スロージンとはどんなお酒?イギリス発祥のフルーティーなリキュールを紹介!

スロージンとはどんなお酒?イギリス発祥のフルーティーなリキュールを紹介!
出典 : Oksana_Schmidt / Shutterstock.com

スロージンはヨーロッパ原産のスローベリーという果実をジンなどのスピリッツに漬け込み、甘味を加えたリキュールです。イギリスの各家庭で造る自家製の果実酒からスタートしたスロージン。その特徴や魅力、ジンとの違い、代表銘柄、おいしい飲み方などを紹介します。

  • 更新日:

スロージンはプラムの一種であるスローベリーを使ったリキュール。フルーティーな味わいと鮮やかな赤い色味が特徴です。

スロージン(Sloe Gin)とは?

スロージンの原料であるスローベリーの実

IanRedding / Shutterstock.com

まずはスロージンの原料であるプラムの一種「スローベリー」を知り、次にスロージンの味わいなどをみていきましょう。

スロージンの原料、スローベリーとは?

スロージンの「スロー」の綴りは、スローライフの「slow」や、スローインの「throw」ではなく、「sloe」。「スピノサスモモ(Prunus spinosa)」というバラ科の低木になる実を「スロー(sloe)」といい、「スローベリー(sloe berry)」や「ブラックソーン(blackthorn)」と呼ばれることもあります。

スローベリーの原産地はヨーロッパ。プラムの一種で「ベリー」の名がついているとはいえ、スローベリーは一般的なプラムやベリーとは違って非常に酸味が強く渋味もあるため、そのまま食べたりフルーツケーキのトッピングにしたりするのにはあまり適していません。

日本ではなじみの薄い果物ですが、イギリスではトゲのあるスピノサスモモの木が公園や庭、田園地帯の生け垣によく使われるなど、昔からスピノサスモモとその実であるスローベリーを上手に活用してきました。その一例がスロージン。熟したスローベリーをジンに漬け込み、砂糖を加えておいしい果実酒を作り出したのです。

家でたのしむホームリカーとして生まれたスロージンは、たとえるなら日本における梅酒のようなものと考えるとイメージしやすいかもしれません。イギリスの家庭では胃や腸の調子を整えたいときの薬酒のような役割も果たしてきたそうです。

なお、日本でも自家製スロージンを作ることができますが、自分で飲む分だけと決められています。自家醸造についての酒税法上の注意点は、以下の記事が参考になります。

国税庁|お酒に関するQ&A(よくある質問)【自家醸造】
焼酎SQUARE(日本蒸留酒酒造組合)|ご自宅で、果実酒(果実のお酒)をつくる場合のご注意

メーカーによってスローベリーの使い方はさまざま

Steidi / Shutterstock.com

スロージンはスローベリーの香りと甘酸っぱい味わい、赤い色味が特徴

伝統的なスロージンは、ジンにスローベリーを漬け込み、加糖して造られます。そのためスロージンの味わいは、ベースとなるジンの香味にスローベリーのフルーティーな酸味や渋味がもたらす深いコク、砂糖やシロップ、蜂蜜などのやさしい甘味が調和した、絶妙なテイストになります。

スローベリーの濃い赤紫色が溶け出したスロージンは鮮やかなルビーレッド色。飲む人の心まで華やかにしてくれそうな美しい色合いです。

ただ、スロージンの製法はメーカーによって千差万別。スローベリーの使い方ひとつとっても、種を除いて果実だけを使用したり、種ごと破砕して種の中にある核の香り成分まで抽出したりするなど、漬け込み方はさまざまです。スローベリーにブルーベリーやチェリーなどほかの果実や種子のエッセンスを加えてアクセントをつけるケースもあり、こうしたこだわりの数々が各ブランドの個性を引き立てています。

過去には、スローベリーを漬け込む代わりに人工的なエッセンスを使用したものや、着色料や添加物の多いものが出回った時代もあったようですが、今現在、日本で手に入れやすいスロージンのほとんどが、本格的なジンやスローベリーの質を追求した正統派です。

スロージンとジンとの違い

ジンはスピリッツ、スロージンはリキュールに分類される

Svetlana Khutornaia / Shutterstock.com

ジンにスローベリーを漬け込んだお酒がスロージンなら、ジンとスロージンは同じカテゴリーのお酒なのかというと、そうではありません。ここでは、さまざまな観点で異なる「スロージンとジンの違い」「スロージンとドライジンの違い」を紹介します。

ジンはスピリッツ、スロージンはスピリッツにスローベリーを漬け込んで造るリキュール

まずはジンとスロージンの違いをみていきましょう。

◇原材料と造り方の違い
ジンはトウモロコシや大麦、ライ麦などの原料を糖化・発酵させ、蒸溜したスピリッツに、ジュニパーベリーなどのボタニカルの香味をつけて再び蒸溜してできあがるお酒です。
これに対し、一般的なスロージンはジンなどのスピリッツにスローベリーを漬け込み、さらに砂糖やシロップ、蜂蜜などを加えて造ります。

◇カテゴリーの違い
日本の酒税法上、ジンはウオッカやテキーラ、ラムと同じ「スピリッツ」に分類され、スロージンは「酒類と糖類等を原料とした酒類でエキス分が2度以上」の「リキュール」に分類されます。

◇アルコール度数の違い
「ジンの定義」に関する規定のあるEUでは、ジンの瓶詰めアルコール度数は37.5度以上と定められていて、市販されているジンのアルコール度数はおおよそ40〜47度くらい。一方、日本で手に入るスロージンのアルコール度数はおおよそ23〜33度程度。一般的にはスロージンのほうがジンより度数が低くなっています。

◇色味の違い
ほとんどのジンは無色透明ですが、スロージンはルビーやガーネットなどにもたとえられる赤色です。

◇味わいの違い
ジュニパーベリーをはじめとしたさまざまなボタニカルの風味が感じられる辛口(ドライ)なタイプが多いジンに対し、スロージンはスローベリーの甘酸っぱさが特徴です。

一般に「ジン」といえばドライジンを指す

New Africa / Shutterstock.com

スロージンとドライジンの違いは?

次にスロージンとドライジンについても比較してみましょう。

まず「ドライジン」とは、いくつかあるジンのタイプのなかで現在もっともポピュラーなもの。ジンといえばドライジンを指す、といえるくらい世界の主流となっているタイプです。

蒸溜酒に関するEUの最新規則「(EU)2019/787」による厳密な定義では、「最終製品1リットルあたり0.1グラムを超える甘味料が添加されていない場合」のみ、ジンに「ドライ」という用語をつけられるとしています。一般的には「連続式蒸溜機で造られた純度が高く洗練された辛口のジン」を「ドライジン」と呼び、市販されているジンのほとんどがこのドライジンにあたります。

この製法が生まれたおもな産地から「ロンドンジン」や「ロンドンドライジン」と呼ばれることもありますが、生産地はイギリスに限らず、日本をはじめ世界中のさまざまな地域でこのタイプのジンが造られています。

つまり、「ドライジン」といえば現在はほぼジンそのものを指すことが多いため、スロージンとドライジンの違いは、酒税法上ドライジンはスピリッツ、スロージンはリキュールにカテゴライズされるなど、「スロージンとジンの違い」を紹介した前項と同様になります。

スロージンの代表的な銘柄

世界的にも有名なジンのメーカーが手がけるスロージンを2種、紹介します。

ゴードン スロージン

歴史あるゴードン社のスロージン

出典:株式会社ジャパンインポートシステムホームページ

「ゴードン スロージン」は、イギリスで250年以上の歴史を持つ「GORDON’S LONDON DRY GIN」の製造元、タンカレー・ゴードン社が手がける逸品です。
最高級の野生のスローベリーを使用した本格派のスロージンは、新鮮な果実味とやさしい甘味、ベースにあるゴードン・ジンのドライさが見事に調和した、思わずうっとりしてしまうような味わい。

着色料が一切使われていない、深く美しいルビーレッド色も大きな特徴です。ストレートでたのしむのはもちろん、トニックウォーターで割る「スロージントニック」にもおすすめです。

アルコール度数:26度

国内販売元: 株式会社ジャパンインポートシステム
公式サイトはこちら
「ゴードン スロージン」のブランドサイトはこちら

モンキー47 スロー・ジン

ドイツのプレミアムなジンブランドのスロージン

bogdanhoda / Shutterstock.com

「MONKEY 47」は2008年、ドイツ・シュヴァルツヴァルトのブラックフォレスト蒸溜所で生まれたプレミアムなジンブランドです。

ブラックフォレストで収穫したスローベリーとフランス産の砂糖、天然の湧き水を使い、3カ月の熟成を経てボトリングされる「モンキー47 スロー・ジン」の生産は年4回のみ。クランベリーをキーフレーバーにした豊かなフルーツ感とジュニパーベリーのバランスが絶妙で、複雑な香りのなかにアーモンドが感じられる味わいです。控えめで上品な甘さ、洗練された香りはカクテルのベースとしてもおすすめ。

アルコール度数:29度

国内販売元:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
公式サイトはこちら
「モンキー47 スロー・ジン」のブランドサイトはこちら

スロージンのおいしい飲み方

炭酸はじけるさわやかな飲み口のスロージンフィズ

Oksana Mizina / Shutterstock.com

定番のスタイルからちょっとこだわり派のカクテルまで、さまざまなスロージンの飲み方を紹介します。

スロージンのスタンダードな飲み方といえばフィズ

「フィズ」はカクテルのポピュラーなスタイルのひとつ。スピリッツやリキュールにレモン果汁と砂糖を加え、炭酸水で割ったカクテルを「○○フィズ」といいます。
ちなみに「フィズ(fizz)」とは炭酸水が発泡する「シューッ」という音のことなのだとか。

フルーティーな甘味や香りを持つスロージンは、フィズのベースにぴったり。さわやかな飲み口の2種類を、ぜひレパートリーに加えてみてください。

スロージンフィズ

シンプルな材料でかんたんに作れる、スロージンを使ったカクテルの入門編です。

<材料>
スロージン…30ミリリットル
レモンジュース…15ミリリットル
シロップ…小さじ1杯(5ミリリットル)
ソーダ…適量
氷…適量

<作り方>
1.ソーダ以外の材料をよくシェイクし、グラスに注ぎます。
2.氷を入れ、好みの量のソーダで満たして軽く混ぜます。

ルビーフィズ

宝石のような美しい色合いと、クリーミーなテクスチャーをたのしめるカクテルです。

<材料>
スロージン…45ミリリットル
レモンジュース…20ミリリットル
グレナデンシロップ…小さじ1杯(5ミリリットル)
シロップ…小さじ1杯(5ミリリットル)
卵白…1個分
氷…適量
ソーダ…適量

<作り方>
1.ソーダ以外の材料をよくシェイクします。卵白がふんわり泡立つくらいまでしっかり振りましょう。
2.グラスに注いで氷を入れ、好みの量のソーダを加えて軽く混ぜます。

スロージンをオレンジジュースで割ったスロードライバー

smspsy / Shutterstock.com

スロージンを使ったおすすめカクテル

スロージンが味わいや色合いのキーになるこだわりカクテルを3種、紹介します。

チャーリーチャップリン

1920年ごろ、ニューヨークの高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」で作られたとされるクラシックカクテル。フルーティーで甘酸っぱい味わいは、かの喜劇王の名にふさわしい、心躍る1杯です。

<材料>
アプリコットブランデー…20ミリリットル
スロージン…20ミリリットル
レモンジュース…20ミリリットル
氷…適量

<作り方>
すべての材料をシェイクし、氷を入れたロックグラスに注ぎます。

ライジングサン

チェリーとスロージンで日の出を表現した美しいカクテル。1963年に開催された「調理師法施行10周年記念カクテルコンペティション」で厚生大臣賞を受賞したカクテルで、考案者は「Mr.マティーニ」と称された伝説のバーテンダー今井清氏です。

<材料>
テキーラ…30
シャルトリューズ(ジョーヌ)…20
ライムジュース…10
マラスキーノチェリー…1粒
スロージン…小さじ1杯(5ミリリットル)
氷…適量

<作り方>
1.シャンパングラスの縁に塩をつけ、スノースタイルにします。
2.チェリーとスロージン以外の材料をシェイクしてカクテルグラスに注ぎます。
3.チェリーを沈め、最後にスロージンを静かに落とします。

スロードライバー

ウオッカとオレンジジュースで作る「スクリュードライバー」のベースをスロージンに替えたカクテル。本家よりアルコール度数は控えめなので、お酒に弱い人にもおすすめです。

<材料>
スロージン…45ミリリットル
オレンジジュース…適量
氷…適量

<作り方>
氷を入れたグラスにスロージンを入れ、好みの量のオレンジジュースを注ぎます。

本場イギリスでは、初霜が降りた秋にスローベリーを収穫して仕込み、冬のホリデーシーズンにたのしまれてきたというスロージン。シナモンなどのスパイスや砂糖を加えてお湯で割る「トディスタイル」もおすすめです。

おすすめ情報

関連情報

リキュールの基礎知識

日本ビール検定(びあけん)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事