<新潟ワインコースト探訪その②> “長男”的存在『フェルミエ』のワイン造りとその楽しみ方

<新潟ワインコースト探訪その②> “長男”的存在『フェルミエ』のワイン造りとその楽しみ方

今注目の日本のワイン産地“新潟ワインコースト”。角田浜(かくたはま)および越前浜周辺で営みを始めたカーブドッチワイナリーの後に創業したのが、今回レポートするフェルミエです。その生い立ちやワイン造りの哲学、醸したワインの楽しみ方をうかがいました。

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2006年、新潟の日本海に臨む海岸砂丘で創業

ブドウ畑の緑と青空に映えるフェルミエの看板。誕生して丁度今年でひと回り(12年)を数えました。

日本屈指の大河・信濃川河口の北に位置するのが角田浜(かくたはま)。この海水浴場で知られるエリアにほど近い砂丘で、産声を上げたワイナリーがフェルミエ。2006年9月のことで、まだ辺りが新潟ワインコーストの名では呼ばれていない時代です。

創業者は本多孝さん・有紀さん夫妻。栽培家でありワインメーカーでもある孝さんは、新潟市出身。大学を卒業後、大手金融機関に就職。東京でサラリーマン生活を送っていましたが、「海と砂のテロワールが育む新潟の個性あふれるワインを造りたい」と一念発起。脱サラをして、妻の有紀さんと長男とともに故郷近いこの地に移り住んだそうです。

ブドウの収穫のピークを迎えていた孝さんに代わってお話をしてくださったのは有紀さん。「正直、私自身はお酒が弱く、今の生活は想定外でした。が、ワインと触れ合う度にその魅力に惹かれていきました。自然の恵みを受けて育ったブドウが様々なスタイルのワインになっていくプロセスはとても興味深く、神秘的です。そして、アロマ好きの私としては、ワインの香りの多彩さも魅力を感じる大きな要因です」とニコリ。

ワイン造りの基礎を学ぶために入門したのが、この地で1992年に創業したカーブドッチワイナリーが主宰した「ワイナリー経営塾」(※)。じつはフェルミエ、この制度の一期生に当たります。2005年9月から約半年間、栽培・醸造・ワイナリー経営全般について学んだ後、創業準備。忙しい合間を縫って、海外のワイナリー視察にも出かけたそうです。

「夫婦でワイナリー経営塾に参加。学びながら創業の準備もした1年間は多忙を極めました」と有紀さん。

ワインは、ブドウが育った土地の自然を現す農産物

ブドウはすべて手摘み。ブドウの様子をこまめに観察、必要で適切なケアだけを施します。

フェルミエとはフランス語で「農家製」の意。そうフェルミエワインとは「農家が造ったワイン」を指します。孝さんが目指したのは、農家と同じく自然をありのまま受け入れて、「新潟の自然が素直に表現されたワインを造る」ことでした。

畑のある新潟ワインコーストは、水はけが良く痩せたワイン用ブドウを栽培するのに適した砂質土壌。この土壌でのワイン醸造を重ねていくうち、「エレガントな香りのアタックと長い余韻、繊細で優しい味わいながらも旨味にあふれ、目が詰まっている」ワインのスタイルを目標にするようになったそう。

栽培するブドウは多種にわたっていますが、主要品種は「やっぱり、アルバリーニョですね」と有紀さん。カーブドッチワイナリーが最初にアルバリーニョを植えたのが2005年なのですが、まさにその作業に塾生として参加していたのが本多夫妻。そうワイナリーの前に広がるアルバリーニョの畑こそ、新潟ワインコーストの“ファースト・アルバリーニョ”なのです。

取材時は収穫を終えていたアルバリーニョですが、その可憐な姿が少し枝先に残っていました。

醸造設備、ショップ、レストランを備えたワイナリー

ベージュの壁にオレンジの屋根…ホッとする空気が漂うワイナリー。

畑を見学させていただいた後、ワイナリーへ。収穫されたアルバリーニョがまさに仕込みの真っただ中。フェルミエの醸造哲学についてお聞きすると、「目指すワインのスタイルを追求してきた結果、ブドウ栽培と同様にワインも野生酵母による自然発酵に委ねるなど、ナチュラル志向で取り組んでいます」との答え。

ただ、不測の事態には造り手の経験や感覚を頼りに即断、スピーディーに対処する必要もあるそう。そのようなケースは孝さん独りで対応を迫られる場面も多いため、孝さんが目配りできる量しか扱わないのだとか。たとえ生産量を抑えてでも、本当に良いワインを造りたいという想いこそフェルミエワインの原点だということが理解することができました。

除梗(じょこう)されて、発酵への段階へと進むアルバリーニョ。

カベルネ・フランなどの赤ワインは、フレンチオークの樽で。アルバリーニョの白ワインはステンレスタンクの樽で熟成されます(一部木樽を使うアイテムもあり)。

醸造設備を終えたら、ショップに併設されたカウンターでお待ちかねの試飲。リーズナブルにテイスティングできるワインが、「常時10種類ほど用意しております」というのはとても魅力的です。

味わったのは、フェルミエの代名詞的なアルバリーニョとカベルネ・フラン。最もスタンダードタイプのアルバリーニョは、木樽を用いていないため軽やかで爽やかなアタック。しかし同時にしっかり果実味もあって思った以上にふくよかな印象。

一方フランス・ボルドー地方では補助品種としての使用が多いカベルネ・フランですが、こちらでは主役。ベリー系の香りがとてもエレガントでチャーミングな味わいに、透明感のある澄んだ余韻が長く続き、品の良さが際立つワインでした。

テイスティングは、グラス200円~で可能です。

左/アルバリーニョ400円。右/カベルネ・フラン400円 ※価格は取材日の設定。

ブドウ畑に溶け込んでしまいそうな、淡いイエローのアルバリーニョ。

味わってしまうとついつい買って帰りたくなってしまいます。

料理とのマリアージュを体感できるレストラン

真っ赤で愛らしい看板が営業しているサインです。

新潟ワインコーストを訪れる人々がフェルミエのワイナリーに立ち寄るのには、レストランの存在が大きいとか。じつは多忙な創業時にレストランも開店したそうで、「フレンチのランチコースと共に、フェルミエのワインとのマリアージュを楽しんでいただけるメニューを提供しています。石窯焼きのピッツァも人気です」と有紀さん。

ランチはフレンチやピッツァのコースの他に前菜やサラダなどのア・ラ・カルトも。今回いただいたのは、フレンチのコース『エテ』。前菜2皿、サラダ、メイン、コーヒー、に天然酵母のパンが付いて2700円~。メインは、肉料理と魚料理またはおすすめ料理から1皿選ぶというプリフィックススタイルで、プラス300円でデザートも付けられます。

今回はメインで選んだ魚料理に合わせてアルバリーニョをグラスでオーダー。潮の香りでつながるようなマリアージュを体感することができました。

ちなみにフェルミエには『デギュスタシオンランチツアー』なる人気のワイナリーツアーもあります。ワイナリー&ブドウ畑見学に本格フレンチのランチ、さらにワインの試飲までがセットになって5000円と大変お得。新潟ワインコーストを訪れるなら、ぜひチェックしておきましょう。

『デギュスタシオンランチツアー』の詳細はこちら

高い天井から自然光が差し込み、開放感あふれるダイニング。

やっぱり、ワイナリーレストランの特等席は“ブドウ畑ビュー”。

取材日の魚料理は、チョリソーの塩味がほどよく効いた『アンコウのサフラン風味』。

“新潟ワインコースト”の長男的存在であるフェルミエ。いかがだったでしょうか?次回は、こちらも勝るとも劣らない個性的な3軒のワイナリーを紹介します。

<新潟ワインコースト探訪その①>はこちら

新潟ワインコーストの詳細はこちら

フェルミエの詳細はこちら

ライタープロフィール

とがみ淳志

(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。日本旅のペンクラブ理事。日本旅行記者クラブ会員。国内外を旅して回る自称「酒仙ライター」。

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