静岡の日本酒【高砂(たかさご)】原料米や水、製法にこだわる酒
「高砂」は、「山田錦」「美山錦」「五百万石」などの酒造好適米を、富士山の伏流水で仕込んだ静岡の酒。能登流の日本酒造りにこだわる蔵元が、独自に工夫した「高砂山廃仕込み」で仕込んだ「高砂」は、米の旨味と水のやわらかさを味わえる一本です。
- 更新日:
「高砂」は富士の軟水と原料を追求して造られる
IamDoctorEgg/Shutterstock.com
「高砂」を造るのは、浅間神社の総本山「富士宮浅間大社」の近くに蔵を構える蔵元、富士高砂酒造です。その発祥は文政年間(1820年ころ)までさかのぼり、現在の場所で日本酒造りを始めたのが天保2年(1831年)と伝えられています。
富士高砂酒造を代表する銘柄が、蔵元の名の一部を冠した「高砂」です。この名称は、長寿や夫婦円満を願ってうたわれた能の作品名に由来しているそうで、蔵の歴史の古さを物語っています。
「高砂」をはじめとした富士高砂酒造の酒造りの大きな特徴が、原料へのこだわりです。酒米には、兵庫県産の「山田錦」、北長野の「美山錦」、北陸地方の「五百万石」など各地の酒造好適米を主力に、近隣農家と連携して生産する静岡県のオリジナル酒米「誉富士」も取り入れています。
また、仕込み水には、超軟水と評される富士山の伏流水を、地下100メートルから汲み上げて使用。角のないやわらかな口当たりを特徴とするこの水は、富士高砂酒造が造る酒の味わいにも、しっかりとあらわれています。
「高砂」が伝承する能登流の造りと山廃仕込みへのこだわり
Khun Ta /Shutterstock.com
「高砂」は、水や米といった素材へのこだわりだけでなく、「能登流の酒造り」と「山廃仕込み」という特色をそなえています。
富士高砂酒造では、創業以来一貫して、能登流の杜氏による酒造りに取り組んできました。能登杜氏による日本酒は「濃厚で華やか」といわれており、「高砂」をはじめ、この蔵が醸す銘柄の味わいのベースになっています。
日本酒造りには、酵母の繁殖を促す「酒母造り」という工程がありますが、この際に、蔵に棲みついた天然の微生物の力を活かし、手間暇かけてじっくりと仕込むのが「生酛造り」という技法です。
この際、微生物を取り込みやすいよう米をすりつぶす作業を「山卸(やまおろし)」といいますが、この作業を行わないのが「山廃(やはまい)仕込み」。「山」卸を「廃」しているから「山廃」というわけです。
山廃仕込みは、「速醸酛(そくじょうもと)仕込み」と呼ばれる技法よりも時間と手間がかかりますが、そのぶん、厚みのある旨味とキレをもたらします。富士高砂酒造では、富士山の伏流水を組み合わせた、独自の「高砂山廃仕込み」によって、口当たりがやさしく、ほのかな甘味を感じさせる日本酒造りを実現しています。
吟醸酒をはじめ、純米酒、純米生原酒、本醸造など、さまざまなグレードで山廃仕込みの日本酒をそろえている蔵元は、静岡県内でも珍しく、富士高砂酒造の酒造りへのこだわりを感じます。
「高砂」をより広めるための蔵元の試みにも注目
mTaira/Shutterstock.com
「高砂」をはじめとする日本酒の酒造りを、より多くの方に知ってほしいという思いから、富士高砂酒造では、平日無料で「酒蔵見学」を受けつけています(要予約)。
また、新年の蔵開きを一般公開したり、蔵を会場にしてクラシックコンサートを行うなど、日本酒の愛好者でなくとも興味がもてるようなイベントを積極的に企画しています。
こうした富士高砂酒造の活動の背景には、日本酒は「人と人とを結ぶ潤滑油」であり、「たのしい時間を共有したり、悲しみを癒してくれるもの」であってほしいという願いが込められています。
“より身近な蔵元”をめざして邁進する富士高砂酒造。興味のある方は、ぜひ公式サイトをのぞいてください。
素材や伝統製法にこだわった酒造りを守りながら、日本酒のよさをより多くの人に伝えたいという開かれた姿勢をもつ富士高砂酒造は、新しい伝統を築く気概にあふれています。その気概が生み出す「高砂」の魅力を、ぜひ一度味わってみてください。
製造元:富士高砂酒造株式会社
公式サイトはこちら