日本酒の味わいを表現するには?

日本酒の味わいを表現するには?
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日本酒の味わいはさまざまな言葉で表現されます。今回は、「辛口」「甘口」から、「薫酒(くんしゅ)」「熟酒(じゅくしゅ)」「爽酒(そうしゅ)」「醇酒(じゅんしゅ)」、そして色や香り、温度を表す言葉まで、好みを伝えるときにも役立つ表現の数々を紹介します。

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日本酒の味わいを表す言葉の代表格は「辛口」「甘口」

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日本酒の味わいを表すポピュラーな言葉といえば「辛口」「甘口」が挙げられます。それぞれの味わいの特徴などをみていきましょう。

「辛口」とは

日本酒の味わいの表現のひとつ「辛口」とは、唐辛子のような刺激的な辛さや塩辛さを表すものではなく、糖分に由来する甘味が少ない「甘くないお酒」を意味しています。

糖分量は多くても、酸味が強くキレのある飲み口のお酒や、アルコール度数が高いお酒などは、辛口に感じられることがあります。

「甘口」とは

「甘口」とは、文字どおり「甘いお酒」のことを意味します。

「辛口」とは逆に、糖分量がそれほど多くなくても、酸味が少ないものやアルコール度数が低いものは甘く感じやすくなります。

「辛口」「甘口」の目安となるのは?

日本酒の「辛口」「甘口」の目安となる指標に「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」があります。

【日本酒度】
水に対する日本酒の比重を数値化したもの。糖分をはじめとするエキス分を多く含むほどマイナスの数値が大きくなり「甘口」に、エキス分が少ないほどプラスの数値が大きくなり「辛口」になる傾向があります。

【酸度】
日本酒に含まれるコハク酸やクエン酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸の量を表す数値で、お酒の酸味や旨味、キレの指標とされています。酸度が高いものほど刺激が強いため辛く、酸度が低いものほど刺激が少ないため甘く感じられる傾向があります。

【アミノ酸度】
日本酒に含まれるアミノ酸の量を数値化したもの。コクや旨味の目安となる指標で、アミノ酸度が高いほどコクのある味わいに、低いほど淡麗でスッキリとした味わいになります。
アミノ酸は旨味やコクをもたらすだけでなく、甘味や酸味、苦味のもとにもなります。一般的に、アミノ酸度が高いほど甘口に感じられるといわれています。

3つの指標のほかにも、独立行政法人酒類総合研究所が提案する、「新甘辛度」という指標があります。これはブドウ糖の量から酸度を引いたもので、0.2以下なら辛口、0.3~1.0でやや辛口、1.1~1.8でやや甘口、1.9以上で甘口とされています。

これらの指標はあくまで目安。人は辛さや甘さを甘味と酸味のバランスで判断しているといわれます。また、糖分の量は上槽後から火入れまでの間に増加するため、火入れのタイミングによって変化するといった、不確定な要素もあります。各指標の数値はあくまで目安として活用し、日本酒を実際に飲んで味わってみることをおすすめします。

日本酒度・酸度・アミノ酸度と味わいの関係

「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」の各数値を組み合わせることで、それぞれの数値を見るよりも日本酒の味わいを推測しやすくなります。

「辛口」と「甘口」の判断をするには、日本酒度と酸度を参考にします。日本酒度の数値が大きい日本酒のなかにも甘口に感じられるものがありますが、酸度と合わせて確認することで、好みのお酒を見つけやすくなります。

また、酸度とアミノ酸度を組み合わせると、軽くさっぱりとした「淡麗」、そして旨味が強く濃い「濃醇」という、「辛口」「甘口」にとどまらない日本酒の味わいを見つけることができます。

◇アミノ酸度が高く酸度も高い:濃醇
◇アミノ酸度が低く酸度が高い:辛口
◇アミノ酸度が低く酸度も低い:淡麗
◇アミノ酸度が高く酸度が低い:旨口(甘口)

「淡麗」と「濃醇」という表現は、日本酒度と酸度の組み合わせでお酒の味わいをみたときにも、「辛口」「甘口」とともに使われています。縦軸を酸度、横軸を日本酒度とするマトリクス図によって、コクがありキレもある「濃醇辛口」、さっぱりとしてキレがある「淡麗辛口」、コクも甘味もある「濃醇甘口」、さっぱりとした甘さの「淡麗甘口」に分けられています。お酒選びの際の参考にしてみてくださいね。

日本酒の味わいを4つのタイプに分けると?

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日本酒の味わいを表す言葉は「辛口」「甘口」「淡麗」「濃醇」だけではありません。ここからは、味の濃淡と香りによって日本酒を4つに分類した日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)提唱の「熟酒」「醇酒」「薫酒」「爽酒」についてみていきましょう。

「薫酒(くんしゅ)」の味わいとは

「薫酒」タイプの日本酒は、果実や花を想起させるフルーティーで華やかな香りと、軽快でさっぱりとした味わいが特徴です。ワインのような飲み口のものも多く、海外での日本酒人気はこの薫酒タイプのお酒がけん引しています。

「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「大吟醸酒」「吟醸酒」が該当するほか、特有の香りを生む「吟醸酵母」を使った「純米酒」や「無ろ過生原酒」のなかにも薫酒タイプのお酒があります。

「熟酒(じゅくしゅ)」の味わいとは

「熟酒」タイプの日本酒は、黄金色(こがねいろ)の色調で、とろりとした飲み口と甘味・酸味・苦味が合わさった複雑で深い濃厚な味わいが特徴です。香りにも個性があり、ドライフルーツやスパイスにたとえられることもあります。

長期間熟成させた「古酒」「秘蔵酒」「長期熟成酒」と呼ばれるお酒が該当します。

「爽酒(そうしゅ)」の味わいとは

「爽酒」タイプの日本酒は、穏やかな香りとすっきりとしたさわやかな味わいが特徴です。清涼感のある飲みやすいものが多く、日本酒初心者も気軽にたのしめます。

「吟醸酒」から「本醸造酒」「生酒(または生貯蔵酒)」、そして「普通酒」や「低アルコール酒」まで、「爽酒」には幅広いお酒が該当します。

「醇酒(じゅんしゅ)」の味わいとは

「醇酒」タイプの日本酒は、落ち着いた香りと、原料米由来の旨味やコクがある「濃醇」な味わいが特徴です。

米のみを原料に造られる「純米酒」をはじめ、天然の乳酸菌と酵母を手間と時間をかけてじっくり育てる昔ながらの「生酛(きもと)造り」や「山廃(やまはい)仕込み」で醸されたお酒の多くが「醇酒」に該当します。また、香味成分が豊富な「無ろ過生原酒」や、アルコール度数が高い「原酒」にも該当するお酒があります。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
公式サイトはこちら

日本酒の味わいを表現する

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日本酒の味わいを表現する言葉は、これまで紹介してきたもの以外にもたくさんあります。味わいのほか、日本酒の色味や香り、温度を表現する言葉も数多く存在します。お酒にまつわる日本語の豊かな表現をみていきましょう。

日本酒の味わいについての表現

日本酒の味わいを表現する言葉を改めて紹介します。

◇さっぱり
口当たりがなめらかで淡い味わいを表すときに使われます。キレがよく、後味が重く残らない味わいを連想させる表現です。

◇すっきり
軽快で飲みやすい「淡麗辛口」の味わいを表す際によく使われる表現です。料理の味を邪魔しない味わいをイメージさせます。

◇さわやか
レモンやライムといった柑橘(かんきつ)類や竹などを想い起させる爽快な香りと酸味をあわせ持つ、清涼感を感じさせる味わいを表します。

◇コクがある
どっしりと落ち着いた味わいを表します。「コク」とは濃厚な旨味を意味する言葉。よいバランスで苦味をも調和している味わいをイメージさせます。

◇ふくよか
原料米由来の旨味が口のなかでふくらみ広がるような、「濃醇」で豊かな味わいを表す言葉。「山田錦(やまだにしき)」など香味に優れた酒造好適米100%で造った「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」の味わいを表現する際にもよく使われます。

◇まろやか
飲み口がやわらかで穏やかな味わいを表します。同じような意味合いで「まろみ(まるみ)」という表現もあります。熟成酒の口当たりを表現するときなどにも使われる言葉です。

日本酒の色味についての表現

日本酒の色味を表現する言葉をみていきます。

◇色沢(しきたく)
外見上の色味や混濁の状態を表す言葉。日本酒の「大吟醸酒」や「純米酒」など8種類の特定名称酒は、そのすべてにおいて色沢が「良好」あるいは「とくに良好」であることが要件のひとつとなっています。

◇青冴え(あおざえ)
光沢のある青みがかった淡黄色を指します。搾ったばかりの日本酒のうち、でき映えのよい酒に現れるといわれている色です。

◇黄金色(こがねいろ)・琥珀色(こはくいろ)
どちらもおもに熟成酒の色味を表現するときに使われます。日本酒は活性炭を使ったろ過を行うことで無色透明に近い色味になりますが、もともとは黄色味がかった色がついています。さらに熟成が進むと赤味が強くなり、輝きのある黄金色や美しい琥珀色になります。

日本酒の香りについての表現

日本酒の香りについては用語も含めて紹介します。

◇吟醸香(ぎんじょうか)
よく磨いた米を使い、ゆっくりと低温発酵させた「吟醸造り」の日本酒の芳香。「吟香(ぎんか)」とも。

◇上立ち香(うわだちか)
日本酒を器に注ぎ、鼻を近づけたときに感じられる香り。

◇含み香(ふくみか)
日本酒を少量口に含み、舌の上で転がして鼻から息を出すときに感じられる香り。

◇老香(ひねか)
日本酒の劣化臭のこと。

◇華やか
おもに吟醸香を表現するときに用いられる言葉。果物や梅・アカシアなどの花にたとえられることもあります。

◇フルーティー
吟醸香をはじめ、甘味のある果物を想起させる香りを表すときに使われます。

◇ふくよか
「ふくよか」は味わいだけでなく香りを表すときにも使われます。米の豊かな旨味成分を感じさせる香りや、栗や落花生のような深みのある香りがイメージさせられます。

日本酒の温度についての表現

日本酒はさまざまな温度でたのしめるお酒です。その味わいや香りは温度によって多彩に変化します。10段階ある温度についての表現を、冷たいほうからみていきましょう。

◇雪冷え(ゆきびえ)〈約5度〉
氷水につけて冷やした温度。香りや旨味はあまり感じられない一方、シャープな口当たりをたのしめます。

◇花冷え(はなびえ)〈約10度〉
冷蔵庫で数時間冷やした温度。香りは控えめで味わいはきめ細やかになります。

◇涼冷え(すずびえ)〈約15度〉
冷蔵庫から出してしばらく置いた温度で、香りが立ち、味わいもまろやかになります。

◇常温または冷や(ひや)〈約20度〉
冷蔵していない状態。香りも口当たりもソフトな傾向があります。

◇日向燗(ひなたかん)〈約30度〉
冷たくも熱くも感じない温度。やや香りが立ち、味わいの輪郭がはっきりしてきます。

◇人肌燗(ひとはだかん)〈約35度〉
体温と同じかやや低い温度で、口に含むとぬるく感じます。米の香りがたのしめます。

◇ぬる燗〈約40度〉
体温よりやや高い温度。とりわけ燗酒向けのお酒では香りが開花し、味わいがふくらみます。

◇上燗(じょうかん)〈約45度〉
徳利(とっくり)を持つと温かさを感じ、注ぐと湯気が立つ温度。味わいのふくらみとともにキレもたのしめます。

◇熱燗(あつかん)〈約50度〉
徳利から湯気が立つ温度。味わいはシャープになり、キレが増します。

◇飛びきり燗(とびきりかん)〈約55度以上〉
徳利を持つと熱いと感じる温度。香りが強くなり、かなり辛口の味わいになります。

5~10度おきにつけられた日本語ならではの風情ある表現は、幅広い温度帯で味わえる日本酒の懐の広さを象徴しているものでもあるのです。

好みの日本酒の味わいを表現できれば、日本酒のたのしみ方が広がります。今回取り上げたさまざまな表現を、飲食店・酒販店の人や飲み仲間とのコミュニケーションに役立ててみてくださいね。

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