長野の日本酒【十九(じゅうく)】進化し続ける鍛錬の酒
「十九」を醸すのは、「自分はまだ成人(二十歳)の一歩手前」という謙虚な姿勢で日本酒造りと向き合う尾澤酒造場。国内でも最小規模の蔵元が造る「十九」の魅力を紹介します。
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「十九」は、小規模手造りでていねいに醸される酒
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「十九」は、年間の生産量が約60石という、日本の蔵元のなかでもっとも小規模な蔵のひとつ、尾澤酒造場が造る日本酒です。
尾澤酒造場では、文政年間(1820年頃)の創業以来、ほぼ100%が地元・信州新町で消費されるという、地域に根づいた酒造りを続けてきました。約200年の歴史を重ねた現在も、酒造りを担うのは蔵元の当主を含めた3人のみ。小規模ならではの小回りと目配り、気配りで、ていねいに、そして精緻に酒を仕込んでいます。
「十九」を生んだ信州新町は、標高400メートルを超える高地にあり、日本酒の寒造りには最適な環境です。尾澤酒造場は、この地の風土と、この地の契約農家が育んだ酒造好適米「美山錦」を活かして、この地の空気のように澄み切った味わいの「十九」を醸しています。
「十九」の名は、一人前(二十歳)の一歩手前に由来する
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「十九」という銘柄には、酒造りに対する蔵元の謙虚で実直な姿勢が現れています。「お酒は二十歳になってから」というように、人は二十歳になってやっと一人前の大人として周囲に認められるもの。「十九」はその一歩手前の状態です。
日本酒造りは、米や水、麹など、天然の素材を相手に行う仕事。たいへん奥が深い世界と言えます。蔵元は、自信がまだ日本酒造りにおいて一人前になりきれない、一歩手前であるという謙虚な想いを込めて、「十九」という銘柄名をつけたのです。
「十九」のさわやかな味わいからは、一人前をめざす向上心や、前向きでひたむきな気構えが伝わってきます。それでいて、大人になりきっていない自由さや身軽さも感じられるでしょう。「十九」という酒には、蔵元の謙虚な姿勢とともに、少人数ならではの自由で前向きに突き進む姿が現れているようです。
「十九」のかわいいラベルに胸がときめく
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「十九」の魅力のひとつが、日本酒離れした斬新なラベルデザインです。基本となるデザインは、墨文字で「十九」と書かれたものですが、商品ごとの個性に合わせて、桜模様や雪の結晶模様、かわいい猫やリスの絵など、多種多様なデザインで目をたのしませてくれます。
たとえば、「十九 Gattolibero(ガットリベロ)」は、イタリア語で「野良猫」を表す言葉で、自由であり続けたいとの想いを込めた日本酒です。イラストでネコのしっぽが「6」の字になっているのは、「きょうかい6合酵母」で醸したからだとか。そんな遊び心からも、「十九」という日本酒の大きな可能性が感じられます。
このほか、イベントなどに合わせて期間限定のデザインラベルが発売されることもしばしば。「十九」の魅力的なラベルの数々は、少人数ならではのフットワークの軽さを感じさせます。
日本酒造りは奥深いものだけに、いつまでも完成することはなく、常に一歩手前――蔵元の謙虚な姿勢が現れている「十九」。生産量は少ないですが、一度は飲んでみたいお酒です。
製造元:株式会社尾澤酒造場
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