呉春と、蔵元・呉春との関係は伝わっていませんが、どちらも当時の池田を代表する存在であることから、こうした説が生まれたのかもしれません。

「呉春」は3種類の酒を一升瓶だけで提供

「呉春」は3種類の酒を一升瓶だけで提供

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「呉春」は普通酒・本醸造酒・特別吟醸酒の3種類

長い歴史を持つ「呉春」ですが、通年で販売される商品は3種類、サイズは一升瓶のみというスタイルを貫いています。
普通酒の「呉春 池田酒」は、“甘からず、辛からず”を基本とし、バランスのよいまろやかな風味と旨味が特徴です。
本醸造酒の「呉春 本丸」は、すっきりとした味わいのなかに旨味が秘められ、冷やでも燗でもおいしくいただけます。
特別吟醸酒の「呉春 特吟」は、“幻の酒米”と呼ばれる岡山産・赤磐産の「雄町(おまち) 」を使用。良質な米と、井戸から汲み上げた五月山(さつきやま)の伏流水で造る希少なお酒です。

2009年から晩秋のみの限定大吟醸酒も登場

通年販売の3種に加え、2009年から、9~12月の4カ月のみ販売される限定の大吟醸酒「呉春 大吟醸」が登場しました。
「呉春 大吟醸」は、「呉春 特吟」と同じく、赤磐産の雄町を使用していますが、さらに高精白したこだわりのお酒となっています。

江戸時代中期に創業し、今なお「池田酒」の地酒として愛される「呉春」。3種類の酒を一升瓶のみで提供する「呉春」には、老舗の蔵元が時代の変遷を越え300年以上にわたって守り抜いてきた技とこだわりが込められています。

製造元:呉春株式会社
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