宮崎の焼酎【川越(かわごえ)】蔵再建の鍵になった幻の焼酎
「川越」を飲んだことがある人なら、「芋焼酎はクセがある」とはいえないはずです。開発エピソードと杜氏の想いから「川越」の魅力を探り、九州はもちろん、全国の焼酎ファンから愛される銘柄へと成長した経緯を見ていきます。
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「川越」は、父の背中を追いかけて造った焼酎
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「川越」を造るのは、宮崎県国富町の中心部にある小規模な焼酎蔵、川越酒造場です。江戸時代末期から続く由緒正しい酒造所ではあるものの、時代の波に押されて傾きかけていたとき、生き残りをかけて造ったのが、蔵の名を冠した芋焼酎「川越」でした。
職人気質の父が焼酎のブレンドを考え、26歳で跡を継いだ杜氏が苦心の末にたどり着いた味わいです。
川越酒造の特徴は、ていねいな手作業で造る焼酎。大手との差別化を図るため、あえて機械に頼らない焼酎造りをかかげ、杜氏自らが視覚や嗅覚、触覚といった五感を研ぎすまし、原料の個性を活かした焼酎造りを行っています。
すべての工程が手作業なだけに、秋から冬にかけての仕込み時期は、まさに激務。それでも手を抜くことなく、真摯に焼酎造りに打ち込んだ父の背中が、現当主である杜氏の支えとなっているのでしょう。
「川越」のコンセプトは「若い女性でも飲みやすい」焼酎
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「川越」を開発するにあたってのコンセプトは、若い女性でも飲みやすい焼酎。米焼酎をブレンドすることによって、芋焼酎に特有のクセを抑え、まろやかな味わいに仕上げています。
女性をターゲットにした工夫が功を奏して、2002年には大手航空会社のファーストクラスの機内酒に選定。採用が決まった背景には、客室乗務員からの熱い支持があったといいます。その後の「川越」の飛躍はめざましいものがあり、国内全域に名前が知られるところとなりました。
大量生産ができないことから希少性が高く、いまや「幻の焼酎」と呼ばれるまでの人気ぶりは、目を見張るもの。宮崎を代表する芋焼酎として、確かな地位を築きました。
「川越」は、親しい人とたのしく飲むとよりおいしい
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「川越」をおいしく飲むには、気心の知れた仲間とたのしむことがポイント。「川越」を介して人の輪が広がり、「おいしい」といってもらえることが造り手の喜びだと、杜氏は語っています。
焼酎はロックや水割り、お湯割りなど、好みに合わせた飲み方があり、たくさんの人が集まる場にもしっくりくる酒。なかでも杜氏がすすめるのが、焼酎の味わいを堪能できるお湯割りなのだそう。「川越」はお湯で割っても香りが飛んでしまうことがなく、焼酎としての“芯”もしっかりとたのしめます。
その場の雰囲気を和ませて、相手との距離感を縮めてくれるものが「川越」の魅力。人生をより豊かで実り多いものにするためのコミュニケーションツールとして、活用してほしいものです。
「川越」の開発経緯からは、蔵元親子の強い絆をうかがうことができます。先祖代々続く酒造所を守り抜く、杜氏の努力があったからこそ生まれた焼酎といえるでしょう。
製造元:株式会社川越酒造場
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