東京の日本酒【江戸開城(えどかいじょう)】幕末以来の伝統を復活させた東京・港区の地酒
「江戸開城」と聞けば、多くの人が幕末のドラマチックな事件を思い浮かべるのでは? 東京都港区、都心のビル内という異色のロケーションにある蔵元が醸す「江戸開城」は、そんな歴史の舞台となった老舗の歴史を受け継いだ、東京23区内で醸造する日本酒。ここでは「東京の地酒」の歴史的背景や、その魅力を紹介します。
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「江戸開城」は幕末のクライマックスとなった出来事に由来
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江戸無血開城を導く会談の舞台となった蔵元、若松屋
「江戸開城」と言えば、日本史に興味がある人なら誰もが知っている、幕末の一大イベントです。
慶応4年(1868年)、徳川幕府の本拠地・江戸は、迫り来る明治新政府軍と幕府軍との間で一触即発の状態でした。しかし、新政府を代表する西鄕隆盛と、江戸幕府を代表する勝海舟との会談によって、江戸城の無血開城が決定。江戸は戦火を免れたのです。
この歴史に残る会談の舞台こそ、「江戸開城」の蔵元の前身にあたる若松屋だったのではないかと言われています(諸説あり)。
「江戸開城」の蔵元の前身、若松屋がたどった波乱の歴史
「江戸開城」の蔵元の前身である若松屋が、芝の地(現在の港区芝)で酒造りを始めたのは、今から約200年も昔、江戸時代後半の文化9年(1812年)のこと。
近くに藩邸を構えていた薩摩藩からひいきにされたことから、西鄕隆盛をはじめとした幕末維新の英雄たちが会談に利用し、今も多くの書簡が残されています。
しかし、明治43年(1910年)には当主が一人娘を残して他界。後継者が途絶えたことで廃業を余儀なくされ、酒造業としての幕を下ろすことになります。
「無血開城」とともに平成の世に復活した蔵元
酒造業としての歴史に幕を下ろした若松屋ですが、その後、婿養子を迎えて食堂や雑貨業を営み、現在まで暖簾を守り続けてきました。
そして廃業から100年を経た2011年になって、「歴史ある蔵元の歴史を埋もれさせたくない」と7代目当主が酒造りを復活。「東京港醸造」と名を改め、日本史の大きな転換点に立ち会った祖先への敬意を込めて「江戸開城」と名づけた銘柄を生み出したのです。
「江戸開城」を造るのは鉄筋コンクリートのビル内、東京港醸造
出典:東京港醸造サイト
「江戸開城」を醸すのは港区芝のビル街にある“都心の酒蔵”
「江戸開城」を醸す東京港醸造(「とうきょうこうじょうぞう」ではなく「とうきょうみなとじょうぞう」と呼びます)は、“東京 芝の酒”を銘打っているように、東京都港区芝に蔵を構えています。
港区芝と言えば、周知のようにオフィスビル街。「江戸開城」を醸す蔵も、鉄筋コンクリート4階建てのビル内という異色のロケーションにある、まさに“都心の酒蔵 ”です。
東京都心は、じつは酒造りに適した環境!
「江戸開城」は、都心のビル内で水道水を仕込み水に造られる“東京の地酒”。日本酒造りは自然に恵まれた環境で、湧水や井戸水で造られるものという先入観がありますが、空調完備のビル内は日本酒造りに適した温湿度を維持でき、年間を通じて酒造りが可能という利点があります。また、近年では「東京水」がペットボトルで販売されているように、東京の水道水の品質は折り紙付きです。
少量生産だからこそ、常にできたての「江戸開城」がたのしめる
「江戸開城」を醸す“都心の酒蔵”は、わずか22坪という小規模な蔵元。生産量は少ないものの、蔵の向かいにある直営ショップや都内の酒屋さんを通じて、常に新鮮で質の高い日本酒を販売しています。
平日の夜には、蔵の駐車場において、キッチンカーを利用した“角打ち(かくうち)”と呼ばれる立ち飲みも実施。搾りたての「江戸開城」をはじめ、さまざまな日本酒の飲み比べがたのしめます。
「江戸開城」の季節感豊かなラインナップ
出典:東京港醸造サイト
「江戸開城」は日々、変化する東京をイメージした日本酒
「江戸開城」は、日々、変化し続ける東京の街をイメージして、仕込むたび酵母や製法、アルコール度数などを変化させることで、その都度、異なる味わいを感じさせる“一期一会”の日本酒です。
季節ごとの新酒を瓶詰めした「季節酒」など、限定酒はとくに人気が高く、入手困難だとか。
「江戸開城」以外にも個性豊かな銘柄がラインナップ
「江戸開城」以外にも、東京港醸造では個性豊かな日本酒を数多く造っています。
たとえば、「芝の酒」「六本木の酒」「銀座の酒」と都内の地名を冠した「東京シリーズ」は、それぞれの街をイメージした味と香りがたのしめます。ボトルデザインもスタイリッシュで、東京土産に最適な1本と言えます。
このほかにも、どぶろくやリキュール、あまざけ、ミード(はちみつ酒)など、バラエティ豊かな酒を提供しています。
「江戸開城」という銘柄には、特産品(酒)の少ない東京にあって、江戸の歴史と文化を感じさせる“東京の地酒”を造りたいという蔵元の気持ちが込められています。江戸から明治へという歴史の転換点に想いを馳せながら、“都心の酒蔵”が醸す1本を味わってみてはいかがでしょう。
製造元:株式会社若松 東京港醸造
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